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東北農政局

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岩手地域からの便り(令和7年度)


岩手の「農山漁村の季節の風物詩」、「農産物直売所、農漁家民宿等の取組」、「村おこしイベント」、「農山漁村の行事、お祭り」、「郷土料理」など東北各地域の取組や様子などを紹介します。

高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」で目指す持続可能な農業~住田町発・宙炭の挑戦~-岩手県・住田町- (2025年11月5日掲載)

令和7年3月、株式会社TOWING(トーイング)、住田町、有限会社気仙環境保全、JAおおふなと、JA全農いわて、JA岩手県信連の6者は、「みどりの食料システム戦略」の実装及び岩手県内の農業振興に関する課題解決に向けて、高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の製造・普及・活用を推進するための包括連携協定を締結しました。
宙炭は、株式会社TOWINGが開発した高機能バイオ炭であり、地域の未利用バイオマスを炭化し、そこに多様な土壌微生物群を培養した農業資材(特殊肥料)です。農地に施用することで、作物の品質や収量の向上、土壌改良、炭素固定など、さまざまな効果が期待されています。株式会社TOWINGは、名古屋大学発のスタートアップ企業であり、「サステナブルな次世代農業を起点とする超循環社会の実現」を掲げ、開発・製造・販売を行っています。
現在は、もみ殻炭に土壌微生物群を培養した宙炭と、住田町で製造される鶏ふん炭を組み合わせて農地に散布する取組が進められています。鶏ふん炭は、住田町に拠点を置く有限会社気仙環境保全が、町内の養鶏農場から発生する鶏ふんを炭化処理し、再資源化したものです。
今後は、国内トップクラスの製造量を誇る鶏ふん炭を主原料とした新たな宙炭の開発と普及にも取り組み、地域資源のさらなる有効活用と持続可能な農業の推進を図り、畜産と耕種が連携した地域循環型農業のモデル構築を目指します。
株式会社TOWING取締役COOの木村俊介氏は、「岩手プラント(住田町)を中心に連携を進め、サステナブルな農業の普及モデルを創り上げていく。今後は岩手県内での実証結果を踏まえ、すべての作物で宙炭を活用できるようにしていきたい。」と語っています。また、「宙炭を軸とした地域資源の循環と調和のとれた持続可能な農業モデルが動き出しており、宙炭を活用して栽培された作物の高付加価値化や新たな市場の創出にもつなげていきたい。」と展望を述べました。
この取組は、農業の脱炭素化と地域経済の活性化を両立させる先進的なモデルとして注目されており、今後の展開が期待されています。

   お問合せ先:株式会社 TOWING
   住所:〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学インキュベーション施設
   Webページ:https://towing.co.jp/[外部リンク]
   参考(包括協定):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000081010.html[外部リンク]
   

高機能バイオ炭「宙炭」 住田町で行われた包括連携開始式 農地への「宙炭」の散布 株式会社TOWINGの岩手プラントにて
高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」 住田町で行われた包括連携開始式 農地への「宙炭」の散布 株式会社TOWINGの岩手プラント(住田町)にて(木村俊介取締役COO(右から2人目)とスタッフ)


(写真:1,2,3枚目株式会社TOWING提供、4枚目岩手県拠点職員撮影)

バイオ炭を活用した地域循環型社会への挑戦 -岩手県・久慈市- (2025年8月5日掲載)

有限会社谷地林業は、岩手県久慈市に本社を構える1916年創業の老舗林業会社です。100年以上にわたり、木炭製造をはじめとする多様な事業を通じて地域の活性化に取り組んできました。2023年からは、地球環境に配慮した持続可能な社会の実現を目指し、林地残材を利用した「バイオ炭」の生産と活用に本格的に取り組んでいます。
バイオ炭は、木材や枝葉などのバイオマスを350℃以上の高温で炭化したもので、農地に施用することで土壌改良や炭素貯留に効果があり、国の「J-クレジット制度」にも認証されています。
谷地林業では、森林整備の過程で発生する未利用の枝葉をチップ化し、密閉式炭化炉で炭化することで、安定した品質のバイオ炭を製造しています。これにより、林業と農業がバイオ炭を通じて連携し、地域資源を循環的に活用する新たな仕組みが生まれつつあります。
2024年9月には、産学官で構成する「岩手県バイオ炭活用協議会」が設立されました。谷地林業をはじめ、農家、畜産業者、企業、行政機関などが参加し、バイオ炭の普及と活用を目的に、実証実験や課題解決に向けた検討が進められています。実証では、バイオ炭と牛ふん堆肥を混合して農地に施用し、土壌の質の改善や作物の収量向上といった効果の検証が行われています。これらの取組は、持続可能な農林業の実現に向けた重要な一歩となっています。
代表取締役の谷地譲氏は、「バイオ炭の製造にはまだ多くの可能性がある。炭化の過程で発生する可燃性ガスや熱の活用、さらに、もみ殻やおから、りんごの皮など地域に眠る未利用資源の炭化によって用途はさらに広がる。私たちが木炭製造で培ってきた炭化技術を活かし、脱炭素と地域振興の両立に貢献していきたい。」と語っています。
谷地林業は、100年以上にわたる木炭製造のノウハウを活かし、林業と農業の新たな連携を切り拓くイノベーションに挑み続けています。

   お問合せ先:有限会社 谷地林業
   住所:岩手県久慈市山形町荷軽部第3地割18番地
   電話:0194-72-2221
   Webページ:https://www.yachiringyo.com/[外部リンク]

バイオ炭を製造する密閉式炭化炉 完成したバイオ炭 バイオ炭を混合した牛ふん堆肥を実証ほ場に散布している様子 バイオ炭の製造に取り組む有限会社谷地林業の谷地譲代表取締役と渡部雅裕シニアマネージャー
【バイオ炭を製造する密閉式炭化炉】
チップ化した林地残材を約1日かけて炭化後、
炉内で約2日間かけて冷却する
【完成したバイオ炭】
チップ化することによって、
炭化効率が良く、均一な炭ができる
バイオ炭を混合した牛ふん堆肥を
実証ほ場に散布している様子
バイオ炭の製造に取り組む有限会社谷地林業の谷地譲代表取締役(右)と渡部雅裕シニアマネージャー


(写真:1,2,4枚目岩手県拠点職員撮影、3枚目有限会社谷地林業提供)