国産飼料資源の利用拡大に向けた地域循環の取組み
和歌山県串本町において、果樹生産者の加工組合と畜産農家が連携して、ジュース加工後に発生する搾りかす(以下、「残渣」という。)を繁殖和牛のエサ利用することで、地域循環・国産飼料の利用拡大につなげるための試行の取り組みを紹介。

重ね山果樹生産加工組合(以下「加工組合」)では、19軒の農家が輪番制で収穫したポンカンを加工施設に持ち込みジュースに加工している。ポンカンを搾る作業は、毎年1月下旬から2月下旬の間、ほぼ毎日行い、約800kgのポンカンを搾り、約500kgの残渣が発生している。

加工組合代表の中村氏(以下、「中村氏」という。)は、「残渣は、農家が持ち帰り、ポンカンの園地に肥料として利用しているが、農家の高齢化により残渣を持ち帰り、園地への肥料利用が重労働となっており、残渣を魚の養殖・家畜のエサに利用できないかを模索している。」と話されています。

串本町で和牛繫殖農家を営む畜産農家の中正司氏(以下、「中正司氏」という。)は、10年前に父から農場を継承し、現在、繁殖母牛約30頭、子牛約23頭を一人で飼育している。子牛価格の低迷、配合飼料価格の高騰もあり、農場経営が厳しいことから、飼料代を抑える等のコスト削減に取組んでいる。

輪番制の当番の日にポンカンを持ち込んだ農家は、「残渣を持ち帰り、園地に施用する作業が重労働でたいへんなので、飼料に利用してもらえるのは有難い。」と話されていました。

当拠点では、地域循環の取組みを推進する視点から、双方の課題等を聞き取り、残渣の保管、引き取り方法等の課題を把握したうえで、飼料利用に向けたマッチングを3回実施した。そのうえで、個別に聞き取りした内容、それぞれの経営事情等を共有し、双方にメリットがあり、互いに無理や負担が生じれば取組を見直すことを前提に今年産で試行することに合意した。

その結果、今年産で国産飼料資源の利用に向けた試行を行うことになり、1月23日、今年産のポンカンジュースの搾汁初日に出た残渣約250kgを引き取り、そのうち約20kgをそのまま牛に給餌し、牛の体調面への影響を観察するとともに、残りを発酵飼料に加工して長期の利用ができないかの検証に取り組んでいる。

今年産の試行では、延べ4回引き取り、残渣約750kgを飼料に利用した。中正司氏は、「飼料価格が高騰しており、残渣の提供は非常に有り難いが、一人で牛の世話をしているため、コスト、時間、労働力を掛けないで利用を検討したい。」と試行に取り組む感想を話されています。

来年度に向けた課題として、中村氏は「残渣は水分が多く、腐敗するのでそのままでは3~4日しか置いておけない。飼料等に利用するのであれば、残渣を一時保管する保管施設が必要。近隣の漁港に冷凍保管できる施設があるので活用できないか。」と話されています。また、中正司氏は「冷凍施設であれば、利用したい時に取りに行ける。そうすれば利用期間が広がるので、近隣の畜産農家にも声を掛けて利用を拡げたい。」と話されていました。

当拠点では、今年度の取り組みを踏まえて、令和6年度以降も継続して国産飼料資源の利用が取り組まれる様、残渣の保管場所、引取りに係る負担軽減等の課題解決に向け、引き続きマッチングを通じてサポートを行うとともに、関係機関等との連携を図りつつ地域循環の取組みに向け、引き続き推進をしていきたい。
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