アイヌの伝統料理
アイヌ伝統儀礼「 シンヌラッパ(先祖供養)」が行われた際に
ふるまわれた「ハレの日」の料理を紹介します。
古い時代、アイヌの人たちは、カムイモシリ(神々が住む世界)とアイヌ
モシリ(人間が住む世界=現世)、ポクナシリ(死後に住む世界。地域に
よっていろいろな呼び方があります)と、3つの世界があり、アイヌモシリで
死んだ人はポクナシリにいき、そこでアイヌモシリと変わらぬ生活をすると
考えていました。そうしたポクナシリで生活する人たち―特に親族に対して
供物を送り、故人を偲ぶとともに、 現世の生活が何事もなく無事に暮らせる
ようにと、守ってくれることを願って行ったのが、先祖供養です。
◆オハウ

などを煮て、脂や塩で味付けした汁物です。 一般に実の多い汁もので、具材が魚なら
チェプオハウ、肉だとカムオハウとなります。
<チェㇷ゚オハウ(鮭の煮込み汁)>
秋から冬にかけて、鮭が手に入ったときにつくります。今回はみそ仕立ての汁物で、
具材は鮭、大根、人参、しめじ、舞茸などが入っています。
◆ラタㇱケㇷ゚

煮て魚脂または、獣脂と塩で味付けした料理。 日常食にも用いられるが儀式や祭事にも
欠かせない料理であり、その種類も多い。シケㇾペ(キハダの実)は黒くて小さく、乾燥
したものを水で戻して使用します。噛むと苦みがありますが健胃と整腸作用があると
されています。
<かぼちゃのラタㇱケㇷ゚>
豆をやわらかく煮て、カボチャやイモ、穀物をあえたもので香辛料としてシケㇾペを
加えることで苦みが残ります。
◆シト

シトは、米やいなきび等のだんごのことです。
米といなきびをつき、その粉を別々にして、お湯を加えて練り直径3~4.5cmほどの
球形に整えゆでます。シトにまぶしてあるのは昆布で身の厚いだし昆布を遠火で
あぶったり脂で揚げたものをつき砕き、だんごのゆで汁の残りへ入れ、脂を加えて
味をととのえながら煮詰めたものです。
◆トノト

アイヌ文化における祭事・カムイノミ(秋の豊作に感謝・神々への祈り)、イチャルパ
(春と秋の祖霊祭)などで、トノトは神への供物として重要な役割を果たします。
酒つくりは女性たちの重要な仕事でアペフチカムイ(火の神)に祈り言葉を述べながら
作ります。
◆シラリ

トノトを濾してザルに残る酒粕をシラリと言います。
シラリはパッチ(鉢)に盛り供物とします。
◆いなきびご飯

材料は米・いなきび・塩・脂で炊きます。
日常使用されるものではなく祭事など特別なときに用いられてきました。
ごちそう」とされていたようです。
◆お供えもの
シンヌラッパ(先祖供養)のお供え物
供物は「あの世の先祖の食べ物」で供物が多いほど先祖は喜ぶといわれています。
人々は神々に備えると同じように、先祖にも惜しみなく供物を捧げて食べ物を分かち合います。
アイヌの伝統料理については、各地で読み方や料理が異なることがあります。ここでは、札幌アイヌ協会多原良子副会長の協力のもとで取材した内容を紹介しています。
引用・参考資料
萩中美枝・畑井朝子・藤村久和・古原敏弘・村木美幸(1992)『聞き書 アイヌの食事』(日本の食生活全集 48)農山漁村文化協会.
財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(2006)『アイヌ生活文化再現マニュアル 先祖供養』.
こちらの掲載内容は、上記の引用・参考資料のほか、札幌アイヌ協会多原良子副会長から情報提供いただいた内容をもとに作成しています。
内容についてのご意見、伝統料理等の情報は、下記お問合せ先までお願いします。
アイヌ料理に関する動画
お問合せ先
生産経営産業部 事業支援課 食文化担当
代表:011-330-8810