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東北農政局

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岩手地域からの便り(令和6年度)


岩手の「農山漁村の季節の風物詩」、「農産物直売所、農漁家民宿等の取組」、「村おこしイベント」、「農山漁村の行事、お祭り」、「郷土料理」など東北各地域の取組や様子などを紹介します。

極寒の気候風土を生かしたこだわりの「寒ざらしそば」 -岩手県・西和賀町- (2025年2月5日掲載)

西和賀町は、秋田県横手市に隣接した岩手県中西部に位置する奥羽山脈の山々に囲まれた日本有数の豪雪地帯です。昼夜の寒暖差が大きいこの地域では、風味豊かなそばが育まれやすく、そばの栽培が盛んに行われています。
10年ほど前、西和賀町は冬の名物で町を盛り上げようと、「寒ざらしそば」の製造をスタートさせました。
「寒ざらしそば」とは、秋に収穫した玄そば(殻付きのそばの実)を冷水に浸した後、冬の寒風にさらして乾燥させたものを用いて作るそばをいいます。
町では株式会社西和賀産業公社に委託し、豪雪地帯という厳しい環境を生かして寒ざらしそば(十割そば)の製造を行っています。最も寒い12月下旬から1月下旬にかけて、公社の職員数名で玄そばを手作業により冷たい伏流水に10日間ほど浸した後、奥羽山脈から吹きおろす寒風に10日間以上さらし、乾燥させます。このように寒ざらしにした玄そばを挽いて打ったそばは、雑味が取れ、風味や甘みが増し、モチモチの食感となります。さらに公社では、麺のつなぎをよくするため、玄そばを粗く製粉したそば粉と、きめ細かく製粉したそば粉を配合して麺を製造しています。
令和6年からは大粒で外観が優れた品種「にじゆたか」に切り替え、公社と契約した農家によりそばの栽培が行われました。6年産は94トンの玄そばの収穫があり、寒ざらしそば向けとして1トンが用いられます。公社の担当者によると、「前年産よりも実りが良く、品質も非常に良好な出来栄え」とのことです。また、「寒ざらしそばの人気は非常に高いが、現状では手間のかかる作業のため1トンを仕込むのが限界。今後は、需要に応じるための方法も考えていきたい。」とのお話もありました。
西和賀町では、町内外のそば店が寒ざらしそばの特別メニューを期間限定で提供する「寒ざらしそばまつり」を毎年開催しています。県内外から多くのリピーターが訪れる人気のイベントであり、今年は3月上旬から開催される予定です。雪深い地でひと手間もふた手間もかけて作られた西和賀町限定品の寒ざらしそば。その地でしか味わえない希少な逸品を堪能しに来てみませんか。

※「寒ざらしそばまつり」の日程等については、下記Webページからご確認ください。

   お問合せ先:株式会社 西和賀産業公社
   住所:岩手県和賀郡西和賀町川尻40-73-11
   電話:0197-82-2211
   Webページ:https://www.nishiwaga.biz/[外部リンク]

そば「にじゆたか」は
開花期間が長く、
美しい景観が長く楽しめる
極寒の中、西和賀産業
公社の職員数名で袋に
入れた玄そばを流水に浸す
玄そばを浸漬させた後、
棚に並べて寒風にさらし、
自然乾燥させる
モチモチの食感、甘みがあって
香り広がる西和賀の
「寒ざらしそば」


(写真:株式会社西和賀産業公社提供)

地域おこし協力隊員が短角牛生産振興の一翼を担う -岩手県・久慈市- (2024年11月5日掲載)

久慈市山形町では、日本短角種である「山形村短角牛」の生産が行われています。「山形村短角牛」は旧南部藩時代の「南部牛」をルーツとし、地域で古くから飼育されてきました。
しかし、近年は生産者の高齢化や牛肉需要の減少等により、生産頭数を維持することが難しくなっています。久慈市ではこの状況打開の手立てとして、短角牛に関心のある地域おこし協力隊員の力を借りて活性化を図っています。今回は協力隊員としてこの活動に参画している小野沢りんさんと片岡凛太郎さんを紹介します。
小野沢さんは長野県伊那市出身で、岩手県立農業大学校で短角牛について学び、令和4年8月から協力隊員として活躍しています。地域の短角牛生産者と交流を持ちながら生産に携わる一方、以前から興味のあった精肉加工技術を地域の精肉店で学びました。現在はのれん分けを受け、精肉店「短角考舎おのざわ」を開業し、SNSでのPRにより販売拡大を目指しています。いずれは自分で育てた牛を精肉加工から販売まで一貫して行う計画です。
片岡さんは新潟県小千谷市(おぢやし)の出身ですが、闘牛を飼育する実家が久慈市合併前の旧山形村から素牛を購入していた縁で、幼少期よりこの地域に足を運んでいました。その影響で短角牛に興味を持ち、岩手県立農業大学校で畜産を学び、卒業後の令和5年4月から協力隊員として活躍しています。現在は、JAの肥育部会の共同牛舎を任されて飼養管理を行いながら、久慈市の基幹牧場の監視作業に携わるなど、地域の労働力不足解消にも貢献しています。協力隊員の期間終了後は、さらに様々な肥育技術を学び、当地での新規就農を目指しています。
また、小野沢さんと片岡さんは、山形村短角牛のもう一つの顔である闘牛の手綱を握り、闘いを援助する勢子(せこ)にも挑戦し、地域の一大イベントである闘牛大会を盛り上げています。このような地域資源を活用し、消費者との交流を深める取組は、山形村短角牛の生産を支え、地域経済の活性化に寄与しています。
若い二人の力が、短角牛の伝統的な飼育方法や文化を継承し、地域を新たなステージへと導くことが期待されています。

   お問合せ先:山形村短角牛活性化推進協議会  事務局(久慈市山形総合支所)
   住所:岩手県久慈市山形町川井第8地割30-1
   電話:0194‐72‐2111

地域おこし協力隊員の
小野沢りんさん
同じく隊員の
片岡凛太郎さん
広い放牧地で過ごす
山形村短角牛の親子
良質な赤身が多く、牛本来の旨味が
凝縮された山形村短角牛の精肉


(写真:1,2,3枚目岩手県拠点職員撮影、4枚目(有)総合農舎山形村提供)

地域で守る宝物「川井赤しそ」 -岩手県・宮古市-(2024年8月5日掲載)

宮古市川井地区(旧川井村)の区界(くざかい)高原は、盛岡市との境にあり標高700メートルの広大な高原地帯が広がる自然の宝庫です。そこで、栽培されているのが特産品の「川井赤しそ」。葉の表が緑色で裏が赤色であることから「片面紫蘇」と呼ばれ、赤紫蘇の色素と青紫蘇の香りを併せ持ちます。収穫時期は6月末から8月末で、お茶の刈取り機を使って行います。
旧川井村では、昭和60年に「川井赤しそ」を転作田の奨励作物に指定し、栽培面積を拡大してきました。昭和61年には、村の過疎化対策として、第三セクターの社団法人川井村産業開発公社(現在は、株式会社川井産業振興公社)(以下、「公社」)を設立しました。公社が生産者と栽培契約を結び、作業受託や刈取り機の貸し出しを行い、収穫された紫蘇を全量買い取っています。公社では、日本一の梅の産地である和歌山県内のJA等へ梅干し用として出荷しているだけでなく、紫蘇ドリンク等の加工品を製造し、公社の道の駅やオンラインショップでも販売しています。宮古市では、苗などの購入費用を支援しており、生産者、公社、市の三者が一体となって産地化に取り組んでいます。
「川井赤しそ」の特徴は、肉厚で香りも良く、色彩も鮮やかです。ロズマリン酸という抗アレルギー及び抗炎症作用のある成分や、鉄分・ビタミンが多く含まれていることから、貧血や冷え性、アレルギー体質の方に良く、ストレスを和らげたり、疲労回復の効果があるといわれています。
昨年、宮古市で開催された将棋の叡王戦第4局の前日に藤井聡太七冠(当時)が道の駅に立ち寄り紫蘇ドリンクを試飲したところ、そのおいしさに魅了され対局当日の午後のおやつにオーダーしたことで有名になりました。ニュースを見た多くの人から公社に問い合わせやネット注文が相次ぎ、1日で3年分を売り上げたとのことです。
皆さんも、さっぱりとして飲みやすい川井の紫蘇ドリンクを味わってみませんか?

   お問合せ先:株式会社   川井産業振興公社
   住所:〒028-2513   岩手県宮古市川内8-2
   電話:0193-65-7735
   Webページ:https://www.miyako-kawai.com/[外部リンク]

葉の表が緑色で裏が
赤色の「川井赤しそ」
区界高原のしそ畑 公社が運営する道の駅
「やまびこ館」
産直もあり人気のスポット
道の駅での販売風景と
「かわいペリーラ」(右下)


(写真:左から1,2,4枚目は岩手県拠点撮影、3枚目は公社HP、4枚目右下の切抜きは公社提供)