岩手地域からの便り(令和5年度)
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海が育む至宝の味わい「山田のかき」 -岩手県・山田町-(2024年2月5日掲載)
三陸沿岸道路を釜石市方面から30分ほど北上すると、右手にキラキラと光る湾が見えてきます。岩手県沿岸中部の山田町(やまだまち)にある山田湾です。
湾には二つの小島と無数の養殖いかだがあり、そのいかだで養殖されているのが旬を迎えているかき(牡蠣)です。そんな山田町のかきの魅力について紹介します。
昭和30年頃にかき養殖が始まった山田町では、山田湾の穏やかな海面条件が養殖漁業に適しており、北上山地から複数の川となって流れ込む栄養豊富な水がかきの身を太らせるためかき養殖が盛んになりました。収穫されたかきは、むき身は地元の市場へ、殻付きかきは豊洲市場へと出荷されています。
中でも殻付きかきは、全国のかき産地で主流の2年物ではなく、3年物を出荷するため他よりサイズが大きいのが特徴で、市場からの引き合いが強く高値で取引されています。
そんな山田のかきを地元の漁師さんが味わってきた蒸し焼きで食べられるお店があります。山田湾を一望する場所に立つその店の名は「山田かき小屋」です。
店内のテーブルに着くと、熱々の鉄板に山盛りとなった殻付きかきに、店員さんが水を注ぎ大きな蓋をしてかきと蒸気を閉じ込めます。間もなく蓋を開けると、湯気が立ち香りが拡がるとそこにかきが現れます。その蒸したて熱々なかきを店員さんが熟練の手さばきで剥き、ちょうどいい頃合いで目の前の皿に次々と入れてくれます。さながら、かきの「わんこそば」スタイルです。つやつやしたかきのむっちりした身を噛めば口にうま味たっぷりの汁があふれ出て、プリプリで濃厚な美味しさを堪能できます。
「このかきは、店の前に広がる山田湾で朝獲りされた新鮮なもの。山田湾は海がきれいで美味しいかきになるんだよ。春先の4、5月にはさらに身が大きくなるのでぜひ来てね。」と店員さんが笑顔で教えてくれました。 これからが最旬のかきを「山田かき小屋」で堪能してみてはいかがでしょうか。
※「山田かき小屋」は完全予約制のため、来店の際は事前予約を忘れずにお願いします。
お問合せ先:三陸やまだ漁業協同組合
住所:岩手県下閉伊郡山田町中央町11-14
電話:0193-82-1122
WEBページ:https://jf-sanrikuyamada.jp/[外部リンク]
お問合せ先:一般社団法人 山田町観光協会 事務局
住所:岩手県下閉伊郡山田町船越9-270(山田かき小屋営業場所)
岩手県下閉伊郡山田町大沢2-1-6(一般社団法人 山田町観光協会)
電話:0193-65-7901(一般社団法人 山田町観光協会)
WEBページ:https://www.yamada-kankou.jp/kakigoya/[外部リンク]
※かき小屋は完全予約制。
※蒸し焼きかき食べ放題期間は5月下旬までを予定しています。
※かきの旬以外の時期は別メニューとなるためWEBページで確認してください。
(情報収集)岩手県拠点 電話:019-624-1125
![]() 青く輝く山田湾に浮かぶかきの養殖いかだ |
![]() かきを収穫する漁業者 |
![]() 豪快に蒸される山盛りの殻付きかき |
![]() うま味あふれるプリプリのかきに、店員さんおすすめの七味・青のりをかけて |
(写真 1、2枚目:三陸やまだ漁業協同組合 提供 3、4枚目:岩手県拠点職員 撮影) |
生産者の夢が叶った ~地域に根ざした自園自醸ワインづくり~ -岩手県・紫波町-(2023年11月6日掲載)
岩手県紫波町にぶどう生産者の長年の夢が叶い、町内産ぶどう100%の地域の気候風土が反映されたワインを作るワイナリーがあります。
紫波町は、冷涼な気候とミネラル分豊富な土壌に恵まれた岩手県最大のぶどうの産地で、古くから生食用のほかにワイン用ぶどうを生産し、県内外のワイナリーに販売していました。そうした中で、ぶどう生産者の方々が「自分たちの育てたぶどうでワインを造りたい」という思いを抱き始め、2003年に設立された第三セクターの株式会社紫波フルーツパークに「自園自醸ワイナリー紫波ぶどう栽培研究会」を立ち上げました。
20周年を迎えた現在、当初6戸であった町内の契約農家は24戸までに増え、自社農園を含めワイン用ぶどう14品種を栽培し、年間約12~13万本のワインを製造販売しています。ワイナリーでは「良いワインは良いぶどうから」という基本を守り、創業当初から町内産のワイン専用品種ぶどうを使ったワイン造りにこだわり続けています。このことがぶどう栽培農家の「自分たちのワイナリー」という意識と、より高品質なぶどうを育てようという意欲に繋がっています。
近年は、県内のみならず、仙台や東京、大阪などから「紫波ワイン」を求めにワイナリーを訪れる人が増えています。今後は、ワイン以外にも取組を充実させることで、交流人口を増やし、地域に根差した会社として地域の活性化に繋げていきたいとのことです。
なお、株式会社紫波フルーツパークでは、自園自醸ワインの試飲、販売、ワイナリー見学、石窯ピザ体験等を行っています。近くへお越しの際にはお立ち寄りいただき、深まる秋の豊かな恵みを味わってみてはいかがでしょうか。
お問合せ先:株式会社紫波フルーツパーク
住所:岩手県紫波郡紫波町遠山字松原1-11
電話:019-676-5301
WEBページ:http://www.shiwa-fruitspark.co.jp/winery[外部リンク]
(情報収集)岩手県拠点 電話:019-624-1125
![]() 自社園のワイン用ぶどう畑
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![]() 生産者の思いがワインの味に繋がります |
![]() ワイン専用品種シャルドネを使用した「紫あ波せブラン」が加わりました |
![]() ワイン醸造施設内にある体験工房の本格石窯 |
(写真 2枚目:株式会社紫波フルーツパーク 提供 1、3、4枚目:岩手県拠点職員 撮影) |
汚泥を堆肥に! 地域資源を住民へ還元するシステムづくり -岩手県・洋野町-(2023年8月7日掲載)
みどりの食料システム戦略実現のため掲げられた目標の一つに、化学肥料の使用量削減があります。資材調達における脱輸入・環境負荷軽減に向け地域・未利用資源を活用し持続可能な資源循環システムを構築することが重要になっています。
今回は岩手県洋野町で動き始めた地域内での資源循環システムの取組を紹介します。取組の中心となっているのは、久慈地区汚泥再生処理センターです。もともと久慈地域(久慈市、洋野町、野田村、普代村)では共同でし尿処理施設を運営していましたが、施設の老朽化を機に、汚泥を有効活用し地域の資源循環を目指す施設として汚泥再生処理センターを整備、令和4年3月から稼働させました。
1日に処理できる能力は約105キロリットル(し尿65キロリットル、浄化槽汚泥40キロリットル)です。工程は、まずトイレットペーパーや砂などの不純物を取り除き、薬剤を極力使わない新鋭処理施設において有用な微生物によりアンモニアや有機物を分解し、その分離液を膜分離装置で処理水と汚泥に分けます。汚泥は、脱水処理後、堆肥化設備にて十分発酵させ堆肥(汚泥肥料)となります。し尿等の搬入から堆肥化までに要する期間は26日間で、令和4年度は10ヶ月の稼働で約179トンの堆肥が製造されました。
これらの堆肥は、地域に還元することとして、扱いやすさからペレット形状に加工され、一世帯当たり年間で10袋/15キログラムを上限に希望する地域住民に無償で配布されています。地域では、野菜や花など家庭菜園に利用されており、追加配布を希望する声もあるなど評判は上々です。
施設の担当者は「無償配布とすることで多くの住民に利用してもらうことができ、地域の活性化や地産地消にもつながる。これからもセンターの運営を通じて地域内での資源循環に寄与していきたい。」と話しており、地域単位での資源循環システムの形として注目が集まっています。
お問合せ先:久慈地区汚泥再生処理センター
住所:岩手県九戸郡洋野町中野7-30-10
電話:0194-66-9160
(情報収集)岩手県拠点 電話:019-624-1125
![]() 横型ドラム内で14日間かけて脱水しながら発酵させる高性能な発酵装置
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![]() 農閑期に在庫を蓄えておくための堆肥保管庫 |
![]() ご説明いただいた施設担当の皆様 |
(写真:岩手県拠点職員 撮影) |