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北海道農政事務所

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洞爺湖町 髙橋農園児玉周子 氏

洞爺湖畔で紡いだ思い  ~まだ見ぬ未来を耕す~
      髙橋農園 児玉 周子 氏

   

   北海道洞爺湖町の財田(たからだ)地区は、北海道の中でも比較的温暖な気候に恵まれた地域であり、北東にある川から絶えず洞爺湖へ流れる水が創った扇状地かつ肥沃な土質を有するため、稲作や野菜づくりに最適な地域です。
   この豊かな自然環境で「まぼろしのお米」と呼ばれるブランド米「財田米(たからだまい)」やトマトを中心に栽培しているのが、髙橋農園の児玉周子さんです。
   児玉さんは、ご両親から2022年1月に農園を引き継ぎ就農しました。翌年には自宅敷地内に直売所を開設し、現在では郵便局の無人販売コーナーや近隣のキャンプ場でも商品を販売しています。さらに、米とトマトは洞爺湖町のふるさと納税の返礼品にも採用されています。

   日々、農業に奮闘しながら忙しい毎日を送る児玉さん。今回は、そんな児玉さんに農業への思いや取組についてお話を伺いました。

取材日:2025年11月20日
取材場所:髙橋農園の直売所(洞爺湖町)
         

家族の畑を未来に繋ぐ ~私が農業をする理由~

   私の実家は、米や野菜を栽培する農家です。春から秋にかけて20年以上パートとして実家の農作業を手伝い、トマトの栽培管理や、水稲の育苗準備、田植え、収穫など一連の作業を幅広く経験してきました。栽培の基本的な流れや携わった管理作業については理解していましたが、細かい作業や栽培技術については十分に把握できていませんでした。
   実家の農業は兄が継いでいましたが、その兄が亡くなったことをきっかけに「親の代で農業を終わらせてよいのか」という思いが強くなりました。加えて、会社員の夫が「俺も一緒にやるから」と言ってくれたことも後押しとなり、両親の跡を継ぐ決意をしました。
   就農にあたっては大きな不安がありました。それでも、実家とお客さまを守りたいという気持ちは益々強くなっていきました。お客さまに喜んでいただけること、その笑顔を見ることは、私にとってかけがえのないことだと気付きました。

不安と葛藤の中で ~経営者としての責任~

   これまでは、両親から指示されたとおり作業を行う程度で、主体的に仕事を進めることはありませんでした。そのため、就農当初は機械の操作方法も全く分からず、細かな作業についても理解が不十分で、何をどうすればよいのか分からない状況でした。
   また、農業は体力的にもきつくて辛いです。今年度、トマトの栽培面積を減らしたのも、管理の手間や、畑から畑への移動に時間がかかるためです。
   経営に関することも、私が決めなければなりません。設備投資の判断も難しく、家族に勧められるがまま購入することがほとんどです。借金をしてまで機械を買うことには抵抗があり、何が正解なのか分からない状況です。
   経理は母から教わりながら進めていますが、不慣れな作業の連続です。営農計画書の作成も農協への提出期限があるため急ピッチで進める必要があり大変苦労しています。両親は現役で農業を続けてくれていますが、最終的な経営判断は私にあります。現状は全てが中途半端で、上手く進められていないことが悩みです。

農業と家庭の両立に向けて ~二つの責任の狭間で~

    就農後も、家事は基本的に私が担当しています。洗濯機を乾燥機能付きのものに買い替えや、食洗機の購入などで家事の省力化を図っています。
   食事については、朝食は各自でとってもらっていますが、昼食と夕食は私が作っており、家族のスケジュールや食事メニューに合わせて準備をする必要があります。
   子どもたちはすでに社会人なので面倒を見る必要はありませんが、農作業に休みはほとんどなく、家庭と仕事の両立には家族の理解と協力が不可欠です。

農業を柔軟に ~未来を支える仕組みづくり~

   担い手を増やすためには、補助金による支援制度の改善や充実がとても重要だと思います。補助事業はたくさんありますが、申請には手間や時間がかかるほか、年齢制限などの条件もあるため、農業に挑戦したい人の意欲を削いでいるのが現状です。もっと柔軟で、挑戦しやすい仕組みが必要だと感じています。
   また、女性農業者を増やすためには、作業負担を軽減する工夫が欠かせません。重い米袋を持つ作業などは、女性にとって大きなハードルです。一人でも作業を完結できる機材やシステムの導入、力の差を補う技術革新が必要です。さらに、機械操作も大きな課題です。私は大型農機の操作が怖く、音や複雑なレバー操作に不安を感じます。大型農機を安全に扱うためのサポート体制が必要であり、知識や技術を学べる環境が整えば、女性や初心者でも安心して農業に取り組めると思います。
   そして、農業に関する情報や制度は、専門用語ではなく、誰にでも分かる言葉で伝えることも大切です。 難しい言葉が多いと、農協の役員や農業委員等の仕事だけではなく、地域での人材育成や普及活動にも参加しづらくなります。分かりやすい説明を聞けば、担い手の就農意欲も高まるはずです。

農業を紡ぐ ~ここから始まる私の挑戦~

   今後は、農作物の加工販売にも挑戦したいと考えています。自分で加工ができれば、余計な経費もかからず、一番良いと思っています。
   以前、トマトジュースを手作りし直売所で試飲してもらったところ、「販売してほしい」という声をいただきました。しかし、その当時は製造資格等がなく、販売できませんでした。
   トマトビールを製造委託し作ってもらったこともあります。販売はせず、お世話になった方々に配りましたが、味はカクテルのレッドアイ風で、理想とは少し異なっていました。次回は、トマトの風味をもっと活かしたビールにしたい と思っています。
   また、直売所に来てくださったお客さまに、さつまいもや里芋など野菜の食べ方を伝える活動をしています。調理方法が分からない方には、ただ売るだけではなく、食べ方を提案することが大切だと思っています。試食を用意したり、トマトジュースの作り方を説明したりすることで、野菜を無駄にせず、食品ロスを減らし、地域や環境にも貢献できると考え、引き続き取り組んでいきたいと思っています。
   農業は正直、きつくて辛いです。それでも、直売所でお客さまと話す時間はとても楽しいです。自分が作ったものを食べてもらえるありがたさ、そして「安心・安全なものを届けたい」という気持ちが、私の原動力です。

児玉様、貴重なご意見をいただきありがとうございました。

お問合せ先

 企画調整室
 代表:011-330-8802