“国産コーヒー豆は1%”にロマンを感じて ~和歌山オリジナルコーヒーを目指して~
日高川町 MIDOFARM 代表 道仙信也さん
大阪から移住して日高川町で国産コーヒー豆の栽培を行っている道仙信也さんにお話しを伺いました。
大阪で看護師として勤務していた頃、国産コーヒーを飲んだことがないことに気づき、日本でコーヒーが栽培されているのかを調べてみました。
すると、明治11年に小笠原諸島でコーヒーの苗が定植されたことを知り、150年もの歴史があるにもかかわらず、国産コーヒーの自給率がわずか1%未満という現状に驚きました。
それまで農業には興味がありませんでしたが、この希少性にロマンを感じ、「自分で栽培してみたい」という思いが芽生え、国産コーヒーづくりへの挑戦を決意しました。

道仙信也さん

日高川町にあるコーヒー農園
さらに、海外では栽培時に大量の農薬が使われていますが、自分で栽培すれば使用量を抑えることができるのではないかと考えています。そんな思いから国産コーヒーの味をぜひ楽しんでほしいという思いが一層強まりました。
1「コーヒー2050年問題」とは、コーヒーベルト(赤道を挟んで北緯25度~南緯25度の地域)と呼ばれるコーヒー栽培地が、地球温暖化により減少してしまうことを指します。このまま温暖化が進むと2050年には、コーヒーの生産大国のブラジルの栽培適地の60%、同じく有名な産地であるアラビカのコーヒー産地の50%近く減少すると考えられています。そうなった場合、生産地では大量に高く買ってくれる国をマーケットとするため、日本のような小さなマーケットでは、簡単に買えない高級品になってしまうことが懸念されます。

コーヒーの苗木

ハウス栽培の様子(赤く熟した実)
< コーヒー栽培 >
コーヒー栽培について何もわからない状態でしたが、偶然、県内でコーヒー栽培をされている方がいることをテレビで知り、白浜にある「南紀白浜ファーム」で2年間、栽培のノウハウを学びました。
農地の確保や補助金の申請にあたっては、日高川町農業振興課の担当者が親身に対応してくださいました。その結果、前例の少ないコーヒー栽培でも補助金を申請できるようになりました。
さらに、クラウドファンディングの活用などを通じて、栽培を始めることができました。
コーヒー栽培に適した温度は15~25℃ですが、日本の夏の強い日差しは果実の肥大や品質低下の原因となります。そのため、寒冷差による遮光やハウスの開閉による温度管理など、きめ細かな対応が欠かせません。
苗木は岡山県の生産者から、「凍結解凍覚醒法」(※2)を施した苗木50株(1株3本植え)を購入しました。農薬をできるだけ使わない栽培を心掛け、害虫(貝殻虫など)対策も手作業で行っていますが、蔓延すると被害が大きいため、マシン油を使って予防しています。
※2「凍結解凍覚醒法」とは、種子をマイナス60℃まで半年かけて凍結し、さらに半年かけて種を解凍していくことで、耐寒冷地順応性を高めて日本でのコーヒー栽培を可能にする技術。

来年に向けた選定作業

皮をむいたコーヒー豆
< 今後の目標 >
栽培方法については、国内の生産者と情報交換を続けていますが、3年目以降は収量が減少する傾向があると聞いており、剪定方法の見直しや栽培技術の改善に取り組んでいます。
経営面では、コーヒー豆の販売に加え、果肉部分を活用した化粧品の開発(抗酸化作用のあるポリフェノール「クロロゲン酸」を利用)や、葉に含まれる成分の分析による医療・健康分野への応用(アルツハイマーへの効果が期待される「トリゴネリン」を含有)にも挑戦中です。「コーヒー豆」「化粧品」「医療」の三本柱で事業を展開し、収益の安定化を目指しています。
また、和歌山の環境に適した品種開発に向けて果樹試験場との連携を進めるほか、コーヒー豆の発酵には熊野古道由来の酵母菌を取り入れるなど、「和歌山産コーヒー」のブランド化に取り組んでいます。
現在はまだ収入がなく、見学者に勧められる段階ではありませんが、「きちんと結果を出し、仲間を増やしたい。焙煎ワークショップや、栽培でお世話になった地域への恩返しもしたい」と夢を語ってくださいました。
道仙さんの挑戦は、これからも続きます。
≪MIDO FARM≫
和歌山県日高郡日高川町中津川筒井458
Instagram;https://www.instagram.com/mido_farm.coffee/(外部リンク)
お問合せ先
近畿農政局和歌山県拠点
ダイヤルイン:073-436-3831




