第15回 あいち在来種保存会 高木幹夫代表世話人との対談(令和5年2月15日)
東海農政局は、東海地域で活躍されている学識経験者や地域の活動者と対談を行い、その幅広い視点を皆さんにお伝えしています。
第15回は、あいち在来種保存会 高木幹夫代表世話人にお話を伺いました。(対談日:令和5年2月15日)
![]() あいち在来種保存会 高木幹夫 代表世話人 |
~こんなお話をお聞きしました~
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“あいち在来種保存会とは”
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聞き手: |
(東海農政局)
東海農政局は、食に関わる有識者の方などにお話を伺い、意見交換の中でお聞きした幅広い知識・情報を「TOKAI ミニコミ」としてまとめて発信しています。高木さん、このたびは「第9回 ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の特別賞(むらの宝食文化賞)の受賞おめでとうございます。
(高木氏)
「ディスカバー農山漁村の宝」は、はっきり言って当初は知らなかったし、賞のようなものには、あまり執着がなかったんです。私は趣味で取り組みを行っていますので恐縮しています。
(東海農政局)
「あいち在来種保存会」ではどのような活動をされていますか。
(高木氏)
農作物のF1(注1)化が進み、在来種である伝統野菜をつくる農家が減り、店頭に並ぶことも少なくなっています。「あいちの伝統野菜」と呼ばれている野菜は、本をただせば、在来種の野菜。その在来種の種子を絶やしたくないという思いで、在来種の種子採りを続けてきました。「在来種の野菜を作りたいから、種子を分けてほしい」という方には、種子を分けています。
このメンバーは、伝統野菜に興味を持ってくれている生産者、主婦、料理人など業種や年齢が幅広いことが特徴です。また、会費は取ってないんです。
あいちの伝統野菜は現在、「宮重(みやしげ)だいこん」を含めて37品目あります。
あいちの伝統野菜の定義 1.今から50年前には栽培されていたもの 2.地名、人名がついているものなど愛知県に由来しているもの 3.今でも種や苗があるもの 4.種や生産物が手に入るもの |
(東海農政局)
現在、種子から自給自足できるのは、伝統野菜ではないでしょうか。
(高木氏)
お店には国産野菜がいっぱい並んでいますけど、僕が旗を挙げているのは種子から国産ということです。日本の98%くらいの種子は全部輸入ですよね。
1~2年程前からコロナの影響などで種苗メーカーのカタログに載せられないかもしれないという品種が出ているんです。種子が入ってくるかわからないからです。在来種は、自家採種が可能ですから、僕は種子を採取しているんです。
F1品種は発芽率や生育も良く、収穫時期もそろっていますが、在来種は、F1品種と比べて発芽が悪いし、ばらばらに育ちます。しかしながら、栽培中に台風などの自然災害があった時、収穫時期にばらつきがある在来種は災害の被害に遭うリスクが少なくなります。これも在来種のメリットですね。
(注1)F1種は、優良な形質を持った異なる親を交配して作られた品種のこと。「一代雑種」、「ハイブリッド品種」「交配種」「F1品種」等と呼称している。
“農村の活性化はどうなる”
(東海農政局)
農村の活性化についてお考えをお聞かせください。
(高木氏)
農村の活性化はめちゃくちゃ難しいと思います。耕作放棄地などもその一例かもしれませんが、僕が一番ネックだと感じているのは、今、「村」という組織が壊れていることです。
農村を上手にリードして活性化された農家もありますけど、その改革の裏で大切なものが消えてしまっているんじゃないかと思っています。
農家の人は比較的口下手で「俺が若い頃には」などと言ったりしてうっとうしいかもしれませんが、それはそれで、すごく必要だと思うんです。
(東海農政局)
若い世代の方との交流で気が付かれたことはありますか。
(高木氏)
最近、若い世代との付き合いが多くなったのは、やっぱり夢もあるし、達成する力もあるからです。
ただ、忘れちゃいけないのは諸先輩が語る「俺が若い頃は」「俺らの時代は」ということで、絶対に残していかなきゃいけない事も多くあると思っています。なるべく若い人の意見を聞きながら、後継者も作っていかなければとやっているんだけど、やっぱり農村を活性化するためには、その裏に守っていかなきゃならないことがあるなと思っています。
農業もいろいろな若い人が現れて価値観も変わってきている。こういう時だからこそ、誰のための農業なのかを考え、値段の高い安いは、誰のために価格が高いのか安いのかを考えた時、生産者のためではなく、中間の2次、3次業者のためじゃないかとなります。
これを正すと、農村の活性化につながっていくのではないかと思います。また、農家が産直で売る販売価格を「再生産価格」で販売することで農村の活性化につながるのではないでしょうか。
“再生産価格とは”
(東海農政局)
最近、あらゆる物の価格が高騰しており、消費者の方は価格に敏感になってきています。再生産価格についてお聞かせください。
(高木氏)
再生産価格とは、例えばこのキュウリを1本いくらで売ったら利益が生まれ、来年また作って売れるかという価格です。農産物を作るのにも種子や資材などのコストはかかります。かかった費用をちゃんと計算して価格に転嫁するため、市場価格ではなく、再生産価格を最低価格として販売しないと安売り合戦になり、売るだけで損をしてしまいます。
生産者が「こんなもん作ったら損だ」、「なんでもいい」という意識になり、低品質なものまで売るようになります。「再生産価格」以下で販売するのをやめ、商品を売るという意識をもてば、価格に左右されるのではなく、品質を求める消費者を集める店づくりができます。あそこに行ったら間違いないよという安心感をいかにお客様に植え付けられるかではないでしょうか。良い品質の農産物が消費者に選択されるシステムにする必要があると思います。
また、逆に再生産価格をはるかに超えて販売することも止めてほしいです。消費者が良質な野菜の価格を意識できるように食育をしていくことが大事だと思います。
“地元野菜の時期を知る”
(東海農政局)
将来世代に対する「学校給食」の取り組みで重要なことはどのようなことだと思われますか。
(高木氏)
愛知県大府市では、学校給食に伝統野菜を定期的に活用する取り組みを開始しています。今後は一層、伝統野菜の学校給食での活用を進めていくようです。
学校給食以外に病院で提供されている食事(給食)もあります。一時期病院の管理栄養士さんから、「地元の野菜を月に1回調理して提供したい。」と相談がありました。素晴らしいことだったので、もちろん協力しましたが、知多半島では作っていないような季節外れの野菜を注文されて困ったことがあります。
例えば、愛知県のニンジンは12月~2月が時期です。夏の暑い時期にもニンジンはありますが、この辺りでは、無理して作ったニンジンです。夏であれば、他の産地の人参を使ったほうが良いですね。
栄養学的なカロリー計算も大切ですが、地元で作っている野菜の一番良い時期を知ってもらい、その野菜を使用した献立をぜひ考えてもらいたいと感じました。
(東海農政局)
伝統野菜を使うことは、地産地消につながりますね。
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餅菜(もちな) [正月菜(しょうがつな)] (画像提供:愛知県) |
(高木氏)
私は、地元で販売する以外にも仲間の作っている「あいちの伝統野菜」を東京へ納品しています。年末に餅菜(正月菜)を送ったところ、全部一瞬で売れました。愛知県出身の人が餅菜を懐かしんで購入し、お正月に食べるよう知人に配ったようです。これも伝統野菜のいいところです。
(東海農政局)
「伝統野菜」を食べてふるさと(愛知)を思うのでしょうね。
(高木氏)
あいちの伝統野菜を食べる「旬感知多半島」というイベントがあります。旬の知多半島の海の幸、山の幸を使った料理を楽しめるイベントです。
(東海農政局)
会費が8,000円と高価なのに毎回満席になるそうですね。
(高木氏)
そうですね。宣伝はほどほどにし、口コミだけで食を楽しみたい方々で早々に定員オーバーになります。
毎回、料理人仲間が集まり腕を振るった旬の食材を使った料理が並びます。料理の内容は、料理人任せなので当日のお楽しみです。
(東海農政局)
あいちの伝統野菜の中で一番好きな野菜はありますか。
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縮緬かぼちゃ(画像提供:愛知県) |
(高木氏)
私は愛知縮緬(あいちちりめん)かぼちゃです。市販されているかぼちゃと違って料理のコツを知っている人も少ないです。西洋かぼちゃは栗のようにほくほくで甘みがありますが、縮緬かぼちゃは和のかぼちゃであって、水分が多いわりに甘さが控えめです。だから料理をすると、自分を主張せず控え目で他の食材を生かすんです。おいしいまずいではなくて、大好きで愛着があります。
この縮緬かぼちゃは、ここ大府市で生まれた伝統野菜なんです。名古屋市緑区の伝統工芸品のちりめんと同じような見た目です。海外の番組が来た時に「アリゲーターパンプキン」、要するに「ワニの皮」みたいだと表現されました。東京では、食べる以外にもある美術館でオブジェとして飾っていると聞きました。
(東海農政局)
最後に伝統野菜に対する思いをお聞かせください。
(高木氏)
伝統野菜を残していきたいという思いから種子を取り始め、僕は35品種全部集めました。実際に、自分で育てることもできました。これからも伝統野菜の良さを伝えるイベント活動を続け、また、伝統野菜の種を残していきたいと思っています。
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対談の様子(対談日:令和5年2月15日) |
“あいちの伝統野菜が食べられるお店”
(東海農政局)
伝統野菜が食べられるお店を教えてください。
(高木氏)
あいちの伝統野菜が食べられるお店は増えています。取扱店舗には、「あいちの伝統野菜」(写真下)のロゴが掲示されているのが目印です。
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「あいちの伝統野菜」のロゴ |
あいちの伝統野菜を食べてきました!
あいちの伝統野菜が食べられるお店「Caféオムレット大府allobu」をご紹介します。
目印のこの地にゆかりのある「信長・秀吉・家康」の三英傑を「愛知の歴史・伝統に置き換えて記号化した「伝統野菜イメージアップマーク」が、店舗に掲示されていました。
取材した日は、木之山五寸ニンジンが「ニンジンラぺ」、養父早生玉ねぎはローストビーフのソースに使われていました。
取材班は、「鯖みそカレー」と「ローストビーフプレート」を頂きました。選べるデリで「ニンジンラぺ」を選びました。どちらのメニューを選んでもプレートには新鮮な野菜がたっぷ盛り付けられています。
美味しい野菜をしっかり食べられます!!
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鯖みそカレー、十六穀米、選べるデリ2品、サラダ、ドリンク付き 税込1,450円 |
ローストビーフ、十六穀米、選べるデリ2品、選べるサラダ3種、本日のスープ、 ドリンク付き 税込1,790円 |
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木之山五寸(このやまごすん)ニンジン (画像提供:愛知県) |
養父早生(やぶわせ)たまねぎ (画像提供:愛知県) |
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