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近畿農政局

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幸せを呼ぶお正月の伝統(串柿の里かつらぎ町四郷)

~生産量日本一の串柿が市場へ出荷されるまで~

和泉山脈の標高約300メートルのところに、四郷(しごう)と呼ばれる串柿の生産量が日本一の産地があります。四郷地区の串柿は、450年前から生産され長い歴史と伝統を育んでいます。農家の軒先や道沿いの柿屋(干場)に並んでいる串柿は、晩秋の空に架かるオレンジ色の玉のれんのようで、訪れる人々の目を楽しませています。
※広口・滝・東谷・平の4つの地区の総称。

鏡餅の上に飾る串柿は、日本神話に出てくる三種の神器の1つ「剣」を意味し、10個串は1本の串の中央に6個、両端に2個ずつ挿し、「いつもニコニコ(2個2個)仲むつ(中6つ)まじく、共に白髪(白い粉)の生えるまで」と、5個串は1本の串の中央に3個、両端に1個ずつ挿し、「1人1人(1個1個)が皆(3個)幸せに」と、家内安全や健康祈願の意味が込められています。


 【標高約300mの景色と串柿】

四郷地区の農家で、柿の収獲から串柿ができるまでの作業を体験しました。

【収穫作業】
柿は手で少し力を入れて引っ張ると取れましたが、急斜面のうえ、収穫期間が短く、木から木へ梯子を掛けて移動しながらの収穫作業は、想像以上にとても重労働であると感じました。











【ヘタ取り】
柿のヘタを1つずつ手作業で取っていきます。
ヘタ取り後は、重量選果機で柿の大きさごとに仕分けていきます。










【皮剥き】
柿を皮剥き機の手前にある台に載せると回転し自動で皮を剝いてくれ、下のコンテナに落ちていきます。
刃で怪我する恐れがある危険な作業のため、「絶対に機械で流れる柿を追わないように!」と教えていただき、緊張しながら挑戦しました。













【串刺し】
かつらぎ町役場から委嘱されて串柿の継承や担い手探しをされている、地域おこし協力隊員の川﨑さんに串挿しを教えていただきました。皮を剥いた、きれいな柿を手作業で1個ずつ串に挿していきます。串は、10個串用(13寸~17寸)、5個串用(7寸~10寸)があり、柿の大きさにより、挿し分けていきます。
皮を剥いた柿はツルツルと滑りやすく、真っすぐに挿していく作業が難しかったです。







【串柿の縄編み】
串の長さにより編み幅を変え、串柿を縄で編んでいき、10串で1連とします。
















【吊るし干し】
編み上がった串柿を、日当たりよく風通しの良い柿屋や軒先に吊るし、太陽と風で自然乾燥させると10~15日程度で渋が抜けます。











【手入れ】
棒押し(ぼうおし)と呼ばれるローラーで串柿を圧して、形を平らに整えていきます。
目で見て瞬時に柿の厚さを判断し、ローラーの高さを調節する作業がとても難しく、長年の経験でしか培うことのできない熟練の技だと実感しました。









【箱入れ】
串柿は、品種・規格別に分別し、5連を1箱に「串柿リーフレット」「バーコードシール」「和歌山四郷特産と記載された袋」を入れて詰めていきます。
※10個串:1号箱S M
2号箱L 2L 3L
5個串: 1号箱M L
2号箱2L 3L 4L







今後、串柿部会の各支部(14支部)において、役員による支部審査(目揃え会)を行い、本部審査に向け5箱のうち1箱を審査柿として選定します。審査基準は「秀A」「秀B」「優限」「粉限」「スキマ限」の5段階で評価されます。
※「〇限」は、限界基準のこと。

審査柿の選定が終わると、それぞれの箱を「和歌山・四郷の串柿」と記載されたシール(以下「シール」という)で封印し、最終審査である「本部審査」に向かいます。

令和6年12月17日、JA紀北かわかみ かつらぎ中央総合選果場において開催された串柿の本部審査を取材しました。

【荷受け】
前日に荷受けされた各支部の農家の方が出荷された串柿が、所狭しと並んでいます。
串柿を生産する農家の高齢化、担い手不足により、年々出荷数量は減少しています。









【審査】
各支部から選定された審査柿は、シールを開封し審査場へ運ばれ審査を受けます。











【仕上げ】
審査を終えた審査柿は「シール」で再び封印されます。













荷受け、審査、仕上げの項目にそれぞれ「済」が揃うと、本部審査は終了です。






















審査基準を満たしたものは、箱の等級欄に赤字で「秀」を押印し、いよいよ、全国各地の市場へ出荷され、お正月の縁起物として店頭に並んでいきます。















収穫から出荷まで、丁寧に教えていただきながら貴重な体験をさせていただき、一つ一つの行程に手間と時間をかけて思いを込め、串柿が生産されていることを学びました。

一方で老齢化や後継者不足により串柿生産農家が減少しているという課題についてもお話を伺いました。この伝統文化を決して絶やすことはしないようにと、生産者・四喜の会・地域おこし協力隊員が一体となって日々考えながら地域活性化に取り組まれています。

みなさんも風景を楽しむだけではなく、日本の伝統を見つめ直し、お正月に飾る鏡餅の上に、福をもたらす「串柿」を飾ってみませんか。
※四喜(しき)の会とは、地元の有志が集まり、四郷地区の地域活性化を目指す団体のこと

お問合せ先

近畿農政局和歌山県拠点

ダイヤルイン:073-436-3831