木桶の文化を守る若手醤油職人 ~1%を世界に~
有田川町にある、木桶で醤油を仕込んでいる「有限会社カネイワ醤油本店」(以下「カネイワ醤油」という。)へお伺いし、蔵見学と5代目の岩本庄平さんにお話を伺いました。
岩本庄平さんは大学卒業後、造り酒屋に就職し酒造りの魅力に惹かれていたものの、雇用される身では自由な挑戦が難しく、「自分の思いを形にしたい」との考えから家業の醤油造りを継ぐことを決意しました。
【カネイワ醬油の特徴】
○概要
カネイワ醤油は1912年(大正元年)に創業し、現在は有田川町唯一の醤油蔵です。
原料は国産にこだわり、北海道産の大豆、滋賀県・岐阜県産の小麦、地元を流れる高野山系の良質な水のみを使用しています。 発酵期間は約2年にも及びますが、添加物は一切使用せず、木桶を用いた昔ながらの製法で醤油を醸造しています。
カネイワ醤油では濃口醤油や薄口醤油に加え、火入れをしていない生(なま)醤油から、だし醤油や卵かけご飯の醤油といった調味醤油まで取り扱っています。
○木桶へのこだわり
国内で製造されている醤油の約99%がステンレスやプラスチックのタンクで造られているなか、カネイワ醬油では23本の木桶を使用して、醤油を醸造しています。
木桶は代々受け継がれ、ほとんどが100年以上使用し続けたものとのことです。
木桶で醤油を造ることで、和食の基本的な調味料である醤油の伝統的な製法を守ることはもちろん、木桶に酵母が住みつくことで、蔵独自の香りや味がつくられます。香りや味が非常に濃いことも、木桶で造られた醤油ならではの特徴です。
「木桶職人復活プロジェクト」(※) にも参画し、木桶文化の継承にも取り組んでいます。
(高さ・直径共に約2mもある木桶)
(木桶で醤油が造られている様子)
※和食の基礎となる醤油や味噌などを仕込むほどの大きな木桶を製作できる国内の製桶所が最後の1軒となり、木桶が絶滅寸前になったことを受け2012年に発足。木桶に関わるメーカー、流通、飲食などが集い、木桶商品の価値を高めて木桶職人を増やし、木桶による醸造文化の存続と発展を目指す取組。
【醤油造りの現場を体験】
取材の一環として、醤油の製造工程を改めて教えていただいた後、大豆や小麦を加工する機械、醤油を圧搾する機械、醤油づくりには欠かせない麹を育てる部屋である「麹室」(こうじむろ)や木桶で醤油が造られている様子など、都度説明をいただきながら醤油造りの流れを辿りました。
蔵内部には約2年間木桶で熟成された醤油もあり、良い香りが充満していました。

(醤油ができるまでの工程)
画像はカネイワ醬油提供
(機械の前で説明をいただきました)
(麹室と麹の様子)
今回は特別に、醤油の発酵を均一に行きわたらせるための「櫂入れ」(かいいれ)や麹を木桶に入れる「出麹」(でこうじ)も現場を見ながら説明をいただきました。 櫂入れは拠点職員も体験させていただきましたが、想像以上に醪(もろみ)(※)が重く、均一に混ぜる職人の技術の重要性を実感しました。
※麹と塩水を混ぜたもの。これを発酵させ濾したものが醤油。
なお、蔵見学自体は一般の方でも可能とのことです(要事前連絡)。
(拠点職員による櫂入れ)
(麹室から木桶まで麹が運ばれています)
【今後の展望】
「今、木桶仕込み醤油は日本の1%しかないが、シェアを奪い合うのではなく、魅力を広めて、1%を2%にしたり、世界の1%へとしていきたい。」と、木桶仕込み醬油の魅力発信や輸出にかける熱い思いを語ってくださいました。
○有限会社カネイワ醤油本店
住所:和歌山県有田郡有田川町小川357
電話:0737-32-2149
ウェブサイト:https://www.kaneiwa.net/(外部サイトへリンク)
(取材日:令和7年11月14日)
お問合せ先
和歌山県拠点地方参事官室
ダイヤルイン:073-436-3831




