山梨県内のスマート農業に取り組む農業者

左の写真:温室内のトマト 右の写真:意見交換の様子(右・藤巻代表取締役 左・山田地方参事官)
会社名
有限会社アグリマインド
スマート農業を始めた年月
2022年11月
所在地
北杜市
栽培作物
高リコピントマト(中玉)
取組内容
〇栽培施設
・オランダ製ファンロー型セミクローズドガラス温室 1.9ha
・天然素材のココ椰子殻培地を使用した養液栽培
・ハンギングガター方式(吊り下げ式)高さ4.5m
・全86列 1列124m 苗900本/列 全体で約80,000本
〇各種計測の自動化(栽培管理)・労務管理・収穫量の予測を目指し、当初は計測IoT会社・AI/IoTサービス会社との3社で提携し、プラットフォーム開発を開始した。その後、データ通信会社や複数のAIサービス会社が加わり取組企業は現在7社となっている。
〇ハウス内の環境状況に加え、光合成量、蒸散量など植物の代謝のリアルタイム計測や、クロロフィル蛍光や白色LEDの画像スキャン計測により植物の形質的な情報など、野菜の成長そのものを測定する生体情報を取得し、そのモデルデータを蓄積AIが分析を行うことで、高精度な収量予測の実現を目指す。それにより、資源・エネルギーの投入コストの最適化や、収穫・出荷に伴う作業量の事前把握による適切な労務管理も可能となる。
〇現在はデータ収集を行っている実証段階で、実装まで3年を目途にしている。
スマート農業に取り組んだきっかけ
ハウス内の自動制御はスタート時から入っていたが、立地として雇用の確保が難しいことから省力化を目指し本格的に導入の検討を始めた。
稼働から10年経過しているのでデータの蓄積はあるが、検証に労力が掛かり、栽培期間中に発生した事象の要因を探すのが非常に大変で人の力には限界があると感じた。そこからAIによる技術的な解析が今後重要になると考えた。
収穫量の予測が正確に把握できれば開花から収穫まで2か月かかるので、その間に何があったか、収穫量の変化が見えると、何がどのように起因しているのかが見えてくるので収穫期に向けた最適化がしやすくなってくる。収量予測が重要なポイントになる。
また、「農業就業人口の減少及び高齢化等社会的な課題」「営農ノウハウの可視化や栽培技術の継承」「気候変動による収穫量の減少等持続的・安定的な食料の供給のための課題」、これらの課題解決のため実証実験を開始した。
スマート農業を始めて良かった点
先進機器が入ったことにより週休二日制(土日休業)を導入できた(人材確保の観点からも必須だと思う)。
過去の履歴を追うことによって問題点の要因の検証ができる。
再現性が高く毎年ある程度の収量が確保できる。
スマート農業を始めるに当たり苦労した点
ITリテラシーが無い中、導入することに大変苦労した。
PLANT DATA社の社長が理解を示してくれて橋渡しをしていただき勉強させていただいた。普通の生産者が同じことをしようとしたら大変苦労すると思う。農業のことを知らないITの方に理解をしてもらうのが非常に難しく、結果として生産者側ではなくIT側が作りたいシステムになってしまう可能性がある。
従業員が新しいものを導入するにあたり拒否反応が凄くて理解を得るのに大変だったが、作業が楽になり省力化が進むと従業員の方から提案が出てくるようになった。
課題・要望
スマート農業を導入するにあっては、コーディネーター等の人材が重要になる。農業リテラシーとITリテラシーの両方に精通した人材が必要であると感じている。
今は果実の品質をメインで予測しているが、メーカーには果重予測ができる技術を実装に向けての検討をお願いしている。
スマート農業を検討している方々へ一言!
スマート農業を導入するのであれば一部だけ試してみるとか中途半端ではなくやり抜く強い意思が必要。
大型機械を導入するのではなく従来のIT技術を活用するのであればコストは意外に掛からない。
今後の取組
・スマート農業プラットフォームシステム・AI・人間が互いに協調し合うスマート農業を現場に実装し、持続的・安定的な食料供給を目指して行く。
・実証が成功した時には他にも導入したい事例があり横展開を図っていきたい。
・あらゆる面における「最適化」を目指している。収量の確保が必要な時に提供できるとか、その時必要な労働力を確保できる等、必要な時に対応できる体制を構築していきたい。
・冬季は収穫量が少なく作業量が足りないことから、通年の労働力を確保するために現在いちごの試験栽培を行っている。現在のハウスは借用なので、ある程度収穫量が確保できれば近場にハウスの建設を予定している。40~50aの規模で検討。
有限会社アグリマインド