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東海農政局

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令和6年度「井村屋グループ株式会社」における取り組み


三重県津市で、井村屋グループ株式会社における食品ロス削減の取り組みを、3人の担当者に伺いました。
(令和6年11月21日。聞き手:東海農政局消費・安全部長小山内司)

~こんな話を聞きました~

製造してきた食品は、チョコレート以外ほぼ全て

(東海農政局)
井村屋グループについて教えてください。

(井村屋グループ株式会社 近藤氏)
全体の経営戦略を担う井村屋グループ株式会社を中心に、井村屋株式会社をはじめとする事業会社が国内外に10社あります。
皆さまにおなじみのあずきバーや肉まん・あんまんは、井村屋株式会社が製造する商品です。

井村屋組織図
井村屋グループの全体像

(東海農政局)
ほかにはどのような商品がありますか。

(井村屋グループ株式会社 近藤氏)
店頭に並ぶものではようかん、カステラ、氷みつなどがありますし、業務用ではカップ麺のスープに使う野菜や魚介のパウダー、お菓子に使うフルーツやこしあんのパウダーなどがあります。
数年前からは日本酒造りも始めました。
井村屋グループはもの作りに挑戦する企業風土があり、長い歴史の中で、手がけていないのはチョコレートくらいと先輩社員から聞いています。

井村屋グループ株式会社 経営戦略室 課長代理 近藤修司氏
井村屋グループ株式会社 経営戦略室 課長代理 近藤修司氏

生おからをそのまま使うことで、アップサイクルを拡大

(東海農政局)
現状、食品製造の過程でどのような副産物が発生していますか。

(井村屋株式会社 小林氏)
グループ内で発生する副産物のほとんどは、食品製造の中核を担う井村屋株式会社のものとなります。
量的に一番多いのは、豆腐の製造で発生するおからです。

井村屋株式会社 エネルギー統括部 エネルギー・環境対策チーム長 小林正靖氏
井村屋株式会社 エネルギー統括部 エネルギー・環境対策チーム長 小林正靖氏

(東海農政局)
おからの発生は、全国の豆腐メーカーにとって共通の悩みですね。

(井村屋株式会社 小林氏)
加工食品の原材料として使える分以外は、家畜の飼料に回すことになります。
おからは食品ですので、なるべく消費者に食べてもらいたいという思いで、社内にチームを立ち上げて、食材としての利用を増やすアップサイクルを検討しました。
アップサイクルとは、副産物などに新たな価値を付与する取り組みです。

(東海農政局)
具体的にどのようなアクションにつながりましたか。

(井村屋株式会社 小林氏)
おからは腐敗しやすいため、取り扱いが難しいという課題があります。
しかし井村屋には、アイスや肉まんで培った冷凍技術や設備があります。
そこで、新鮮なおからを冷凍品として販売するようにしました。

(東海農政局)
冷凍品のおからは、どういうところで使われているのですか。

(井村屋株式会社 小林氏)
三重県のスーパーで、総菜の原材料に使ってもらっています。
最初は少量から使ってもらい、総菜の需要に合わせて取引量を増やしていったのが安定した取引につながっています。
スーパー以外でも、ドーナツの原材料として一部使ってもらっています。

おからが使われた総菜
おからが使われた総菜

(東海農政局)
食用の利用を増やしてきたのですね。

(井村屋株式会社 小林氏)
おからは日々大量に発生するので、食用の利用は一部に限られてしまいます。
このため、おからの発生量を減らす取り組みも並行して行っています。
豆乳を絞る工程の機械設備を調整し、本来の製造能力を最大限引き出すことで、豆乳の品質を維持しながらおからの発生量を減らしています。

アップサイクル商品がヒットしすぎると困ることも

(東海農政局)
おからのほかには何かありますか。

(井村屋株式会社 小林氏)
例えば、カステラを焼き上げた際、規格のサイズにならない端の部分が必ず発生します。
また、あずきバーも、一本当たりの重さに目安があり、あずきの量が多すぎると規格外品となってしまい出荷ができません。

規格のサイズにならないカステラの端
規格のサイズにならないカステラの端

(東海農政局)
こうした規格外品の発生は避けられないのですね。

(井村屋株式会社 小林氏)
そうなんです。
こうした規格外品は、本社敷地内に設置した直売施設で、お求めやすい価格で販売しています。
地域のお客様に笑顔を届けることができますし、直売施設でさまざまな商品をお求めいただくことが商品の良さを知っていただく機会になるという期待もあります。

直売施設の外観と施設内の様子

(東海農政局)
カステラの端は、別商品にアップサイクルできそうですね。

(井村屋株式会社 小林氏)
カステラの端はラスクにも加工できます。
ただ、おからも同様ですが、こうした別商品がヒットしすぎると、私たちには他社への原材料の供給責任が発生しますので、極端な場合、副産物を供給するために製造するという本末転倒なことが起こりえます。
こうしたリスクを避けるため、他社への販売だけでなく、社内製品での活用も常に模索してきました。

(井村屋グループ株式会社 近藤氏)
アップサイクルの話をすると、日本酒製造においては原料米の2割程度の重量に相当する酒かすが発生するので、実はどこの酒蔵もその処理に困っているという話があるんです。
井村屋グループにはさまざまな製品があるので、発生した酒かすはグループ製品の原材料として全て利用できています。
例えば、あんまんの生地に練り込んでいますが、酒まんじゅうという和菓子があるように、酒かすはあんまんと相性の良い組み合わせとなります。

包装資材や殺菌方法の工夫で、賞味期間を大幅に延長

(東海農政局)
食品ロスを減らす取り組みは、ほかにどのようなものがありますか。

(井村屋株式会社 小林氏)
賞味期間を伸ばすことで、商品が廃棄されにくくなります。
例えば、備蓄食料用のようかんがありますが、包装資材メーカーと連携し、実験を繰り返すことで、賞味期間を5年6カ月とすることに成功しました。
長期保存が可能であることに加えて、飲料がなくても手軽にカロリー補給ができ、また、アレルギー物質を含まないことも評価され、自治体や企業の備蓄食料に活用していただいています。

備蓄食料用のようかん
備蓄食料用のようかん

(東海農政局)
ようかんの賞味期間は通常1年程度なので、画期的ですね。

(井村屋グループ株式会社 近藤氏)
ほかに、賞味期間が冷蔵180日の豆腐も作っています。
こちらは製造工程で殺菌方法を工夫した当社の独自製法の商品です。
例えば、介護給食施設では、年末年始などで豆腐の納品がしばらく止まってしまうことがあるのですが、通常の豆腐は日持ちしないのでこうした期間はメニューに取り入れづらくなります。
当社の豆腐であればこうした問題はありません。
また、コンテナ船での長時間輸送にも耐えられますので、香港向けに輸出も行っています。

通常のロングライフ豆腐
通常のロングライフ豆腐

介護給食向けの高カロリー豆腐
介護給食向けの高カロリー豆腐

(東海農政局)
食品ロス削減の観点も踏まえ、食品の寄付をされているようですね。

(井村屋グループ株式会社 近藤氏)
肉まん・あんまんや和菓子といった当社の冷凍製品を、セカンドハーベスト・ジャパンなどへの寄付を通じ、こども食堂や生活困窮世帯にお届けしています。
このほか、クリスマスプレゼントとして、毎年、三重県社会福祉協議会を通じて、社会福祉施設に冷凍の肉まん・あんまんを贈っています。

(東海農政局)
冷凍製品だと、寄付後の温度管理も必須ですね。

(井村屋株式会社 小林氏)
寄付に際しては、冷凍の状態でこども食堂など最終ユーザーに届けていただけることを条件にしています。

グループ内における副産物の廃棄ゼロを目指して

(東海農政局)
11月8日に、井村屋グループ株式会社から、アップサイクルセンターを設立するとの発表がありました。
オンラインでつながっている井村屋グループ株式会社の加藤さん、詳しく教えていただけますか。

(井村屋グループ株式会社 加藤氏)
これまでも、製造工程で発生した副産物は、スーパーで利用していただいたり、グループ内の別製品の原材料として利用していましたが、このように利用できるのはごく一部にとどまり、大部分はメタン発酵や家畜の飼料に処分せざるをえませんでした。
令和7年2月の竣工を目指すアップサイクルセンターでは、井村屋株式会社の工場で発生した副産物の商品化を推進することとしています。

(東海農政局)
アップサイクルセンターによって何が変わるのですか。

(井村屋グループ株式会社 加藤氏)
井村屋株式会社の「津工場」内に設けるセンターには、3つの生産機能を備えます。
1つ目はパウダー化機能です。豆腐を製造する「あのつFACTORY」(津市)で発生したおからは、現状、その一部をFACTORY内で冷凍にして出荷し、ほかは処分しています。
今後は、全てのおからを「津工場」のアップサイクルセンターに運び、おからパウダーに加工することで、全量を食用として利用できるようにします。

(東海農政局)
パウダー化することで、用途が一気に広がりそうですね。

(井村屋グループ株式会社 加藤氏)
おからパウダーは、食物繊維が豊富で、取り扱いもしやすいことから、加工食品の原材料として高いニーズがあります。
既にいくつかの食品企業から当社に問合せもいただいており、グループ内での利用はもちろん、さまざまな企業でお使いいただけるものと考えています。

(東海農政局)
ほかの2つの機能はいかがですか。

(井村屋グループ株式会社 加藤氏)
2つ目は生産・加工機能と冷凍機能です。
おからパウダーは原材料として大きな可能性を秘めているので、パウダーを使った新たな常温商品や冷凍食品をここで製造できるようにします。
このほか、肉まん・あんまんの生地など既存商品の原材料としても使っていければと考えています。
他社への販売に依存しすぎると供給責任の問題が発生しますので、グループ内での利用もしっかり進めていくことが大切です。
最後の3つ目は包装機能、つまり最終製品として出荷できるようパッケージ化をするというものです。
以上の機能が揃うことで、グループ内外でアップサイクル商品をどんどん生み出すことができるようになります。

豆乳を絞った後のおから
豆乳を絞った後のおから

(東海農政局)
アップサイクルするのはおからのほかに何がありますか。

(井村屋グループ株式会社 加藤氏)
こしあんを作る際に発生するあずきの皮もパウダー化して使っていきたいと思います。
現状、当社ではあずきの皮を家畜の飼料として利用していますが、食物繊維やポリフェノールが含まれ、健康機能が注目されていますので、パウダー化することによって全量を加工食品の原材料に使っていきたいと考えています。
カステラの切れ端についても、付加価値を加えて商品化を進めていきます。

あずきの皮
あずきの皮

(東海農政局)
SDGsにも沿った取り組みで、素晴らしいですね。将来の目標を教えてください。

(井村屋グループ株式会社 加藤氏)
2028年を目標に、副産物の廃棄ゼロを目指します。
井村屋グループには、創業以来、多くの食品製造を手掛けてきた実績があり、新商品を生み出すさまざまなノウハウがあります。
こうしたノウハウを活かしてアップサイクルを進めてまいります。
これからも井村屋グループの商品に注目ください。

(東海農政局)
楽しみにしています。ありがとうございました。

左から、近藤課長代理、小林チーム長、小山内部長
左から、近藤課長代理、小林チーム長、小山内部長

取材場所:井村屋グループ株式会社 本社
(三重県津市高茶屋七丁目1番1号)

井村屋グループ株式会社のサイトはこちらから

井村屋グループ株式会社Webサイト
井村屋グループ株式会社(外部サイト)

PDF版

令和6年度「井村屋グループ株式会社」における取り組み(PDF : 1,187KB)

お問合せ先

消費・安全部消費生活課

担当者:消費者対応班
代表:052-201-7271(内線2807)
ダイヤルイン:052-223-4651

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