令和6年度「株式会社野果増しや」における取り組み
三重県伊賀市で青果卸を営みながら、野菜ソムリエをされている中澤真規さんにお話を伺いました。
中澤さんは三重県で唯一の野菜ソムリエ上級プロの資格を持ち、日々、講演活動などを精力的に行っています。
(令和6年9月12日。聞き手:東海農政局 消費・安全部 消費・安全調整官 鈴木 秀樹)
~こんな話を聞きました~
「野果増(やかま)しや」という店名にこめた思い
(東海農政局)
まず、「野果増しや」さんの活動を教えてください。
(株式会社 野果増しや)
元々、卸専門の八百屋で社員食堂や飲食店などに野菜や果物を配達することを主体として営業していました。
その後、私が野菜ソムリエの資格を取ってからは、野菜や果物を食べていただく機会を増やしたいとの思いで、詰め合わせギフトの販売を始めました。
また、野菜ソムリエとして、講座や講演活動を行っています。
(東海農政局)
お店の名前が変わっていますね。どのような経緯で「野果増しや」という店名にしたのですか。店名に込めた思いなどあれば。
(株式会社 野果増しや)
この八百屋は「中沢青果」という屋号で主人の父が始めました。
祖父の時代は魚屋と仕出しを営んでおり、その時代には車もなく、ひと山越えた地域などに、リヤカーで行商に行っていたそうです。
その時に行商先の地域の方々から、中澤さんが来たら「やかましや(賑やかな人)が来た」ってよく言っていたというお話を聞いて、ふと主人がひらめいたのです。
野菜や果物を楽しんで食べていただいて、健康になる人を増やしたいという私たちの思いです。
中澤真規さん
野果増しやの外観
(左:小売部門・右:卸部門)
野菜嫌いだった子ども時代から野菜ソムリエになるまで
(東海農政局)
子どものころは野菜嫌いだったということですが。
(株式会社 野果増しや)
子どものころは好き嫌いが激しかったのですが、大人になるに連れて野菜は栄養があるから食べなければということで、食べ方を工夫をして食べられるようになりました。
小学生のころは、給食をほぼ残している状況だったのですが、切り干し大根は食べることができたんですよね。
それって農家だった祖母がよく作ってくれて、一緒に畑に行ったりした思い出もあって、「祖母が作ってくれたものだから食べられた。」というきっかけでしたが、それが本当においしくて大好きでした。
嫌いと言っていた野菜でも祖母が野菜を作って、調理したものをおいしく食べていたことを思い出すと、知って食べることは、今の仕事に何かつながっている気がしますね。
(東海農政局)
ご結婚されて、家業である青果店で働き始めたとのことですが、野菜に対する気持ちがどのように変わっていったのでしょうか。
(株式会社 野果増しや)
結婚した当初は、私も主人も会社員でした。家業が八百屋というだけで、特別に野菜や果物のことを意識はしていませんでした。
その後、八百屋を手伝うようになってからは、野菜や果物のことを詳しく知りたいと思うようになり、野菜ソムリエの勉強を始めました。
勉強していく中で野菜や果物には、多くの魅力があることを学び、これを皆さんに伝えたいと思うようになりました。
(東海農政局)
野菜ソムリエ上級プロになろうと思われた経緯を教えてください。
(株式会社 野果増しや)
野菜のギフトを作る中で、知り合いの農家の方から有機野菜を入れてみないかとご提案をいただきました。
それがきっかけで、有機野菜を勉強しました。
有機農業をされている農家さんはマニアックな野菜を作っている方が多くて、こういった野菜や果物も知っていただきたいと思い始め、更に上の資格になる上級プロを目指し、発信力を上げていきたいと考えたところです。
卸部門の作業をする夫の克浩さん
野菜ソムリエとしての活動
(東海農政局)
野菜ソムリエとその活動について教えてください。
(株式会社 野果増しや)
一つは、野菜ソムリエ養成講座です。三重県の受講者の場合は、通信か名古屋や大阪に行って資格を取ることが多かったのですが、私が三重県の地域担当となってからは、三重県でも資格が取れるようになりました。
もう一つは、野菜の魅力を伝える講座や講演ですね。これはいろいろな団体からの要請があり、子どもさんからご高齢の方まで幅広い層に対して行っています。
最近では、三重だけなく愛知からも声をかけていただくことも増え、活動の幅が広がってきています。
(東海農政局)
野菜ソムリエを目指す方はどの年齢層の方が多いんですか。
(株式会社 野菜増しや)
意外と50代、60代の方が多いんです。セカンドキャリアのためという方もいたりして。若い人はこれからカフェを始めたいという方もいましたね。
(東海農政局)
野菜ソムリエ上級プロは数少ないと聞いています。資格取得でどのような苦労がありましたか。
(株式会社 野果増しや)
野菜ソムリエ上級プロになるためには、初級(野菜ソムリエ)、中級(野菜ソムリエプロ)と段階を踏む必要があります。
初級はマークシートでの試験ですが、中級からは筆記試験になり、いろいろな法律も勉強しましたし、そういった知識をどう伝えるかというところを見るプレゼンテーションの試験もあります。
上級となると、これまでの知識をどう生かしていくかというところを事業計画にします。
この事業計画が実現可能なものなのかというところが評価され、合否となります。
この事業計画作成には本当に苦労して、自分が何をしたいか、何を伝えたいのかなど、多くの時間を割いて自分と向き合った時期でもありました。
(東海農政局)
今日は野菜ソムリエのスタイルでお話を伺っていますが、エプロンとスカーフが正装ということでしょうか。やはり、このスタイルになると気合いが入りますか。
(株式会社 野果増しや)
野菜ソムリエは、エプロンとクラスに分かれた赤(初級)、緑(中級)、紫(上級)と色の異なるスカーフを身に着けます。
特に、三重県では上級プロは私一人だけなので、紫スカーフを身に着けると、やはり使命感みたいなのが出てきて、スイッチ入っちゃいますよね。(笑)
(東海農政局)
野菜ソムリエの活動をしていて改めて感じたことなどがあればお聞かせください。
(株式会社 野果増しや)
野菜ソムリエって何する人ですかって聞かれることもありますが、何か世の中を良くしていくなんて難しいことではなく、皆さんに野菜や果物の魅力を伝える人と思ってもらいたいです。
そこから野菜や果物に興味を持って、食べることを楽しんでもらえたらいいなと思います。
あと、これまでの活動もそうですけど、決して、私一人の力でやってきたことではなく、野菜ソムリエの活動をする中で、いろいろな人に出会い、サポートをいただいたおかげで、今があるなって思います。
(東海農政局)
野菜ソムリエを目指す方にアドバイスがあればお願いします。
(株式会社 野果増しや)
資格を取って人生が180度変わりましたという人もいます。私もその一人でした。
各都道府県に野菜ソムリエのコミュニティがあるのですが、そこで仲間ができて、いろいろなつながりが生まれてきます。
今まで一人では経験できないようなこともたくさん経験してきました。
ただ資格を取るという方もいらっしゃいますが、こういったコミュニティを使うことで仕事の幅が広がることもありますので、楽しんで野菜について学んでもらいたいと思います。
野菜ソムリエ講師としての活動
(青パパイヤ講座にて)
野菜ソムリエアワード金賞の表彰状
野菜の小売で「知って食べる」へ
(東海農政局)
バナナはいろいろな種類があるのですね。どうしていろいろなバナナを扱うようになったのですか。
(株式会社 野果増しや)
伊賀市内に老舗のバナナ加工会社があるのですが、私も野菜ソムリエをしているのでバナナのことも伝えたいという気持ちで、そこの会社に交渉して取引をしてもらえるようになりました。
その会社の人たちはバナナの知識も豊富でいろいろ教えていただきました。最近の講義では、4種のバナナの食べ比べって面白いんじゃないかなってことでやっていますが、大変人気です。
(東海農政局)
先ほど野菜のギフトというお話がありました。果物のギフトはよくあると思いますが、野菜は珍しいですよね。お客さんの反応はどうですか。
(株式会社 野果増しや)
元々ギフトで果物の詰め合わせはやっていたのですが、野菜ソムリエ中級の資格を取った時に、近所のゴルフ場からでコンペ商品として野菜のギフトの依頼がありました。
珍しい野菜ってなかなか自分で買うことって少ないと思いますが、頂いたものって食べますよね。
そこで初めてその野菜の良さを知って買っていただくこともあり、野菜を知っていただく機会になっているのかなと思います。
(東海農政局)
ギフトにはたくさんの手書きの説明が添えられていますが。
(株式会社 野果増しや)
やはり、珍しい野菜や果物を入れていますので、それがどういういうものなのかしっかり伝え、知ってもらっておいしく食べてもらいたいということで、その野菜や果物のおいしい時期、調理方法なども入れています。
(東海農政局)
今後チャレンジしたいことなどあればお願いします。
(株式会社 野果増しや)
野菜に興味を持ってもらいたいっていうのはもちろんあるのですが、野菜を食べなくてもいいと思っている人たちにアプローチして野菜を食べてもらいたい。
そうすることで生産者の方もプラスになるだろうし、食べる方も健康になるということになるので、そういった今まで野菜に興味を持っていなかった人たちにいかに興味をもってもらうかっていうのが私のテーマです。
なので、最近の企業での健康経営というところでは、企業向けに話しをしたり、行動を起こすといったところをやっていきたいですね。
あとは、一人暮らしをしている方や主婦など幅広い年齢層の方々にもいろいろな野菜の食べ方を伝えたり、料理教室などの機会を作ることができたらと思います。
そのためには、YouTubeでの発信などにも取り組んでみたいですね。
そういった取り組みをしていく中で、野菜を食べなくてもいいと思っていた人たちが、野菜は食べた方がいいという行動に移ったらいいですよね。
小売店頭での販売状況
まきちゃんセレクトベジフルギフト
(5,000円相当)
取材を終えて
取材中、終始精力的にお話をしていただいた中澤さん。野菜を皆さんに食べてもらいたいという気持ちが私たちにもひしひしと伝わりました。
今後は今まで以上に活動の幅を広げていきたいとのことでした。中澤さんの活動が、野菜の消費拡大につながっていくといいなと思いました。(東海農政局消費・安全部)
中澤真規さん(右)と
鈴木消費・安全調整官(左)
取材場所:株式会社野果増しや
(三重県伊賀市三田964-16)
野果増(やかま)しやのサイトはこちらから
株式会社野果増しやWebサイト
野果増しや(やかましや)|日々の食事にプラス1の知識とプラスαの楽しさを・・・ (teku-teku.jp)(外部サイト)
PDF版
令和6年度「株式会社野果増しや」における取組み(PDF : 1,182KB)
お問合せ先
消費・安全部消費生活課
担当者:消費者対応班
代表:052-201-7271(内線2807)
ダイヤルイン:052-223-4651