所長挨拶
農林水産政策研究所長 浅川 京子
2023年の年頭に当たって
明けましておめでとうございます。2023年の年頭に当たり、謹んでごあいさつ申し上げます。
旧年中は農林水産政策研究所の研究や運営にご理解ご協力をいただき厚く御礼申し上げます。本年が皆様にとって良い年になりますよう、また、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
この1年を振り返ると、新型コロナウィルスの流行の波が収まらない中で「コロナと共存する生活」が定着し、行動制限が緩和され人流が回復するにつれ経済が徐々に上向きになることが見込まれていました。ところが、2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、国際社会を巻き込んでの紛争は1年になろうとしています。穀物、食用油、肥料の輸出大国同士の紛争がこれら物資の安定的な生産・輸出の支障となったことが、「自由貿易体制、国際的な分業体制の下での食料調達」を前提とする世界全体の食料供給システムの存立を脅かしています。また、産地の天候不順や円安の急激な進行により輸入食料や生産資材のコストが急騰したことで、これらの多くを輸入に頼る我が国の食生活はもとより国内の農業経営にも悪影響を及ぼしています。このため、昨年は食料安全保障上のリスクが広く認識され、不測時においても食料の安定供給を確かなものとすることが強く求められるようになりました。
このような諸課題に対応していくため、農林水産省では、20年ぶりに食料・農業・農村基本法を見直すべく昨年9月から政策の総合的な検証・見直しを開始しました。国内外の食料生産・消費・貿易の動向を踏まえつつ、国内で生産できるものはできる限り国内で生産することで危機に強い食料供給体制の確立に向けた構造転換を進めていく方向です。あわせて、2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」に沿って、食料生産に中長期的に影響を及ぼす気候変動対策や持続可能な農業生産活動の実現といった政策課題にも積極的に対応していくことも重要です。
農林水産政策研究所は、農林水産省の社会科学系の政策研究機関として、農林水産分野に係る調査研究を行うとともに、その成果を還元することで政策の検証・検討・推進を支えてまいります。
具体的には、(1)主要国の穀物等の作柄や需給情報等の収集を通じた世界の長期的な食料需給見通しの策定、各国の政治経済体制や制度が食料生産・流通に与える影響の分析、(2)2020年農林業センサスの詳細な分析による地域農業や農村社会の構造的な変化と課題の明確化、高齢化や過疎化が進展する中での食料品アクセス条件の変化の分析、(3)産地の販売戦略や消費者の購買行動等の調査分析を通じた有機農産物市場の拡大要因の究明、農業法人のESG活動を企業価値として評価する手法の開発などを行っており、これらの研究成果を政策の見直しや推進に活かしてまいります。また、これまで異なる分野の研究者や行政部局などと連携して実施してきた「農福連携が身体や地域社会に及ぼす効果」などのテーマについては、研究成果のとりまとめを行い公表してまいります。このほかにも、オンラインを含め様々な媒体を使って当研究所の研究成果を皆様と広く共有し、皆様との意見交換等を通じて交流・連携を深めていきたいと考えております。
本年も一層のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
農林水産政策研究所長 浅川 京子
浅川 京子(あさかわ きょうこ)
農林水産政策研究所長(Director-General)
略歴: | |
1962年 | 愛知県出身 |
1985年 | 東京大学法学部卒業 |
同年 | 農林水産省入省 |
2000年 | 林野庁林政部林政課調査官 |
2001年 | 大臣官房統計情報部構造統計課地域・環境情報室長 |
2003年 | 水産庁資源管理部国際課漁業交渉官 |
2005年 | 水産庁漁政部加工流通課長 |
2007年 | 消費・安全局消費者情報官 |
2009年 | 厚生労働省職業能力開発局育成支援課長 |
2011年 | 林野庁国有林野部管理課長 |
2012年 | 経営局総務課長 |
2014年 | 四国森林管理局長 |
2015年 | 水産庁資源管理部長 |
2017年 | 関東農政局長 |
2019年 | 大臣官房総括審議官 |
2020年 | 林野庁次長 |
2021年~ | 農林水産政策研究所長 |
(現職) |

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