このページの本文へ移動

北陸農政局

メニュー

株式会社黒﨑鮮魚 代表取締役 黒﨑康滋氏、黒﨑陽子氏(富山県富山市)

更新日:令和3年11月30日

黒﨑康滋・陽子

農政局:

まずは、黒﨑さんのお仕事をご紹介下さい。


黒﨑氏:

富山市で「富山のよきものが集まる店」黒﨑屋を経営しています。社名の鮮魚からもわかるとおり、元々はスーパー内で鮮魚店を営んでいました。2019(令和元)年に現在の店舗を新築し、鮮魚だけでなく、生鮮4品(鮮魚、食肉、青果、グロセリー)を揃える黒﨑屋を開店しました。

メインの鮮魚は自ら富山湾各漁港で仕入れ、その他に、食肉はこだわりの商品を生産販売する富山市の池多ファームがテナント出店、青果は近隣農家の無農薬有機栽培品など、惣菜は富山県内で評価が高い人気店に出店してもらっています。

鮮魚の仕入れ代行も行っていて、店内にライブカメラを設置し、ホームページで常にショーケースや⽣け簀の在庫が確認でき、オンラインで受注できるようにしています。

農政局:

お客さんは、一般の消費者の方の他に一流レストランのシェフもいらっしゃるとお聞きしましたが。

黒﨑氏:

年間で20万人のお客様にお越しいただいていますが、一般のお客さんが8割、残りは事業者の方で、そのうちレストランのシェフは2割といったところです。遠くは、岐阜県や長野県から来ていただくこともあります。

 黒﨑屋
「富山のよきものが集まる店」黒﨑屋外観

農政局:

シェフの方々が求められる食材とはどのようなものですか。

黒﨑氏:

最近富山に星付きレストランが増えています。そのシェフは、富山の魚に魅了されて来店されますが、魚だけでは料理は成立しません。その魚を最大限に表現するためにも、それに見合った肉や野菜は不可欠です。そういったものを求めて当店にお越しになります。

農政局:

シェフの方々が求める「富山の魚にあった肉や野菜」とは、どのようなものなのでしょうか。

黒﨑氏:

富山のシェフは出来ることなら全ての料理を富山県で取れたもので作りたいという想いが強いです。しかし、シェフが望む富山産の野菜で、特に西洋野菜などは生産しようと思っても、まったく芽が出ないものもあります。ですから、富山で生産できるものをこちらから提供し、その素材を組合わせてシェフの方々が料理として表現していくことで、富山ならではの逸品料理が生まれ、そうした料理を通じて、富山ならではの魚、野菜、お肉となっていくのだと思います。

農政局:

野菜は近隣の農家から仕入れておられるとのことですが、こだわりはありますか。

黒﨑氏:

あります。黒﨑屋に置く野菜は、近隣の農家約150軒から仕入れており、多くは有機、無農薬栽培のものです。慣行栽培のものもありますが、必要最低限の農薬使用に抑え、こだわって作っている農家のものです。志が高く、生業として生産している農家のものだけを置くようにしています。

農政局:

そうした富山ならではの素材は、シェフの方以外にも求められているそうですね。

黒﨑氏:

そうした新しい富山の素材を家庭で調理したいと来店される方が増えてきました。若いお子さんを連れた子育て中のママとか、料理教室の先生のような方も多く来店されます。料理教室の先生方はSNSで発信されることが多く、ハッシュタグに「#黒﨑屋」と付けられているので「あの時のお客さんだ」と分かります。

うちのお店の醍醐味として、有名シェフの隣で一緒に買い物ができるというところがあります。そのシェフが買ったものと同じものを買って、家で調理をして、「あのシェフと同じもので作ったのよ」と自慢しながら食卓に並べるそうです。
こだわりの野菜が並んだ店内
こだわりの野菜が並んだ店内の様子

農政局:

生産者情報を伝えるお店は直売所などでよくありますが、お店で物語が生まれるというのも素敵ですね。全国で西洋野菜を生産する方が増えているようですが、富山でもその動きは広がっているのですか。

黒﨑氏:

富山でも西洋野菜を生産している農家は存在します。彼らは意欲があり、無農薬、自然栽培を行ったり、新品種に挑戦しています。しかし、そんな富山産西洋野菜も、普通のスーパーではなかなか望んだ価格で販売できないのが実情です。作ってはみたものの売る場所が無いという方に黒﨑屋に出荷していただいています。そのような西洋野菜をシェフの方々に提案して料理に活かしてもらうのが、黒﨑屋の使命だと考えています。また、事前に注文を受けて出荷を促したり、欲しい大きさ、品種なども生産者に伝え、作付け、栽培に活かしてもらっています。

農政局:

事業者や消費者と生産者を結ぶ取組が、未来の富山ならではの食文化を創造するような気がします。そのためにも、どのような取組が必要だとお考えですか。

黒﨑氏:

農家とシェフや事業者を繋げる役割がより一層重要だと思っています。また、一皿が全て富山県産で出来た料理が数多く出ることで、新しい富山の食文化を考えるきっかけになると考えています。

農政局:

一方で地域には、継承されてきた伝統料理がありますが、そうした伝統料理はどのように見ていらっしゃいますか。

黒﨑氏:

富山の風土に合う魚、富山の土壌に合う野菜で、伝統料理・郷土料理が生まれたのだと思っています。しかし、温暖化で獲れる魚種が変わってきたり、野菜は生産性の悪さ等から作りやすい品種にとって代わったり、伝統料理・郷土料理そのものの調理の煩わしさから、食卓から消えそうなものもあるのも事実です。

こうした料理を次世代に継承していくためにも、郷土料理の惣菜を販売したり、消えてしまいそうな在来種の野菜を復活させたりしたいと思います。

実は、黒﨑屋の近隣地区の在来種に「草島ネギ」というネギがあります。やわらかいのが特徴ですが、より流通に適した根深ネギ(白ネギ)にとって代わられ、今では出荷している農家はいません。その種を毎年繋いできてくださった方から譲っていただきましたので、栽培して模様と思っています。草島ネギはかなりやわらかく、加熱すると甘いそうで、その味を懐かしむ人が多いそうですなので、復活させることが出来たらたくさんの人に味わってもらいたいです。

農政局:

黒﨑屋は、富山の食文化のプラットフォームなんですね。草島ネギの復活を期待しています。では最後にメッセージをお願いします。

黒﨑氏:

魚には旬があって、時期の魚は脂があって本当に美味しいものです。それを仕入れて、処理をして、販売することが魚屋の仕事です。ブリが揚がれば冬の到来を感じるし、ホタルイカが揚がれば春の到来を感じます。その様に魚で季節とその地域の風物詩を消費者に感じてもらえる存在が魚屋だと思っています。

富山には、旬の魚と野菜を使った正月料理の「かぶら寿司」や白えびと玉ねぎで出汁を取った「しろえび素麺」、等の伝統食があります。その時期に獲れる魚、その時期に収穫される野菜を消費者に伝え続け、使い続けてもらうように努力をすることが、消費者と生産者をつなぐ仕事に繋がると思っています。この様なことを思って日々仕事をしています。

「ローカルガストロノミー」という言葉があります。地方の産物が東京に比べ新鮮なのは地の利からも当たり前。当たり前なんだけど、いいものがあると自覚をして、どう生かして表現するかが大切だと思います。そうしたことをみんなで考えて発信していけたらと思っています。

  ※ローカルガストロノミーとは地域の風土や歴史、文化、農林漁業の営みを「料理」に表現すること。

農政局:

本日はありがとうございました。

プロフィール

黒﨑 康滋(くろさき こうじ)、黒﨑 陽子(くろさき ようこ)富山県富山市在住。
康滋氏は慶応義塾大学商学部卒業後にUターンし、家業であった黒﨑鮮魚を継承。富山県内の漁業者だけでなく、青果物、畜産物の生産者とネットワークを構築。店舗及びインターネットで販売。
陽子氏は黒﨑屋のおやさい・くだもの担当。

お問合せ先

経営・事業支援部 地域食品・連携課

代表:076-263-2161(内線3995)
ダイヤルイン:076-232-4890
FAX:076-232-4178