みどりすとVol.1
越前の「王次」様、その先へ。

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私がみどり担当になってから、会ってみたいと思っていた有機農業者の1人が、今回の「みどりすと」株式会社南部農産の代表取締役である山口隆行(50)さんだ。
東京で開催されたオーガニックの見本市「BIOFACH(ビオファ)」で、越前市役所の方から、「親から会社を継いで、慣行栽培をしていた田んぼの一部で有機農業に挑戦し始めた人がいる」と聞いた。有機農業にあこがれて就農し、全面的に有機で始めたけれど技術が追い付かずあえなく挫折して離農…という話もよく聞く中で、少しずつ有機栽培をやってみる、それはまさに実践的な有機農業への取組モデルではないか!と思ったわけだ。
まず、南部農産の成り立ちを簡単に教えてもらった。南部農産は、越前市南部に位置する王子保地区国兼町の転作作業を受託し始めた事に由来するが、徐々に離農者の田んぼを請け負うなどして面積が増えていったこともあり、平成16年に農事組合法人 南部農産を立ち上げた。しかし、従業員の福利厚生を考えた先代(山口さんの父)が、その後株式会社化し、今に至る。山口さんは放送系の学校を卒業後しばらく東京などで働いていたが、12年前に(株)南部農産に就職し、令和5年から代表取締役を務めている。
この南部農産が位置する越前市国兼町は、福井平野のほぼ南端、丹生山地がせまる山麓に広がり、旧・北陸街道沿いに位置している。源平合戦の時代、木曽義仲が平氏追討のための陣を張ったという、大塩八幡宮が鎮座する歴史ある地域だ。(歴史好きには持って来いの場所♪)
コウノトリをシンボルとしている越前市は令和6年5月に「オーガニック都市宣言」を行い、有機農業の推進を掲げているが、この国兼町では有機農業を目指す農業者は山口さんだけだ。その理由として、雑草管理等の大変さと、その労力に見合うだけの価格が見通せないからではないか、と山口さんは話してくれた。
それでも、山口さんは受け継いだ慣行栽培の水田(約35ヘクタール)を44ヘクタールに増やし、その一部2.85ヘクタールで、令和6年から農薬・化学肥料不使用(福井県特栽1※)の水稲栽培を開始した。手間もかかり、収量も低くなりやすい有機農業。知り合いの農家からは、いきなり3ヘクタールもやるのか!?できるのか!?と驚かれたという。
※有機農業として認証を受けるためには、2年間以上、化学肥料や化学合成農薬を使っていないことが条件となるため、移行期間は「特別栽培」という扱いになる。
蓋を開けてみれば、令和6年の単収は6.5俵程度(地域での慣行栽培の場合8俵程度)。
「大規模有機農業者から技術指導を受けたり、水管理を徹底的に行うことで藻の繁殖を抑えたり、色々とやってみた結果だと思う。初年度としては、まぁ上々かな」と山口さんははにかんだ。令和7年は増やした請負分をそのまま作付けにまわし、なんと倍近くの4.4ヘクタールに増やす予定だという。



しかしなぜ、山口さんは有機農業を始めようと思ったのか?
「米価が安かった当時、有機・オーガニックや、SDGsという言葉をよく耳にするようになって。儲かる農業の実践と環境に優しい農業ができないか調べてみると、有機栽培の米が高く売られていることを知ったんです。それで、以前から繋がりのあった有機農業者にも話を聞いてみると、実際に高値で販売されていて、しかも需要に追い付いていないとのことで。ネットの情報だけではなく、生の声を聞けたことで、これはどこかのタイミングで有機を始めないと!って。有機栽培は、会社の経営戦略の1つの柱になると思ったんです。」と話してくれた。
そうして実際に動き始めた山口さん。矢継ぎ早に行動に移していった。
まずは「みどり認定」。令和6年12月に、みどりの食料システム法に基づき環境負荷低減事業活動を行う農林漁業者として、福井県知事の認定(みどり認定)を受けた。
そして、農林水産省のみえるらべる※にも登録。「温室効果ガス削減への貢献」と「生物多様性の保全」のそれぞれについて、最高レベルの星3つを獲得し、昨年(令和6年)11月に開催された試食会では越前市長においしいと太鼓判を押されている。
※環境負荷低減の取組を見える化するための等級ラベル
さらに、越前市・農業機器メーカーとJ-クレジット※に係る覚書を締結し、令和7年から実際に取組を開始する予定だ。
※温室効果ガスの排出削減量を「クレジット」として取引する制度。ここでは、水稲栽培期間中の水管理を工夫することで、土壌からのメタンガス発生を抑制する取組について覚書を締結している。

山口さんの眼は、常に一歩先を見つめている。
自身の経営についても、そばや米粉専用品種、酒米の有機栽培を検討したり、ふるさと納税の返礼品への登録を進めたりしている山口さんだが、その眼は自社の経営だけにとどまらない。
国兼町の将来を考え、山口さんが先頭にたって、地域計画策定の話し合いに積極的に参画し、農地集積についても力を入れているのだ。さらに、王子保地区の若手担い手と後継者の私的な集いの会を企画し、2月末に第1回「王次会」(王子保次世代を担う会)を開催した。
「この集いは、今までの競合他社という概念ではなく、お互いの悩みや問題点等を解消できる場として作ったものです。こうした地域の横のつながりを強化することで、地域計画にも良い影響が出るのではないか。有機無農薬を手掛けていない担い手も多いので、無農薬等の取組が始めやすくなるような、情報の提供の場にもしていきたいんです。いずれは、みんなで有機米を生産し一定の量が確保できれば「王子保米」というブランドで販売できないかと思っているんだ。」そう話してくださる山口さんからは、仲間と一緒に、地域を大切にしていこうとする思いがあふれていた。
では、南部農産のお米はどこで買えるのか?基本的には地元の精米会社に出荷しているが、南部農産に連絡してもらえれば、お米の購入も可能とのこと。みえるらべるのついたお米も、令和6年産米に関しては、数量限定・手渡しでのみで販売している。また、今後はふるさと納税の返礼品やネット販売も始める予定とのことなので、楽しみにしてほしい。
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DATA【株式会社 南部農産】 ![]() |
お問合せ先
企画調整室
ダイヤルイン:076-232-4206
生産部 環境・技術課
ダイヤルイン:076-232-4131





