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東北農政局

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秋田地域からの便り(令和5年度)


秋田の「農山漁村の季節の風物詩」、「農産物直売所、農漁家民宿等の取組」、「村おこしイベント」、「農山漁村の行事、お祭り」、「郷土料理」など東北各地域の取組や様子などを紹介します。

奇祭「掛魚まつり」と鱈汁 -秋田県・にかほ市-(2024年3月5日掲載)

2月4日、この時期には珍しい晴天の立春。金浦山神社の境内ではでっぷりと太り、重さが10キログラムを超える立派な鱈が数匹、荒縄で吊るされ大勢の参拝者に囲まれていました。この日は、今から300年以上前の元禄年間からにかほ市金浦地区に伝わるとされる「掛魚(かけよ)まつり」の日です。
「掛魚まつり」は、別名「鱈(タラ)まつり」とも呼ばれ、漁師が貴重な漁獲の一部を氏神である神社に奉納するための神事で、日本の奇祭のひとつと言われています。
 
神社の氏子総代表である斉藤一郎さんは、「金浦は天然の良港であるが、鱈漁の最盛期になる1月から2月は、例年大しけの時期と重なる。海難事故も多く、一度に数十名が犠牲となり村から大人の男性が見られなくなったという話も伝わっており、掛魚まつりは漁の安全と豊漁を祈願する祭りである。」と教えてくれました。また、「以前は50本以上の鱈が奉納されたこともあり、鱈を担いで町内を練り歩く奉納行列が見もので、地域の人口を超える程の人が全国から見に来て大賑わいであった。コロナ禍で行列が中止となり、今では担ぎ手の確保もままならず再開の見通しが立たない。」と残念そうでしたが、「地区の賑わいのためにも、みんなで知恵を出し合い、何とか復活させたい。」と話してくださいました。 
鱈は鰰(ハタハタ)と並び冬の秋田を代表する魚で、立春までの時期に獲れる寒鱈は、身も引き締まり美味とされています。特に珍重されるのが「だだみ(白子)」で、鱈汁(※)には欠かせない具材です。今は行われていませんが、昔は奉納された鱈を氏子みずから料理し、祭の参加者に振舞ったそうです。
 
この日、一般社団法人にかほ市観光協会では、祭に合わせ「道の駅象潟 ねむの丘」に隣接する「にかほっと」で、「鱈汁のふるまい」を行い、観光客を喜ばせました。
荒れる日本海の風景と、芯から体が温まる鱈汁を一度に味わえるこの時期のにかほ市には、冬の秋田の醍醐味が詰まっています。(もちろん、おいしい地酒もあり〼)

※農林水産省ホームページ「うちの郷土料理『鱈汁 秋田県』」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/29_17_akita.html


にかほ市観光に関するお問合せ先:一般社団法人にかほ市観光協会
住所:〒018-0121 秋田県にかほ市象潟町字大塩越36-1
電話:0184-43-6608
Webページ:https://www.nikaho-kanko.jp/[外部リンク]

     (情報収集)秋田県拠点  電話:018-862-5611

奇祭「掛魚まつり」と鱈汁

奉納された鱈
奉納された鱈

金浦山神社氏子総代表の斉藤さん
金浦山神社氏子総代表の斉藤さん

「奉納行列」の様子
コロナ禍前に行われていた
「奉納行列」の様子

ふるまいの鱈汁
ふるまいの鱈汁

(写真 1、2枚目:秋田県拠点職員 撮影  3、4枚目:(一社)にかほ市観光協会 提供)

30年越しの想い「小坂産ワイン」誕生物語 -秋田県・小坂町-(2023年12月5日掲載)

小坂町は、県の北東部に位置し、明治時代の鉱業繁栄期の建築物や国立公園十和田湖を核とした観光振興に積極的に取り組んでいます。中でも平成元年に新たな産業として創出された未利用農地での山ぶどう系品種の栽培とワイン造りには大変なご苦労がありました。 

~山ぶどう系品種導入の苦労~

小坂町では、他産地にはない日本のオリジナル品種でのワイン造りをコンセプトに火山灰土で水はけがよく、葡萄栽培に最適な鴇(ときと)地区での山ぶどう系品種による栽培をスタートしました。しかし、全てが順風満帆とはいかず、平成元年から平成8年までは「花は咲くが実がつかない。」など栽培が迷走していました。そこで、町担当者と農家は、葡萄産地である横手市の農家に週に一回、5年間通い、寒い場所での栽培方法と品種選びを学び、実践したところ生産量が一気に伸びました。振り返ると現在は山ぶどう系品種の導入から既に30年の年月が過ぎていました。今では山ぶどう系品種約20トンの生産量となっています。 

~ワイン造りへの挑戦~

平成30年からワイン法が施行されるとの情報を得ていた小坂町は、「日本ワイン(※)の表示ができるこのチャンスを逃すまい。」とのことで、平成29年に小坂七滝ワイナリーを竣工しました。町の担当者は「初めてのワイン造りだったが、葡萄栽培の30年の間に繋がったワイン醸造経験者やソムリエ、マーケティング経験者からアドバイザーとして加わっていただき、その方々の指導のお陰で初年度にも関わらず大きな問題もなくワインを造って販売展開ができた。」と話してくれました。現在、ワインは約16種類、年間約2万本の製造量となっています。 

~今後の課題と目標~

ワイン製造担当者からは「ワイン酵母や葡萄の品種がワインの風味や色にどう影響するのか判断できず、まだまだ経験不足。毎日のようにアドバイザーからの指導を受け経験値を蓄積している。」と課題を話してくれました。また、ワインの原料である葡萄の確保について、町の担当者からは「地域おこし協力隊を卒業後にワイナリーで採用し、葡萄栽培に従事させたい。その他にもワイナリーを就業の場とした移住によるモデルケースを創りたいと考えている。」、「現在ワインの販売先は県内が99%。今後、全国へ販路を拡大し、最終的にワイン10万本(原料100トン)製造と販売額1億円が目標」と小坂七滝ワイナリーの将来像を熱く話していただきました。山ぶどう系品種導入から35年、地域の思いが詰まった「小坂産ワイン」、今後の販路拡大が大いに期待されます。
 
「日本ワイン」とは、国税庁が定める「果実酒等の製法品質表示基準」によって「国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」と基準が設けられ2018年から適用されました。(農林水産省ホームページより)


お問合せ先:小坂七滝ワイナリー
住所:〒017-0203 秋田県鹿角郡小坂町字上向滝ノ下22
電話:0186-22-3130
Webページ:https://kosaka-7falls-winery.com/[外部リンク]

     (情報収集)秋田県拠点  電話:018-862-5611

30年越しの想い「小坂産ワイン」誕生物語

鴇(ときと)地区の葡萄農園にて
鴇(ときと)地区の葡萄農園にて小坂七滝ワイナリーの成田さん(左)と生産者代表の宮舘さん(右)

ワインを抱え満面の笑顔の成田さん
ワインを抱え満面の笑顔の成田さん

ワイン仕込みの様子
ワイン仕込みの様子

ワイン醸造タンク
施設内ワイン醸造タンク

(写真 1、2枚目:秋田県拠点職員 撮影  3、4枚目:小坂七滝ワイナリー 提供)

稲庭うどんでエール!? -秋田県・湯沢市-(2023年9月5日掲載)

日本三大うどんのひとつに数えられる「稲庭うどん」は、350年の歴史があり、発祥地の秋田県湯沢市稲庭町では「手延べ干しめん」の伝統製法が受け継がれ、製麺工場や販売店舗が多く立ち並んでいます。

創業から41年の「株式会社稲庭うどん小川(以下「小川」という。)」では、創業当初から製麺の全工程を手作業で行っており、特別な生産・製造方法について原料や製造方法を消費者が適正に判断出来るように統一的基準を定めた「手延べ干しめん特定JAS」の認定工場第1号となっています。
また、小川では25年前から国内商社を通じて、米国やアジアを中心に輸出を展開してきました。小川博和代表取締役社長(以下「小川社長」という。)は、秋田県内の複数の加工食品メーカーが共同で輸出を行うことにより、秋田の加工食品が海外マーケットに認知され輸出拡大に繋がると考え、令和5年2月に秋田県内の特産品を製造する5社に声をかけ「秋田県加工食品輸出拡大協議会」を設立しました。小川社長は、「やる気のある事業者が集まったので、海外展示会への共同出展やイベントの実施などしっかりと活動を継続しながら、6社合わせた輸出額合計を2026年度までおよそ2億円に伸ばして行きたい。」と目標を話してくれました。

伝統を守りつつ新しいことにチャレンジしている小川では、稲庭うどんの製造工程でどうしても発生するうどんの「切れ端」を高齢者施設などに無償で提供し、流動食に取り入れてもらうなど、これまでも食品ロスに取り組んできました。
本年、その一環として湯沢市の相談所経由で羽後町のクラフトビール醸造所「株式会社羽後麦酒」とのマッチングを行い、秋田県総合食品研究センターの協力を得て、「切れ端」を副原料に使った「稲庭うどんエール(発泡酒)」を開発しました。話題性もあって好評でほぼ完売状態となっており、今後追加の仕込みを行うとのことです。小川選子専務取締役によると、「適度な苦みがあり、何より稲庭うどんのほのかな塩味を感じてもらいたい。」と話していました。

まだまだ厳しい残暑が続いていますが、冷たい稲庭うどんとエールで涼を求めてみてはいかがでしょうか。


お問合せ先:株式会社稲庭うどん小川
住所:秋田県湯沢市稲庭町字大森沢144
電話:0183-43-2803
Webページ:https://www.ogawaudon.com[外部リンク]

     (情報収集)秋田県拠点  電話:018-862-5611

稲庭うどんでエール!?

稲庭うどん小川社屋
株式会社稲庭うどん小川社屋

小川和博代表取締役社長、小川選子専務取締役
右側から小川和博代表取締役社長、小川選子専務取締役

稲庭うどんと稲庭うどんエール
稲庭うどんと稲庭うどんエール

「秋田県加工食品輸出拡大協議会」発足式
「秋田県加工食品輸出拡大協議会」発足式(令和5年6月1日)

(写真 1、3枚目:株式会社稲庭うどん小川 提供   2、4枚目:秋田県拠点職員 撮影)