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近畿農政局

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女性茶師として「朝宮茶」の産地を守る

滋賀県甲賀市|カネヨ製茶麗和園  北田麗子さん

甲賀市信楽町朝宮で「朝宮茶」を栽培し、地域ブランドの維持や煎茶の魅力発信に取り組むカネヨ製茶8代目麗和園代表の北田麗子さんと意見交換を行いました。 「朝宮茶」の歴史は1200年と古く、日本最古級の茶産地で採れる煎茶は日本五大銘茶の一つに数えられています。昼夜の寒暖差の大きい山間地で栽培され、香りが高く深い味わいが特徴で、「香り朝宮」と称され緑茶の最高峰とも言われています。 現在は、生産者の高齢化により生産量は極めて少なく、産地の維持が課題となっています。 

カネヨ製茶8代目北田麗子さん
カネヨ製茶 8代目  北田麗子さん




女性茶師として駆け出し奮闘

茶農家を継ぐつもりはなく就職された北田さんですが、就職2年後に自然災害により実家が大打撃を受けたことから、故郷を守りたいと帰郷されました。その後、結婚・出産を経て家業を手伝い始めた矢先に、立て続けにご両親が亡くなられたため、若くしてカネヨ製茶を受け継ぎ女性茶師として1人奮闘してこられました。

煎茶の魅力を広めていきたい

日本茶インストラクターの資格を取得されており、煎茶の魅力を広めたいと広報活動にも積極的に取り組んでおられます。
ペットボトルが普及し、近年は急須でお茶を入れる機会が少なくなっていますが、入れたてのお茶の香りや味わいは格別。機会を作っては、お茶の入れ方や楽しみ方など煎茶の魅力を伝え広めています。

 

豊かな香りが特徴の朝宮香駿 信楽焼の茶器で
    豊かな香りが特徴の希少品種「朝宮香駿」
    地元信楽焼の急須と器で味わいも引き立ちます

茶葉比べ 春番茶と親子番茶
    春番茶(左)と親子番茶(右)
    パッケージのイラストは北田さんオリジナル

同じ茶木でも、味わいは多様

カネヨ製茶オリジナルブランド「麗和園」では、一般的な秋番茶ではなく、越冬した3月に収穫する朝宮伝統の「春番茶」、当年の新芽だけを摘んだ「一番茶」、一番茶刈取後に遅れて生えてきた残り芽と大きく成長した茶葉を一緒に収穫した「親子番茶」を製造されています。
収穫時期によって風味の違いを楽しむことができます。


標高400mに広がる茶畑

朝宮の茶畑は山道を進んだ山間地に広がっています。急斜面に連なるきれいに刈り揃えられた茶園の景色は圧巻で、取材に訪れた冬でも趣がありました。 北田さんは年に2回ほど、「茶畑ハイキング」も実施し、お茶に親しんでもらう企画に取り組まれています。 

「やぶきた」の茶葉
「やぶきた」の茶葉(12月撮影)


新芽を守る重要アイテム

茶畑で目を引くのが、何本もそびえ立つ防霜ファン。上部の暖かい空気を地表に送り込むことで温度管理を行い、新芽を霜から守ります。新芽に霜が当たると収穫できなくなるため、この温度管理はとても重要です。


山の斜面に広がる茶畑
      山の斜面に広がる茶畑

   

防霜ファン
上空5mに設置される防霜ファン  


収穫したその日に荒茶加工

収穫した生葉は、放置すると発酵し熱を帯び品質が低下するため、摘採後すぐ荒茶に加工します。

荒茶の加工場
北田さんが受け継いだ荒茶の加工場  


加工場内の様子
加工場内には大きな機械がたくさん並んでいます

「蒸し」と「揉み」が重要な煎茶の一次加工まで施した茶葉を荒茶といい、この状態で農協や問屋へ出荷します。 その後、問屋などで仕上げ加工を経て製品となります。

加工の機械1  加工の機械2  加工の機械3
荒茶になるまではたくさんの工程があり、それぞれに機械も必要です
僅かな調整が香りや味わいに影響するため、生産から加工まで一貫してこだわり作られる荒茶はまさに職人技です


女神の絆
茶業界に新しい風を吹かせたいとの 思いを込め作られた煎茶「女神の絆」

女性の手だけでお茶づくり

茶業界では少ない女性茶師として、何か新しいことができないかと考え、生産から加工、商品デザイン、販売まですべて女性の手だけでお茶を作ろうと、5人の女性が集結し開発グループ「Fem Tea]を結成。
ピュアな感じで渋みが少なく、朝宮茶らしいほのかな華やいだ香りが特徴の煎茶「女神の絆」を作りました。

1200年続く茶産地を守りたい

現在、朝宮で茶業を営む生産者の高齢化は深刻で、耕作放棄地も増え、産地の存続のためには、新規就農者の確保・育成が喫緊の課題となっていますが、茶の栽培や荒茶加工の技術は職人技であるため普及・継承は難しいのが現状です。また、集落内には保育園や学童保育もなく、若い世代が地域に定住しにくい環境にあります。

北田さん 茶畑の中で
茶畑が広がる美しい故郷を守っていきたいと 熱い思いを抱いておられました

     意見交換の様子
        意見交換の様子

北田さんは、そのような現状を何とかしたいと地域の活性化、歴史ある茶産地の存続に意欲的に取り組まれているほか、甲賀市の市議会議員としても活動されています。
意見交換では、朝宮茶の魅力、茶業の現状や課題などたくさんお話いただきました。


〇 カネヨ製茶  麗和園

   https://reiwaen.base.shop/

お問合せ先

滋賀県拠点 地方参事官室
TEL:077-522-4261