令和5年度「株式会社角谷文治郎商店」における取り組み
伝統製法で造る「みりんの新しい使い方」を発信し続ける株式会社角谷文治郎商店にお話しを伺いました。(取材日:令和5年6月21日)
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株式会社角谷文治郎商店 角谷 文子 氏 |
農林水産省 東海農政局 消費・安全部 部長 島村 知亨 |
~こんな話を聞きました~
伝統製法で造る「みりん」
(東海農政局)
東海農政局は、食に関わる有識者の方などにお話を伺い、意見交換の中でお聞きした幅広い知識・情報を「TOKAI ミニコミ」としてまとめて発信しています。
本日は、よろしくお願いいたします。まず初めに、会社の概要などお聞かせください。
(角谷文治郎商店)
明治43年(1910年)に創業し、私の父「角谷利夫」が三代目となります。
愛知県碧南市は、三河湾に面する醸造が盛んなまちで、みりん、白しょうゆの醸造蔵が多くあります。また、みりん業者数は愛知県が全国一位で、みりん造りの本場です。
弊社は、碧南市の本社、みりん蔵、精米・焼酎蔵のほか2021年7月に三重県多気郡多気町のVISON内に「美醂 VIRIN de ISE」を出店しました。
創業からの「米一升、みりん一升」(米一升でみりんを一升造る)にこだわった伝統製法でみりんを造っています。
米一升、みりん一升
(東海農政局)
伝統製法とは、どういった製法でしょうか。
(角谷文治郎商店)
弊社がこだわる伝統製法のみりんは、原料がもち米、米麹、本格焼酎のみで造ります。焼酎も自社製造です。蒸したもち米と米麹を焼酎といっしょに仕込み、搾って、長期間の醸造熟成を経てみりんになります。醸造・熟成期間は1年以上です。アルコール度数は、約14%です。
ゆっくり熟成することによって麹菌が、もち米の甘さと旨味を引き出します。
(東海農政局)
麴菌の働きによってゆっくり時間をかけて甘くなるんですね。
(角谷文治郎商店)
みりんは、麹菌の働きによってできる発酵調味料です。もち米のおいしさを麹菌の力で丸ごと引き出したのが弊社のみりんです。麹菌がしっかり働くためには、温度・湿度を厳密に管理することが大事なんです。
弊社のみりんは、砂糖にはない上品でまろやかな甘さが特長です。
「みりん」のできるまで(製造工程)
(東海農政局)
みりん以外にも何か造っていますか。
(角谷文治郎商店)
みりん以外に日本酒を造っている企業もありますが、弊社は三州三河みりんと有機三州味醂の2種類のみを製造しています。
みりんを造るための自家製焼酎は造っていますが、お酒として飲むには個性が強いです。
VISONの店舗では、地元の三重県多気町産のお米を使ったみりん「美醂(びりん)」を製造・販売しています。
美醂 (300ml)
704円(税込み)
また、VISONの店舗は、みりん蔵を併設しており、新しい試みとして、原料の仕込みから熟成を経てみりんが出来上がるまでの製造工程がいつでも見学できるようガラス張りの店舗にしています。
(東海農政局)
ガラス張りですから製造の様子がよくわかりますね。製造所内に入ることもできますか。
(角谷文治郎商店)
はい、普段は入れませんが、定期的に「みりん蔵ツアー」を行なっています。ツアーは、製造所に入り、製造現場を間近で見学し、最後はみりんの試飲を行なっています。車を運転される方にはアルコール分を飛ばした煮切りみりんをご用意しています。費用は1人1,000円(税込み:2023年8月時点)です。
(東海農政局)
製造している様子を間近で見ることができるんですね。
蒸したもち米を冷ましている様子
美醂 VIRIN de ISE 店舗
環境にやさしい原材料の確保に向けて
(角谷文治郎商店)
本社蔵では、代表的な三河みりんに加えて有機みりんの製造販売を行っているのが特徴です。有機みりんは、国内流通以外に香港、フランスなどに輸出もしています。また、他にはない、みりん梅酒も造っています。弊社の梅酒は、砂糖を使っていないので、みりんのまろやかな甘さが特徴です。
三州三河みりん(700ml)
1,122円(税込み)
有機三州味醂(500ml)
1,144円(税込み)
(東海農政局)
有機みりんの原料である有機米は契約栽培で確保されているのですか。
(角谷文治郎商店)
はい、有機みりんの有機原料米は20年来お付き合いのある生産者の方に栽培をお願いしています。
また、弊社の安全への取り組みとして、JONA-IFOAM認証(注)を取得し、有機みりんを製造しています。これは有機JAS認証よりも厳しい基準のクリアが求められます。
注:JONA-IFOAM認証は、有機農業の原理(「生態系」「健康」「公正」「配慮」)を念頭に、有機JAS認証で明示されていない以下の事項を通じて、持続可能性の高い循環型農業や社会を目指しているのが特徴。
労働者の処遇の公正性(社会正義)
施肥の際の窒素量の制限
地域資源の活用
遺伝子組み換え由来資材の禁止(経過措置なし)
有機種子への転換等
しかしながら、今、弊社が心配しているのは、生産者の中には高齢を理由にリタイアする方が出てきており、後継者がいない方もいます。この状況が続くと、今後、有機みりんの原料米の確保が困難な状況になる恐れがあります。
(東海農政局)
原料米確保を阻む課題はどのようなことでしょうか。
(角谷文治郎商店)
新たに、生産者が有機JAS認定を取得するためには、土壌づくりに3年という時間がかかる上に、圃場が認定を受けるまでの間は有機米として取り引きできないため、収益性が悪い条件で生産を続けなければいけません。
有機米の栽培は非常に手間がかかる上に、生産者の方は有機JAS認定取得のハードルも高いです。
(東海農政局)
農林水産省では、みどりの食料システム戦略で、持続可能な生産をする有機農業に取り組んでいく生産者の方を支援しています。
(角谷文治郎商店)
化学合成物質(農薬、化学肥料)を減らし、 環境に配慮した農業を進めていくことは大切だと考えています。
弊社は、有機みりんの原料である有機原料米の確保のため、今後も有機農業の推進に積極的に参加していきたいと考えています。
「みりん」がスイーツ界にデビュー!
(東海農政局)
みりんの魅力を雑誌にも取り上げられているとお聞きしました。
(角谷文治郎商店)
はい、最近ではグルメ雑誌にも「三州三河みりん」や「有機三州味醂」が紹介されています。
また、弊社は平成10年から国内最大の食品展示会「FOODEX」に出展、平成24年からは、「香港 FOOD EXPO」に出展し、国内にとどまらず海外に向けて積極的にPRを行なっています。
2015年(平成27年)「香港 FOOD EXPO」に参加した様子
(東海農政局)
海外でもみりんは調味料として使われているのでしょうか。
(角谷文治郎商店)
はい、海外でも和食に欠かせない調味料としてみりんは重宝されていますが、他のアプローチも行っています。
海外には、「お米のリキュール」と紹介しています。パティシエの方からは、チョコレートやケーキなどのスイーツを作る材料として注目されています。
また、日本国内でも和食の調味料の枠にとどまっていません。VISONにも他の店舗とコラボした商品があります。
フランス「サロン・デュ・ショコラ」に参加した様子
(東海農政局)
どんな商品がありますか。ご紹介ください。
(角谷文治郎商店)
一例ですが、「本草研究所 RINNE(リンネ)」さんの美醂グラノーラや「LE CHOCOLAT DE H(ル ショコラ ドゥ アッシュ )」さんの「みりん×キャラメル」チョコレートに「美醂」を使っています。まだほかにも、パンやソフトクリームなどにもみりんが使われています。
(東海農政局)
「みりん×キャラメル」チョコレートを食べましたが、優しい甘さでしたね。みりんの新しい用途が広がっていますね。
(角谷文治郎商店)
はい、これまでにない用途が広がっています。一方で、今は家庭で和食を作る機会が減ってきています。最近は、みりんの使い方がわからないとか、みりんを常備していない家庭もあると聞いています。
「美醂VIRIN de ISE」店舗で配布されている「美醂便り」
みりんは身近に使うことができます。和食だけではなく、例えば、ドライレーズンをみりんで漬けて戻すとまろやかな味になります。
みりんを使ったドリンクもおすすめです。みりんを身近に使っていただけるように、料理やデザートなどのレシピを店舗やHPで紹介していますので、ぜひ、参考にしてください。
みりんを使ったドリンク
新しい情報発信にチャレンジ
(東海農政局)
これから、計画されている取り組みはありますか。
(角谷文治郎商店)
国産米100%のみりん造りを通じて、日本の緑の確保、環境保全に貢献していきます。また、醸造と伝承の味を次の世代に伝えていきたいです。
VISONの店舗で、ワークショップを企画しています。仕込み体験、麹づくり体験、搾り体験の企画を行いたいと考えています。
スタッフも募集中ですので、ご興味のある方はぜひご応募ください!
(東海農政局)
地元で造られている伝統的な調味料を次の世代に伝えることは重要ですね。
本日は、貴重なお話を伺いありがとうございました。
対談日:令和5年6月21日
対談場所:美醂 VIRIN de ISE(三重県多気郡多気町 VISON内)
アンケートへのご協力をお願いします
アンケートページはこちらをクリックして下さい。
(アンケートは2023年10月末に締め切ります。)
株式会社角谷文治郎商店のサイトはこちらから
株式会社角谷文治郎商店HP
https://mikawamirin.jp/(外部リンク)
PDF版
令和5年度「株式会社角谷文治郎商店」における取り組み(PDF : 1,718KB)
お問合せ先
消費・安全部消費生活課
担当者:消費者対応班
代表:052-201-7271(内線2807)
ダイヤルイン:052-223-4651