令和6年度東海消費者行政ミーティング~食をめぐる施策について~(愛知県会場)(令和6年11月20日)
東海農政局は、食に関係する各方面の方にご参集いただき「農林漁業体験の推進」をテーマとして意見交換を実施しました。
日時
令和6年11月20日(水曜日)13時30分から15時30分
場所
名古屋能楽堂(名古屋市中区三の丸一丁目1番1号)
出席団体等
学校法人竹川学園 認定こども園 富士文化幼稚園 名誉園長 岡田 春子氏、主任 安井 芳美氏
生活協同組合コープあいち 特別商品推進担当部長 佐野 文昭氏
株式会社げんきの郷 JAあぐりタウンげんきの郷 営業部長 細田 正明氏
カゴメ株式会社 東京本社マーケティング本部ブランドコミュニケーション部野菜をとろうキャンペーン推進グループ専任部長 吉田 知史氏
カゴメ株式会社 名古屋支店営業推進グループグループ長 澤田 勝宏氏
特定非営利活動法人Earth as Mother(アース アズ マザー)副理事長 村野 政章氏
愛知県 農業水産局 農政部 食育消費流通課 主査 宮本 一宏氏
名古屋市 緑政土木局 農政部 都市農業課 課長補佐 中島 孝一氏
蒲郡市 産業振興部 農林水産課 係長 久田 雄一郎氏
(順不同)
主な内容
1.各団体の活動等について
学校法人竹川学園 認定こども園 富士文化幼稚園
- 年長児を対象に、タライを使い、は種から稲刈りまでを体験。稲刈り後は、わらを使い、保護者とともに正月用のしめ縄飾りづくりも体験。
- 稲のタライにはトンボが産卵し、園児は、ヤゴが成長し、脱皮、羽化して飛び立つまでを観察。
- いろんなジャガイモの収穫体験、これらを使ったポテトチップスづくりも。
- 上記のほか、地域と交流しながら、食物連鎖、地産地消、伝統行事等を学ぶ体験を実施。


生活協同組合コープあいち
- 愛知県産米の消費拡大を目的に、田植えや稲刈りの体験を実施。町内会の協力を得て、田んぼの生き物観察会も。
- 農業者との交流を深めるため、参加人数を以前の3分の1の規模に縮小。
- 感想をまとめた子どもたちの絵を協力農家に届けることで、ふれあいが広がる。
- 体験では、カゴメ株式会社のベジチェック体験、稲作の流れを伝える手作り紙芝居などを使い、子どもの関心をひけるよう工夫。
- 田んぼを活かすという点で麦大豆も重視しており、愛知県産小麦でホットケーキ作り、県産大豆で豆腐作りの体験も実施。
- 生協職員に農業現場で体験をさせ、その感動を組合員に伝えている。
- 農業者と消費者は互いを知らないというのが実感であり、SNSなどによる情報発信、体験の充実を進めていきたい。
- 有機農産物も学校給食等を切り口に広がることで消費者の理解の広がりに期待したい。

株式会社げんきの郷 JAあぐりタウンげんきの郷
- 直売所の裏に体験農園を整備。もち米を栽培し、田植え、稲刈り、のし餅づくりまで体験を実施。
- 畑ではトウモロコシの種まきから収穫までの体験も。ほかにみそ作り体験も。
- 近隣幼稚園とコラボして、サツマイモ堀体験も。
- 消費者は虫食いのある農産物を避けるが、有機農業の難しさを、体験を通じ知ってほしい。

カゴメ株式会社
- 当社の食育の歴史は50年以上あるが、近年は野菜を育てることも大切な要素なので植え育てる「植育」も合わせて体験活動を実施。
- 野菜の栽培体験は、野菜を好きになる効果が期待され、野菜に対する意識や知識も変わってくる。トマトの苗を小学校や幼稚園に無償で提供しており、教材として使っていただき、その結果をレポートとして返してもらっている。
- NPOと連携し、学童向けの野菜学習プログラムも提供している。カゴメの社員が野菜先生として現場に出向くことも。
- 長野県富士見町の野菜生活ファームでは、工場見学や収穫体験のサービスを提供中。また、イオンと連携し、モール内でトマトの収穫体験も実施。


特定非営利活動法人Earth as Mother
- 豊田市では、市民農園や米・野菜の有機栽培を14年間実施中で、有機農業に興味のある人が利用しているほか、社会復帰を目的に生活困窮者やひきこもりの方にも利用いただいている。
- 日進市では、アグリスクール(農学校)事業を受託し、オーガニック米作りコース、オーガニック野菜作りコースを設け、農業体験を実施中。米作りは、田植え、稲刈りのほか、泥んこ遊び、生き物観察なども実施。
- 稲刈り後は、はざかけ、足踏み脱穀、もみすり、試食、稲わらリース作りの一連体験。
- 消費・安全対策交付金を活用して、親子での伝統料理教室や鬼まんじゅうづくり、さらには食と農のシンポジウム開催。
- また、中京大学との水田での協働イベント企画や企業社員を受け入れ、さまざまな体験を実施。

愛知県 農業水産局 農政部 食育消費流通課
- 愛知県では、農家など農林漁業の豊富な経験を持つ者を食育推進ボランティアとして育成し、県内の体験イベントに対し、紹介している。
- また、小学校に対し、体験学習実践マニュアルや地域の協力者リストを提供している。
- 県のサイト「食育ネットあいち」により、県内の食育イベントの情報を発信している。

名古屋市 緑政土木局 農政部 都市農業課
- 名古屋市の食育推進計画は、緑政土木局ではなく、健康福祉局が担当。
- 緑政土木局は、この計画や農業施策として体験施策を推進。
- 具体的には、地域とともに、港区で400名の市民等に参加いただいて田んぼアートを実施。同じく、港区の市民水田(市が借り上げて市民を募集)では、田植えから稲刈りまでの体験を実施。
- 市営22か所、民営59か所の市民農園があるほか、市が募集を行い農家で収穫体験を受け入れてもらう、ふれあい農園も10か所ある。市が運営する3か所の農業公園でも収穫体験を実施。

蒲郡市 産業振興部 農林水産課
- 蒲郡市では、食育推進計画で「たべて豊かな心づくり」を基本目標に掲げ、これに即して農林漁業体験を推進。
- 具体的には、平成14年度から、市内全小学校の3年生を対象に、集出荷場の見学と収穫体験を実施。
- 小学生のアンケート結果によれば、地元の農業や国産農水産物に対し興味がわく割合が、参加前の8%から、参加後は91.8%に向上。

2.意見交換
(1)大人への食育
【株式会社げんきの郷 JAあぐりタウンげんきの郷】
直売所店内の食育ソムリエや野菜ソムリエが、栽培方法や食べ方といった消費者の質問を適宜受け付けている。
【カゴメ株式会社】
野菜への関心がないと食べることにつながらないので、PTAの会合に講師を派遣して野菜セミナーを開催。
学校教育における食育は中学で終わってしまい、高校、大学、社会人と知識や理解が希薄になるのが大きな問題なので対策が必要。
この世代は野菜の摂取量が極端に低い。
(2)食育における大人と子供の接点
【学校法人竹川学園 認定こども園 富士文化幼稚園】
父親と一緒にみそをつくり、1年寝かせたみそで母親とみそ汁を作る体験を実施。
みそは家庭でも使ってもらい、みそ汁の具材も含めて、親子で食について会話をするきっかけに。
また、子どもはピーマンを家では食べないのに、幼稚園で収穫したピーマンは喜んで食べる。
どうして幼稚園だと食べるのか、調理方法などが違うのかなど保護者から質問を受けるが、丁寧に回答することで、保護者も農作業体験の効果を理解するようになる。
(3)消費者の理解を得るうえでの工夫
【生活協同組合コープあいち】
組合員に生産者や加工メーカーを訪問いただき、話を聞き、試食をいただくことで感動が生まれ、両者の良い関係づくりにつながっている。
参加者を入れ替えしながら、裾野が広がるよう調整。
また、生協職員が現場で学んだ内容を動画で組合員に発信。
【株式会社げんきの郷 JAあぐりタウンげんきの郷】
体験を通じて、農薬の使用・不使用で外観に違いが出ることを伝えていきたい。
イモ堀り体験での小さなサイズのイモもグラム単価で買い取ってもらうことで、消費者に農家の苦労を知ってもらうよう工夫。
冬にトウモロコシ体験を希望する消費者もおり、旬を知ってもらう広報が必要。
(4)学校教育との連携
【カゴメ株式会社】
学校にトマト苗を教材として提供しており、レポートの返しがある学校や、地域と連携して取り組む積極的な学校も。
苗の提供にとどまり、食育に必要な情報提供ができていないのが課題。
(5)体験施設利用者の効果測定
【カゴメ株式会社】
野菜の体験施設である野菜生活ファーム富士見の利用者の一部を対象にアンケートを実施。
「また来たいか」、「誰かに推奨したいか」といったことを尋ね、高い評価をいただいており、体験が刺さっていると実感。
(6)有機農法・自然農法における食育の意義
【特定非営利活動法人Earth as Mother】
田んぼでは、農薬や化学肥料を使わないことで、トンボが増え、ヒメタイコウチやドジョウのような絶滅危惧種に近い生き物の復活も見られ、生物多様性を学べる。
畑で作るサトイモでは、化学農薬・化学肥料を使った慣行栽培よりも、しっかり土づくりをして微生物と共存する自然農法の方が大きなイモを収穫でき、体験を通じてその違いを学び実感できる。
(7)行政や大学との連携の秘訣
【特定非営利活動法人Earth as Mother】
自治体から行政委員を頼まれたら断らないし、行政と一緒になって成果を出すというチーム意識を持つ。
大学についても、学生が何を求めているのかを考え、一緒に成果を出していくことを心がける。
人の名前も、一度会ったら覚えるようにしている。
(8)農家の方の確保
【名古屋市 緑政土木局 農政部 都市農業課】
農家を紹介してほしいと学校から照会を受けるが、近くに農家がいないことや、農業規模が小さく、自家用で営農している方や土地持ちで営農していない方が多いため、紹介が困難。
(9)農林水産省への要望
【特定非営利活動法人Earth as Mother】
ア.グリホサートやゲノム編集の食品表示を通じた消費者への情報提供
イ.有機農産物の学校給食への活用促進
ウ.食料自給率向上施策の強化
エ.持続可能な食育の推進に向けた、関係省庁横断による食育の啓発・実践
消費者行政ミーティングの様子




お問合せ先
消費・安全部消費生活課
担当者:消費者対応班
代表:052-201-7271(内線2807)
ダイヤルイン:052-223-4651




