「人も農作物も薬に頼り過ぎない」がモットー
多様な農業へのかかわりが注目される中、紀の川市で医者として働きながら農業に従事する、いわゆる「半農半X(医)」に取り組む 豊田 孝行 氏を紹介します。
豊田氏は、病気の予防を中心にしたヘルスケアが重要だと考え、身体は食べた物が基礎となることから、その食のもとになる食物を生産する農業に自負をもって営農しています。

12年前、開業医をしていた時に、ストレス、食や生活リズムの乱れから体調を崩したことが転機となり、医院を先輩に譲って実家の桃農家に戻り、食を含めた生活習慣を見直したことで、体調は回復しました。
現在は、農業に従事しながら勤務医としての経験を活かして、食と健康に関する講演活動にも取り組んでいます。

経営面積は150aで、樹園地100aで「もも」約200本を自然栽培しています。また、畑20aで食用ヘチマ、空心菜、ミョウガ、サツマイモ等の野菜を生産しています。
地域で農業を盛り上げるための地域活動*「自然の郷きのくに」において、約10aの農地を提供し農業塾を開催しています。農家の後継者でありながら、今は農業に従事していない地元の同年代の後継者(8人)に呼び掛け、技術を習得する機会を提供しています。

自然栽培を実践して11年。慣行栽培から自然栽培に転換した当初、約3年間は収穫が皆無になるほど落ち込みました。その後も病害虫による品質の低下や収穫量が少ない期間が続き、土づくりを10年かけて行い微生物が多く住む土壌に改良し、ようやく商品として販売できる桃が生産できるようになりました。
今では、慣行栽培よりも病気に強い「もも」の栽培ができていると実感しています。

新たに農業を始める場合、最初から有機栽培や自然栽培に取り組むのではなく、営農の知識や慣行栽培技術などを学んだうえで、生活が安定するように、可能な範囲で両者を取り入れてはどうかと思います。
どの農法を選択するにしても、農業者はメリット、デメリットを考えたうえでの選択をしているので、営農方法の違いを互いに批判し合うのではなく、尊重することが大切だと思いますし、それぞれが持続可能な形で農業を続けて頂ければ嬉しいです。

当園地では、雑草の種類によって茂る時期が異なることを利用して、草の管理を適切にすれば、その茂った草が傾倒して地面を覆うことで、ももの樹木に悪影響を与える雑草の生育を抑えることができます。
環境や身体への負荷を減らすために、農薬や肥料を使わない農法(自然栽培)の選択肢も農業の取り組みとして伝えることができればと思っています。
そのために、種を採取して台木を作り、次世代の苗木を育てます。

日本の農業予算は少な過ぎます。
予防医学の視点としても、食生活は健康に大きく関与することから、食料生産の基盤である農業生産への補助、持続可能な農業を推進する予算を増やすべきと考えます。
農業は多様化しており、その中でも、家族農業が果たしている役割は大きいです。しかしながら、国の支援においては蚊帳の外になっているので、小規模家族農業の維持にも目を向けてもらいたいと思っています。
和歌山市、岩出市、紀の川市で自然栽培に取り組む農家やオーガニック食品店経営者らの活動を通じて、自然栽培の取組みの理解を地域で広めようと集まった組織。一般の市民を対象に「自然農業塾(果樹コースと野菜コース)」の参加者を募集(定員を超える応募がある。)して月に1回程度開催している。果樹コース及び食農医健康セミナーを担当。
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近畿農政局和歌山県拠点
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