地域で活動する多様な主体との意見交換会(愛知県会場)(令和6年2月29日)
東海農政局は、地域で活動する多様な主体の皆さまと、食品ロスの削減、食品アクセス問題について、意見交換を実施しました。
日時
令和6年2月29日(木曜日)13時30分から15時30分
場所
桜華会館(名古屋市中区三の丸一丁目7番2号)
出席団体等
愛知県消費者団体連絡会
愛知県生活協同組合連合会
生活協同組合コープあいち
特定非営利活動法人セカンドハーベスト名古屋
日進絆子ども食堂
わいわい子ども食堂プロジェクト
名城食品株式会社
どんぐりピット株式会社
愛知県 環境局 資源循環推進課
愛知県 農業水産局 農政部 食育消費流通課
(順不同、敬称略)
主な内容
1.各団体の活動等について
〈愛知県消費者団体連絡会〉…消費者団体
平和な日本で、安心して食べること、こどもたちの健やかな成長、安心して働き続けること、安心して老いることができることなど「安心」できる社会を求め活動しています。また、平和や環境問題から税・社会保障問題とくらしに関わる問題をテーマに学び、考え、行動、そして交流しています。こども食堂やインボイス制度についても学習会を開催しています。
〈愛知県生活協同組合連合会〉…消費者団体
一昨年創立70周年を迎え、県内36の会員生協がその特色を生かして消費者のくらしを支える活動を行っています。また、よりよい暮らしを組合員に提供できるよう各種行事、コンテスト、学習会、防災研修・訓練などを実施しています。県下会員生協、組合員の暮らしをしっかり支えていく使命をしっかり持ちながら取り組んでいます。
〈生活協同組合コープあいち〉…消費者団体
主な事業として宅配事業、店舗事業、福祉事業を行っています。本日のテーマに合わせて行っている活動は、フードバンクへの食の支援であり、東海地区のコープぎふ、みえ、あいちの3生協で2022年度に約76トンの支援を実施しています。店舗の食品ロスを減らす取り組みとして、組合員への「てまえどり」の呼びかけ、在庫抑制に資する商品の自動発注を実施。発生した食品残さは肥料や発電に利用しています。
〈特定非営利活動法人セカンドハーベスト名古屋〉…フードバンク
2008年に設立し、2023年の食品取扱い実績は450トン強、寄贈企業は291社となっています。我々の任務は、活動を通じて東海地方における「食のセーフティネット」を構築することです。課題は、コロナ禍、ウクライナ戦争等で生活困窮者が増える一方、フードバンクへの寄付が減少傾向にあることで、これを打破するため食品会社への訪問活動を展開し、食品の寄付をお願いしています。
〈日進絆子ども食堂〉…こども食堂
2017年から愛知県日進市でこども食堂の運営を行っており、180家族が登録しています。2020年にファミリーマートの日進三本木町店の協力により日本初のコンビニのフードドライブが始まり、その活動が広がり、今年3月には、全国のファミリーマート3000店舗にフードドライブが広まりました。集まった食品は近くのこども食堂に提供される予定です。また「アジパンダ食堂」という味の素グループが行う活動により、その利益を我々こども食堂の運営に応援頂いています。この応援は、非常にありがたいです。
〈わいわい子ども食堂プロジェクト〉…こども食堂
2015年11月より名古屋市北区の3団体の協働でこども食堂を開催しています。それぞれの力を発揮しながら「地域まるごとの子育て支援」「こどもたちが安心して集える居場所づくり」をめざしています。
〈名城食品株式会社〉…食品製造事業者
昭和48年に設立し、愛知県知多郡阿久比町に本社を置き、チルド麺の製造・販売を行っています。食品ロスの削減については、商品の品質改善を図り賞味期限を延長することにより対応しています。食品ロスの削減及び社会貢献活動として、2022年度は年間でこども食堂に76,173食の製品提供を行いました。また、環境への配慮として、プラスチックトレーを使用しない包装に切替え、年間31トンのプラスチック使用量を削減する見込みです。
〈どんぐりピット株式会社〉…流通事業者
2020年に設立し、愛知県豊田市を活動拠点としています。2021年に消費者庁の食品ロス削減推進大賞審査委員会委員長賞を受賞しました。主な事業はシェア冷蔵庫サービスで、このサービスはフードロスとなる食品を誰でも販売することができる次世代型の自動販売機と理解してもらいたいです。現在愛知県と神奈川県で展開しており、今後、シェア冷蔵庫の設置を拡大する予定です。
〈愛知県 環境局 資源循環推進課〉
愛知県環境局では、2022年2月に「愛知県食品ロス削減推進計画」を策定し、食品ロスの発生量を2030年度までに2000年度比で半減させることや県民意識の向上を目指しています。そのための施策として、環境学習の実施や「あいち食品ロス削減パートナーシップ制度」で企業や団体の食品ロス削減の取り組みを促進・周知するなど、啓発をはじめとした色々な取り組みを行っています。
〈愛知県 農業水産局 農政部 食育消費流通課〉
愛知県では食育を総合的かつ計画的に推進するために愛知県食育推進会議を設置し、知事をトップに5年ごとに愛知県食育推進計画を作成しその取り組みを推進しています。現在「あいち食育いきいきプラン2025~第4次愛知県食育推進計画~」を作成し、その取り組みを進めています。食品ロスについては、日々の生活の中で、未利用食品の有効活用、フードバンク活動の紹介をウェブサイト、食育ネットあいちなどで情報発信を行い、理解促進を行っています。
2.意見交換会の内容
(1)質疑応答
- Q1:セカンドハーベスト名古屋
フードバンクの役目は、こども食堂を含む食品受領団体に対し必要な食品を必要な量だけ集めることです。近年の物価高騰により、食品メーカーは食品ロス低減の取り組みを推進しているため、食品ロスが減少傾向にあり、フードバンクは食品集めに苦労しています。このことから、これまでフードバンクに提供したことのない企業をいかに発掘するかが課題と考えます。フードバンクへ必要な量を集めるための施策はどのように考えますか。
A1:東海農政局
農林水産省では、委託事業によりフードバンクの食品の取扱量拡大に向け、食品事業者とのマッチングやフードバンク間のノウハウ共有等を推進するためのサポートを実施しています。また、東海農政局では食品ロス削減として、商慣習の見直し、消費者啓発について食品事業者と意見交換を行う中で、フードバンクへの支援も呼びかけています。さらに、フードバンク支援の拡大として、フードバンクと食品関連事業者等とのマッチングをWeb上で行う場「食の架け橋」を運営する等を行っています。
今後も、皆さま方と連携しつつ、フードバンク支援の拡大に努めてまいります。
- Q2:日進絆子ども食堂
多くのこども食堂では、さまざまな食材やまとまった量の食材を必要とするため、その運搬に苦労しています。こども食堂はボランティアの方が運営されており、自分の車で食材を引き取りに行くことが多く、この運搬の問題にどのこども食堂も苦労しています。行政主導でこの問題を解決できないでしょうか。
A2:東海農政局
フードバンク、こども食堂の活動において、輸配送費の負担も課題となっていることは承知しています。令和5年度補正予算(食品ロス削減総合対策事業)において、フードバンクに対する輸配送費の支援についても措置しています。要件等あるので詳細は担当まで問い合わせください。
- Q3:セカンドハーベスト名古屋
食品ロス削減緊急対策事業でのフードバンクへの輸配送費の支援ですが、人件費は出せますでしょうか。また、先進的な取り組みに支援するということですが、具体的にどのようなものですか。
A3:東海農政局
食品ロス削減緊急対策事業では、人件費も対象となり得ます。また、先進的取り組みとは、複数の市町村の要支援者に食品を提供しているフードバンクまたは、食品廃棄物を大量に排出する事業者(食品リサイクル法の食品廃棄物等多量発生事業者)から未利用食品を直接受けて、こども食堂等に食品を提供するフードバンクとご理解いただきたいです。
(2) フリーディスカッション
ア 食品ロスの削減関連
- (ア) 食品製造者、流通業者の食品ロスに関する課題について
【名城食品】
地域のフードバンクを通じて、こども食堂に商品の提供をしています。当社は賞味期限の短い商品を扱っており、賞味期限間近の商品でも提供可能であれば更に多くの商品を提供することができます。
【どんぐりピット株式会社】
野菜の生産現場では、事業過程に乗る前に、既に多くの野菜が廃棄されています。気軽に販売できるロットで商品を売買できることがフードロス削減には必要です。色々な形、大きさのものが消費者に届くような販売を実現していきたいです。商流の改善に支援があれば、我々の取り組みも食品ロスの削減と食品アクセス問題に貢献できます。
【日進絆子ども食堂】
コンビニ弁当が日々大量に廃棄されています。この廃棄される弁当を、こどもたちに食べてもらうなど有効に活用できないものでしょうか。弁当は、消費期限の2時間くらい前には棚からバックヤードに移されるので、そこで有効活用できないかと思っています。コンビニオーナーの話では、店舗から持ち帰ると食中毒の発生や販売品が売れなくなるリスクがあるため、店内で食べてもらうことが必要とのことでした。行政として呼びかけるなど、廃棄される弁当を誰かに食べてもらう、そんな取り組みを進められないでしょうか。
- (イ)「てまえどり」の取り組み効果について
【コープあいち】
全ての組合員(消費者)ではありませんが「てまえどり」は徐々に浸透していると感じています。コロナ禍で学校給食が中止され牛乳が余った時期がありましたが、組合員に利用をお願いしたところ、宅配を含め多くの方にご利用いただきました。組合員の中には「余ったものを有効利用していこう」という気持ちをお持ちの方もおられます。このような気持ちを持っている方の中には、フードバンクやこども食堂の活動に関わっている方もいます。店舗と組合員が一緒になって取り組めるのがコープの強みです。
- (ウ)食品ロス削減の取り組みについて
【コープあいち】
生協では店舗でできるだけロスが出ないように、値引きをして売り切ることを基本にしています。組合員の宅配誤発注で行き場がなくなった商品をフードバンクに提供しています。3分の1ルールは業界全体の問題であり、全体で変えていくことが大事です。
納品期限の緩和を国の方で指導してもらうことはとても力強いので、引き続きお願いしたいです。
- (エ)フードバンク運営に関する課題について
【セカンドハーベスト名古屋】
フードバンクの一番の課題は、需要と供給のバランスをとることです。地方では、食品を供給していただける企業は少なく、また、特定の食材を大量に提供していただくと、需要を超えてしまい、配れない状態となります。都会では、様々な企業があって、様々な食材を適量提供していただける条件がそろっています。集まった食材をうまく融通するため、大きいフードバンクが中心となって、小さいところに必要な量だけを供給する仕組み(フードバンクネットワーク)を構築してはどうでしょうか。食品メーカーは食品ロス品の転売を一番危惧しており、転売があれば、食品メーカーからもう食品は提供されなくなります。フードバンクとしてもそのようなことにならないよう、必要な量しか扱いたくないです。そういう状況も含めて理解してもらい、細かな施策を検討していただきたいです。
【セカンドハーベスト名古屋】
フードバンクは基本的に地産地消、すなわち地元の企業から食品を提供してもらい、地元のこども食堂等へ供給することが基本です。県を跨いで流通させるケースは少ないです。我々のネットワークは東海3県で実施していますが、せいぜいその範囲ぐらいです。地震などの災害でもない限り、通常、広域への配布は難しいです。
【愛知県環境局資源循環推進課】
廃棄物削減の観点からも食品ロスの削減は大きなテーマとして取り組んでいます。特に、食品を廃棄物としないように「てまえどり」などの消費者向けの啓発や環境教育の取り組みを行っています。フードドライブは、主に家庭から出る食品ロスを減らす目的で推進しており、食品ロス関係のイベントや環境関係のイベントでは、フードドライブのブースを設けています。食材の寄付をする目的で商品を購入して持ちこむ方も実際にいて、単に食品ロス削減の取り組みではないと感じています。フードバンク、こども食堂の苦労されている実情も知ることができたので、今日の話は今後の食品ロス削減対策にもいかしたいです。
- (オ)食品ロス削減総合対策事業の要件等について
【セカンドハーベスト名古屋】
フードバンクの輸配送費への支援については、食品メーカーからの提供、すなわち物資の入荷がランダムであるため、ごく一部しか使えていない状況にあります。また、ランダムな入荷に応じて、配送だけでなく、倉庫をすぐに手配することも必要となります。このため、需要と供給のきめ細かなマッチングは難しいです。事務局は3人体制で、私自身もボランティアです。このような人手不足の体制の下、国などの支援は手続きなどもあり、なかなか利用しにくいというのが本音です。
- (カ)その他
【愛知県食育消費流通課】
日頃は食育の立場で食品ロスの啓発に関わっています。
今後とも引き続き、食育の視点で食品ロスの削減に努めていきたいです。また食育に関連してできることを実施したいです。
イ 食品アクセス問題関連
- (ア) 生協における買い物困難者対応について
【愛知県生活協同組合連合会】
買い物困難者への対応として、当連合会傘下のトヨタ生協が農村部へ商品供給バス(移動販売)を定時定期で走らせる取り組みを行っています。買い物困難な方へ商品を届ける取り組みは、県下の他の生協でも、生協の意味をしっかり踏まえた上で、色々な方法で行われていると思われます。
- (イ) 移動販売の採算性について
【コープあいち】
買い物困難者等への対応である移動販売は、採算がとれないのが一番の課題です。コープあいちでは1台の車両で名古屋市内26か所ぐらいを回っていますが、これだけ回っても採算を取ることは難しいです。車に載せる商品が限られていることも採算性に影響しています。さまざまな支援があると思いますが、移動販売の採算性を改善できる支援をお願いしたいです。
- (ウ)行政の支援(食品アクセス問題)に係る情報提供について
【わいわい子ども食堂プロジェクト】
農林水産省や厚生労働省の施策は様々ありますが、すべての施策が全国どのこども食堂も享受できる状態ではないと感じています。ほとんどの施策は、県や市町村、社会福祉協議会が予算を出す決断をしてから、公募がなされ、そこで初めてこども食堂が施策を知ることになるため、こども食堂は県等の決断を待つしかありません。こども食堂には、行政からの情報提供が少なく、どのような施策があり、どのようなことに使えるかといった情報をどのように収集するのかが課題と感じています。
- (エ)農産物の自給に対する不安について
【愛知県消費者団体連絡会】
当連絡会には「日本の食糧・農業・健康を考える愛知の会」という団体も加盟していており、この団体から、日本の食料自給率の低さを心配する声が寄せられています。
近年はコロナ禍、戦争等の国際情勢の変化で、日本の穀物の調達先が不安定になってきているとの報道を目にすることが多く、そのうち日本に食料が入ってこなくなるのではという不安が高まっています。また、飼料などが値上がりして、畜産農家の廃業が加速していますことに対し「牛乳が日本で賄えなくなる可能性があるのでは」と不安の声もあります。消費者としても酪農家を応援しなければならないのですが、国としてもっと酪農業を支援してもらえたら良いのではないかといった意見が出ています。
懇談会の様子

お問合せ先
消費・安全部消費生活課
担当者:消費者対応班
代表:052-201-7271(内線2807)
ダイヤルイン:052-223-4651




