
2.悲願の事業 印旛沼干拓土地改良事業 【事業に至る経緯】
当初計画(昭和21年11月9日計画決定)
昭和21年、農林省は直轄干拓事業である「国営印旛沼手賀沼干拓事業」に着手しました。この事業で、印旛沼と手賀沼の湛水を防ぐため、印旛承水路と手賀沼承水路を開削し、水を集め、平戸地点に合流させた後、東京湾に注ぐ検見川までの印旛疎水路(16.5km)を掘削しました。これにより、計画排水量の60%を自然排水し、自然排水できない40%は木下機場(手賀沼分)と安食機場(印旛沼分:現在の印旛機場地点)から利根川へ機械排水を行います。
そしてこれを契機に印旛沼(2,282ha)と手賀沼(783ha)に干拓農地を造成し、併せて印旛沼周辺(5,256ha)と手賀沼周辺(1,834ha)で土地改良を行うこととしました。また、印旛疎水路の掘削残土を用いて東京湾の検見川地先に海面干拓し、畑(435ha)を造成することとしました。
第1期計画(昭和25年)
当初計画を完成するためには長い期間を要するため、洪水対策について、洪水発生頻度を抑制するため印旛疎水路の規模を見直した第1期計画を策定しました。また、事業内容は印旛沼干拓 1,715haとし、印旛沼土地改良 2,887ha、手賀沼土地改良 1,728ha、海岸埋立 150haとすることとしました。
第1次改訂計画(昭和31年2月変更計画確定)
印旛疎水路の用地買収が難航したことから、印旛・手賀両沼の一括排水を改めました。手賀沼関係を分離し、印旛疎水路と排水機の2つの手段による排水系統に見直しました。また、昭和28年度に土地改良法が改正されたことを踏まえ、干拓事業に附帯して行う土地改良事業としてかんがい排水施設の整備を行うこととしました。農林水産省は周辺概耕地の土地改良事業を加えた干拓土地改良事業として計画を策定し、昭和31年2月には地元同意を経て国営印旛沼干拓土地改良事業が計画確定しました。
第2次改訂計画(昭和38年3月変更計画確定)
第1次改訂計画で手賀沼と分離した排水計画は伊勢湾台風などの異常災害が発生したことから、より大きな排水量に見直しされました。また、印旛疎水路の沿線は地域特有の腐食土・軟弱泥「ケド」が点在し、土質が悪いため、大規模掘削には多大な経費がかかります。その上沼の水位と東京湾との潮位差が少なく、自然流下では効果的な排水が望めないことがわかりました。これらのことから中間地点の大和田に排水機場を新設し、印旛疎水路の末流で 146m3/sを放流できる計画に変更しました。また、貯水量の増加を図るため、北部に 630haの水面を残し、西部の 680haと併せた調整池規模を 1,310haとし、中央部を長さ7kmの中央干拓地とすることとしました。中央部は締め切られることとなったため、北部調整池と西部調整池を連結する印旛捷水路を追加しました。
また、計画の変更に際し、京葉工業地帯への工業用水を供給するため、印旛沼を経由して利根川から5m3/sを取水することとなりました。
他方で、建設省で改造された安食水門は、利根川からの逆流を防ぐためのものであるため常時は開かれており、利根川に放流されていますが、沼の利水を活用するために長門川入口に酒直水門を設置し、かんがい期(5月~8月)はY.P 2.5m~1.5m、非かんがい期(9月~4月)はY.P 2.3m~1.5mに水位を管理し貯留量 1,310万m3を確保することとしました。洪水調節はY.P 4.5mをY.P 4.3mに変更し、印旛排水機場から利根川へ、大和田機場から東京湾に排除することになりました。
また、事業内容は干拓田 936ha、既耕地土地改良 6,559haとし、調整池周辺排水機場 13か所、農業用水機場 15か所、幹線水路1条、集水路14条の各施設を設置することとしました。
以上のように第2次改訂の変更計画では、事業内容の見直しや工業用水の参加により計画変更の必要が生じたもので、昭和38年3月15日に変更計画が確定しました。
水資源開発公団への事業継承
我が国の経済情勢の変化により水需要の調整が必要となったことを背景として、昭和36年11月に水資源開発促進法が制定されました。昭和21年に農林省直轄事業により始まった印旛沼干拓事業は「印旛沼開発事業」として名称を変え、干拓事業は水公団に委託され、附帯する土地改良事業は昭和38年4月に公団に継承されることとなりました。
「ケド」によって工事は困難を伴いましたが、現代の技術を駆使してこれを克服しました。総工事費182億円を要したこの事業は昭和44年に完成し、約1,310haの面積を持つ調整池と約934haの干拓地が造成され、長年の地域住民の悲願は達成されました。
事業の概要
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干拓
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934ha
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土地改良
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7,400ha
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疎水路
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19.6km
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印旛排水機場
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92m3/s
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大和田排水機場
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120m3/s
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調整池
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13.1km2
(利水容量1,310万m3)
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用水開発量 | 農業用水19.12m3/s 工業用水6.80m3/s |
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