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近畿農政局

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熊野の水と木桶が育む酢づくり ― 丸正酢醸造元の挑戦

那智の滝を源とする豊かな水に恵まれた和歌山県那智勝浦町。
  この地で約150年にわたり木桶による酢づくりを続けているのが、「合名会社丸正酢醸造元」(以下「丸正酢醸造元」という。)です。
  お話をお伺いした4代目の小坂和子代表は、以前ご紹介した「有限会社カネイワ醤油」と同じく、木桶文化の振興に取り組まれています。

   〇蔵元概要
  丸正酢醸造元は1879(明治12)年創業の酢蔵で、創業以来、伝統的な製法を守り、木桶で酢を醸造しています。
  第二次世界大戦の影響で酢が造れなくなるなどの危機を乗り越え、今では少人数体制で、1人の職人を中心に、数ヶ月かけて、こだわりの酢を造っています。
店頭と小坂さん

   〇酢づくりのこだわり

  丸正酢醸造元では、前回仕込んだ酢の一部を種酢として使用することで、酢酸菌を引き継いで酢を醸造しています。
  酢づくりに使う原料は麹、米、水だけであり、保存料や化学調味料は一切加えません。米は紀南地域にて、除草に梅酢を使用するなど、農薬や化学肥料の使用を減らして育てられたブランド米(熊野米)を使用。水は那智の滝と水源を同じくし、山や土壌で100年かけてろ過された熊野山系の伏流水を使用しています。
  「酢づくりに使う水は100年前のもの。今、水を汚すと100年後に困る」と熱く語ってくださり、「醸造は水が命」の通り、水への強いこだわりを感じました。

02_marusho.jpg江戸時代から続く井戸から、
熊野山系の伏流水を汲んでいます。



03_marusho.jpg伏流水は軟水でまろやかな酢に仕上がります。
常に16℃前後に保たれ、
醸造のための加温は不要とのこと。

04_marusho.JPG紀南地方で育てられた熊野米
(写真は小坂さん提供)

    05_marusho.JPG木桶で米を蒸しています
    (写真は小坂さん提供)

      06_marusho.PNG櫂入れをして蒸した米・種酢・水を混ぜ、
      酢酸発酵させます。
      (写真は小坂さん提供)

        07_marusho.png醸造中の酢の表面に張った酢酸菌膜
        (写真は小坂さん提供)

          原料に加え、「木桶で造る」ことにも強いこだわりを持っています。
          蔵には熊野杉や吉野杉から作られた12本の木桶が並び、古いものでは100年ほど使われています。木桶は150年ほど使われるため、長年の醸造で木桶に棲み着いた微生物のはたらきで、まろやかでコクのある、香り高い酢ができあがります。
          ただし、木桶で造る酢は、ステンレスタンク等に比べて時間がかかる上に、水分が蒸発するため、大量生産には向いていません。
          先代の「(ステンレスタンクやホーローで造った酢に比べ)木桶のものは、味・香り・コクみがまったく違う」との思いを受け継ぎ、木桶にこだわって醸造しています。
          木桶での静置発酵(※)による古式醸造は、創業当時からのこだわりであり、和子さん自身も先代の思いを引き継ぎ、昔ながらの酢づくりにこだわり、価格ではなく品質で勝負しています。
          酢酸菌がアルコールを酢に変えるための発酵方法の一つ。伝統的な発酵方法であり、かき混ぜないためゆっくりと反応が進む。対の方法として「深部発酵」がある。


        08_marusho.jpg初代が相撲をしていたことに由来し、木桶には
        歴代横綱の名前を付け大切に育てることで、
        より一層愛着が湧くとのこと。


          09_marusho.PNG蔵には12本の木桶が並びます。
          右手の木桶は3年前から使い始めたもの。

              丸正酢醸造元の酢は那智勝浦町のお店やオンラインショップ、和歌山市内の百貨店でも取り扱いがあるとのことです。
              特に、看板商品である「那智黒米寿」(なちくろこめす)は、すべて和歌山県産の原料で造られ、世界でも類を見ないもち米の玄米のみで造った酢です。



            10_marusho.PNG丸正酢醸造元では、
            酢及び酢加工品を造っています

            11_marusho.jpg那智黒米寿
            (写真は小坂さん提供)

                 〇海外展開
                地元を中心に愛されている丸正酢醸造元の酢ですが、少人数での醸造でありながら、海外25か国へ輸出しています。
                海外での商談会や展示会に積極的に参加したり、令和8年2月にはFSSC22000認証(※)も取得するなど、海外展開にも力を入れています。
                海外では、現地のシェフに高く評価され、フレンチレストランやイタリアンレストラン等で使用されているとのことです。
                食品を安全に製造できる体制があると認められた国際的な認証。ISO22000を包含した非常に高度な認証。

              12_marusho.jpg令和85月のアメリカ(シカゴ)での展示会の様子
              (写真は小坂さん提供)

                13_marusho.jpgFSSC22000の証明書(左上)は
                蔵の入口に掲示されています。

                   〇今後の展望
                  長年の顧客に加え、近年はこだわりの調味料を求める若い世代にも支持が広がっていますが、後継者不足や国内消費量の減少といった課題も抱えています。
                  若い世代が郷土料理に親しむ場が減少していることや、中食化に伴い、地域の食文化が廃れてしまうことを懸念されており、小中学校での食育が大切だと言います。
                  小坂さんの夢は、世界中で酢を楽しんでもらうこと。「今は世界地図を1つ1つ塗りつぶしている最中」として、世界各国に日本の伝統的な製法で造った酢を広めて、「酢や酢の造り方を丸正酢醸造元に教えてもらった」という土地を増やし、海外での醸造も視野に入れるなど、世界に足跡を残していきたいとのことです。
                  「美味しいもの食べてれば、世界も平和になるんじゃないの」と終始朗らかに語ってくださいました。

                14_marusho.jpg現在の蔵兼店舗外観
                (写真は小坂さん提供)

                  15_marusho.JPG
                  明治時代後期から大正時代に撮影された
                  蔵外観
                  (写真は小坂さん提供)

                  丸正酢醸造元Webサイト:
                  https://www.marusho-vinegar.jp/(外部リンク)
                  Instagram:
                  https://www.instagram.com/marusho_vinegar/(外部リンク)



                  【ご参考】
                  ー丸正酢醸造元と共に、木桶文化を守り続けているー
                  〇有限会社カネイワ醤油本店
                  Webサイト:
                  木桶の文化を守る若手醤油職人 ~1%を世界に~
                  https://www.maff.go.jp/kinki/tiiki/wakayama/photo/2025/20251114.html



                  (取材日:令和8年6月2日)

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