とうかいほっとメール第447号(令和7年1月6日発行)
東海農政局長年頭所感
疏通千里・利澤萬世
(これからの農政の推進にあたって)
新年おめでとうございます。
皆さまにおかれましては、健やかに新春をお迎えのこととお喜び申し上げます。
年頭にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
昨年7月5日の着任後、まずは明治用水頭首工の復旧工事現場に赴きましたが、当時は出水期で工事は中断している時期であることから、昨年12月、改めて工事の進捗を把握するため、明治用水頭首工の復旧工事現場と明治本流シールド工事をつぶさに確認してきました。その際、安城市にある明治用水土地改良区と隣接する「水のかんきょう学習館」で明治用水の歴史を振り返りました。
ご存じの方も多いと思いますが、明治用水は先人達により水の乏しい碧海台地に通水することを目的として江戸期から構想され、明治13年に完成をみた我が国最古の本格的な用水です。
頭首工から少し下った場所、旧東海道と明治用水(現在は暗渠化)との交差点の角に、明治17年に建立された明治川神社が静かに佇んでおり、神社前の記念碑には用水の竣工式に臨んだ内務卿松方正義の書による、表題の「疏通千里・利澤萬世」(そつうせんり・りたくばんせい)が刻まれており、当時の県民の疏水に対する熱い想いが伝わってきます。
その後の愛知県の農業の発展は言わずもがなで、現在の安城市に農事試験場(現:愛知県農業総合試験場)が移転。「日本デンマーク」と呼ばれ、昭和前期は用水の受益面積は1万ヘクタールにまで達し、我が国を代表する農業地域となりました。この頃、近くの豊橋市では「温室栽培」の開発・普及が本格的に始まり、我が国のスタンダードとして全国に普及していったのも施設園芸にかかわる人たちの間では有名な話題です。
現在、明治用水の農業関係の受益面積は5千ヘクタール強まで減少しています。農地は転用され、受益地内の宅地化・商業施設化・工業用地化も進んでおり、三十数年前、私が学生時代当地を訪問した頃の風景とも一変しています。産業構造の変化もすさまじいですが、「持続的な食料の供給を我が国の農地で最大限確保する」ための国民的な盛り上がりは、まだまだ、と感じます。ここまで明治用水の話題を述べましたが、農政局管内の岐阜県、愛知県、三重県内の食と農、くらしを支える用水をつくりあげた先人はこの状況を見てどう想うのか、心の中で自問しています。
食料・農業・農村基本法の改正ののち、現在は基本計画の策定に向け検討を進めていますが、国民全体として、我が国の農業の将来をどこまで「本気で」考えるのか、試される年と思います。国民一人一人のマインドが変わることが必要と考えます。このことに向き合いながら、前向きな気持ちで、本年も業務を進めてまいります。
皆さんにとって新年が幸ある年となるよう、祈念いたします。本年もよろしくお願いいたします。
令和7年1月
東海農政局長 秋葉 一彦
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次回の「とうかいほっとメール」は令和7年1月20日(月曜日)発行を予定しています。
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