このページの本文へ移動

東北農政局

メニュー

きらり!農業人(令和3年度)

vol.17 山城 恵介 さん(加美町)<2021年10月掲載>



道は続いてゆく~農業を身近なものに、情報を伝え続ける~

農家の9代目として生まれた加美町の山城恵介さん。4年前に親元就農し、父の庄哉(しょうや)さんの元で水稲や牧草の管理、繁殖和牛の世話を行う傍ら、農業系のYouTuberとしても活動し、農作業風景などの動画を発信しています。

ー就農しようと思ったきっかけは何ですか。
子どもの頃は、農業にほとんど関心はありませんでした。高校進学の頃には、ITに興味があったことから、仙台の高等専門学校に進学し、将来はIT関係の仕事に就くことを考えていましたが、卒業後に留学したアメリカ生活の経験が、就農を決意するきっかけになりました。留学中のホームステイの家族は、地元の直売所から野菜を仕入れ、ヘルシーな料理を配達するビジネスを行っていました。アメリカは、有機栽培専門の直売所が普及しており、オーガニック食品や食品ロスへの関心が高いと感じました。そのような中、ステイ先の家族からせっかく農家に生まれたのなら農業にITの知識を生かすことを勧められ、自分の得意な分野を生かした農業を始めたいと考えるようになり、平成29年9月に就農しました。

ー農業を始めていかがですか。
農業はたくさんの作業工程があり、楽しくやっています。また、新しい農業機械に乗る際はわくわくします。農作業を通じて、農業の魅力を初めて知ることも多く、農家に生まれた自分ですら、農業について知る機会や自然に触れる機会が少なかったと実感しました。

ーYouTubeでの情報発信を始めたきっかけは何ですか。
普段、自分の口に入るものがどのように作られるか考えている人は少ないと思います。日本では、農業が食と切り離されていると感じており、もっと国民全体が農業に目を向けなければ、どんどん衰退してしまうのではないかと思いました。しかし、農業に対して、最低限の知識がないと興味・関心が向かないと考え、YouTubeで情報発信することを思いつきました。農作業やお米が成長する過程、和牛を育てる様子などを撮影していますが、消費者と農家を近づけるため、まず農業に興味を持ってもらい、携わる人が増えるきっかけになればと思っています。
このほか、獣医さんと一緒に牛農家を回り、出産等の手伝いをしながら、地域の方々とコミュニケーションを取っています。初めて、子牛の出産に立ち会ったときは、とても感動しました。

ー今後の展望を教えてください。
狩猟免許とわな猟免許を取得し、今年から猟友会に入る予定です。加美町では、イノシシの被害が増えてきたため、来年から、捕獲活動に参加したいと考えています。
今は稲作での規模拡大は考えていませんが、繁殖和牛の飼養頭数は拡大していきたいと思います。将来的には、体験・観光型の農園を開き、画面越しで動画を見るだけでなく、実際に足を運んでもらい、農作業を体験してもらいたいです。自然に触れる機会が少なくなっている子どもたちに五感で自然を感じられる場を作りたいと思っています。


「動画を見て、農業や食品に対して、興味や関心を持ってくれる人が増えると嬉しいです」と語る山城さん。情報発信など活発に活動されている山城さんの今後の活躍に期待しています。



 

田植え機に乗る山城さん

 

苗の追肥作業

一覧に戻る

vol.16 (株)ぱるファーム大曲 竹内 梨沙 さん(東松島市)<2021年7月掲載>



農業と生きていく~日々学び続け、成長し続ける~

東松島市の農業法人(株)ぱるファーム大曲で働く竹内梨沙さん(山形県酒田市出身)。大学進学のため石巻市に転居し、生物科学を学んだ竹内さんは、丁度新卒者の社員を募集していた(株)ぱるファーム大曲と出会い、法人への就農を決意しました。
東日本大震災の津波被害からの再生を目的に設立された(株)ぱるファーム大曲では、主に水稲、麦、大豆、トマト、ホウレンソウの栽培を行っており、就農4年目となる竹内さんは水稲栽培担当として奮闘中です。

-(株)ぱるファーム大曲に就農するまでの経緯を教えてください。
実家が農家だったため、幼い頃から農作業の手伝いをしていました。そのため、以前から農業関係の仕事に関心がありました。大学では植物に関する勉強をしていたので研究職に就くことも考えていたのですが、インターンシップで採種場の仕事を経験してみて、自分で作物を育てたり、体を動かしたりする仕事に魅力を感じました。ただ、一人で農業を始めるには知らないことが多すぎると思い、法人就農を選びました。

-現在は、どのような作業を担当しているのですか。
幼い頃から実家の水稲栽培に触れてきたこともあって、水稲栽培の担当を希望しました。最初は苗出しなどの補助作業が中心でしたが、重い肥料などは持つことが出来ず、力仕事には限界がありました。そういったこともあり、会社からの支援を得てフォークリフト免許と大型特殊免許を取得し、今は農機のオペレーターを任されています。機械の操作や運転が得意だったわけではないので、初めは慣れない作業に苦労しましたが、今ではスムーズに行えるようになりました。ここでは、新人の頃からいろいろな作業を任せてもらえるので、働いていて楽しいです。

-就農前に持っていた農業のイメージとの違いはありましたか。
(株)ぱるファーム大曲の水稲作付面積は75haもあることから、一般的な経営規模の農家であれば2、3日で終わる田植えを、3週間くらいかけて行っており、ここまで広大な水田を管理していることに驚きました。また、農業は体力勝負というイメージがありましたが、オペレーターの仕事を通して、意外と機械で出来る作業も多いことに気が付きました。機械を操作する際は安全確認が何より重要であるため、体力を使うよりも気を使います。

-今まで作業してきた中で苦労した点や工夫した点はありますか。
病害虫や天候によって収量や品質が左右されることが苦労する点です。そういった周りの環境に合わせることは難しいですが、そこに面白さも感じています。
また、作業中は次の作業のことを考えて、効率的に作業が進むように意識しています。

-農業法人への就農を希望する人へのアドバイスがあればお願いします。
様々な職業がある中で農業に関心を持った時点で素質があると思います。仕事をしていく中では、特に状況を観察して判断することが多いので、様々なことに感心を持てる人の方が向いていると思います。最初はうまくいかないことも多いと思いますが、やればやるほど成果につながり、達成感があるのでとにかくやってみることが大事だと思います。

-今後の目標や挑戦したいこことはありますか。
地元の物を食べて育っているので、地元に戻りたい気持ちもあります。一方で、進学のため宮城県に来て、復興に向けた地域の取組を見てきたことで、震災から復興した農地を守っていきたいという気持ちもあります。そのため、はっきりと将来について決めていませんが、ずっと農業を続けたいと思っています。
畑作物にも関心があるため、今後は野菜の栽培のような今までやったことのない作業もやってみたいと思っています。また、普及センターや農協等の経験年数が多い方たちは、作物に異常があったときに何が起こっているか即座に判断でき、その姿に憧れています。将来は私もいろいろなことにすぐ対応出来るような農業者になりたいです。


竹内さんの働きぶりについて(株)ぱるファーム大曲の小岩代表や先輩女性スタッフの及川さんは、「いろいろなことに気が付き、自ら仕事を見つけて動いてくれるので助かっている」「体が小さいながらも果敢に仕事に取り組んで日々成長しており、みんなの先頭に立って活躍してもらいたい」と語っていました。
向上心が強く、生き生きと楽しく働いている竹内さん。これからも農業に関する様々なことを吸収し、成長し続けてほしいと思います。


 

竹内さんが働く(株)ぱるファーム大曲の乾燥調整機械

 

大型トラクターも乗りこなします

一覧に戻る

vol.15 木漏れ日農園 鎌田大地 さん(登米市) <2021年6月掲載>


里山と共栄 ~山間地農業のロールモデルを創造する~

登米市東和町の山間地で『木漏れ日農園』を経営する鎌田大地さん(登米市南方町出身)。米作りを行う祖父母の姿を見て高校2年生の時に就農を決意しましたが、両親や祖父母からは「儲からないからやめた方がいい」と反対されたそうです。しかし、「自分が山間地でもうまくやれる方法を見つけたい」と逆に決意を強め、東北大学で農業経営を学んだ後、2015年4月に就農しました。

就農7年目となる現在は約160アールの畑で、年間を通して野菜70種、ハーブ20種及び登米市伝統野菜16種を無農薬・無化学肥料にこだわって生産してるほか、採卵養鶏や養蜂、きのこの栽培など幅広く手がけ、山間地でもしっかり稼げる「農業」・「畜産業」・「林業」の複合経営の確立を目指しています。

-少量多品目の野菜を生産するメリットは何ですか。
生産量が少なく単価の高い野菜を多品目生産すれば、条件不利の山間地でも一定の所得を確保できると考えました。

野菜は主に、仙台市等の飲食店に販売していますが、最近では飲食店からのリクエストに応じて、さらに栽培品目を増やしています。飲食店と直接取引することで、料理する方や食べた方の声を聞くことができるのは強みであり、例えば、日持ちするハンサムレタス、落花生「おおまさり」、翡翠(ひすい)ナス、大浦ごぼうなどの栽培を始めました。

また、少量多品目を生産することは、天候等で一つの品目がダメになっても、他の品目でカバーできることから、リスクヘッジとして有効と考えます。 

-採卵養鶏を始めたきっかけは何ですか。
本当は牛を飼いたかったのですが、施設の整備や人手も必要なことから、断念しました。親戚や知人に養鶏農家がおり、ノウハウを教えてもらえる環境があったことや、設備経費が比較的に手頃なことから養鶏を始めました。

現在、里山の斜面に設置した自作の鶏舎で約80羽を平飼いし、有精卵を生産しています。品種は純国産にこだわり、排卵率の高い「もみじ」、「さくら」を飼養しています。飼料は自家製発酵飼料でバランスよく栄養素を与え、腸内環境にも配慮しています。また、米農家の実家で作る環境保全米のクズ米を与えています。廃棄野菜もおやつとして与え、鶏糞は野菜の畑に肥料として還元しています。

-土着のニホンミツバチを使って養蜂も行っていると聞きましたが。
畑に隣接した山林にニホンミツバチが生息していたことから、巣箱を設置してみたところ、うまくミツバチが入りました。誘引剤としての役割を持つ「キンリョウヘン」というランの鉢植えを巣箱の近くに置いています。

セイヨウミツバチと比べるとニホンミツバチの採れる蜜の量は半分以下で、年に1回しか採蜜できませんが、高価格で販売でき、毎年、すぐに完売してしまいます。

山間地がゆえに、農薬の飛散も少なく、私自身も農薬・化学肥料を使用していないことから、養蜂を行う環境としては自分の経営方針に適していると思っています。また、蜂がいることで果菜類の受粉にも役立っています。

 -林業としてはどのような取組を行っていますか。
畑に隣接して3町歩ほどの山を所有しており、倒木の処理や間伐など、全て自分で管理しています。学生時代から森林管理を行うNPO法人の活動に参画し、ノウハウを習得しました。間伐等で得た木材は、薪等に利用しています。このほか、きのこや山菜の栽培も行っています。

-今後の展望を聞かせてください。
今年2月に法人化し、県外出身者で登米市東和町に移住してきた大学時代の友人を一人雇用しました。今後はもう一人仲間を誘い、農林畜産業の複合経営を確立していきたいと考えています。

新たな取組としては、今年、きのこ専用にハウスを1棟改装し、薪ボイラーを設置して本格的にきのこの菌床栽培を始める予定です。また、今後人手が増えれば、短角牛の林内放牧をやってみたいです。

将来的には6次産業化も考えており、直売所兼加工場を整備して、惣菜等も販売したいです。また、趣味も兼ねて狩猟免許を取得していることから、捕獲した鳥獣をジビエとして活用するための加工施設も併設できればと考えています。

木漏れ日の差し込む豊かな里山と共存・共栄し、山間地農業のロールモデルとなって地域に若者を呼び込みたいです。

 性格的に同じことをずっとやっているのは合わないと語る鎌田さん。新しいことに積極的に取り組み、バイタリティあふれる鎌田さんのこれからの活躍に期待しています。


 

無農薬・無化学肥料にこだわった農園

 

純国産にこだわった採卵養鶏

ニホンミツバチの巣箱

一覧に戻る

お問合せ先

宮城県拠点
〒980-0014
宮城県仙台市青葉区本町三丁目3番1号(仙台合同庁舎A棟)
代表:022-263-1111(内線4510)
直通:022-266-8778