クローズアップ研究者 法理 樹里
農林水産政策研究所 主任研究官(農業・農村領域)
専門: 環境心理学、認知行動科学、農村社会学
これまでの研究はどのようなものですか?
森や里や海などの自然環境は、人間社会に多くの恵みをもたらし、わたしたちの生命を支える「食」を担保しています。自然と人間のよりよいつながり方を模索し、将来にわたって自然と共生できる持続可能な社会を実現するためには、自然の恵み(生態系サービス)を受け取ることで得られる人間の福利(幸せ:well-being)の把握が重要となります。なぜならば、「福利」という心理的側面は、人間の行動や感情を喚起・継続させる要因となるからです。大学院時代には、ミレニアム生態系評価の人間の福利を指標に用いてアンケートを実施しました。その結果、生態系サービスを受け取ることで得られる人間の福利は、「安全」と「快適な生活のための基本的資材」が起点となり、「良好な社会関係」および「健康」を経由して、「選択と行動の自由」への満足度が高まるという階層構造にあることが明らかとなりました。
近年は、自然の恵みを上手に活用することで、今より少しだけ幸せになれる未来への話し合いを活性化させるためのコミュニケーションツールとして援用できる知見の蓄積を行っています。自身が暮らす地域において「なぜ環境配慮が必要なのか」、「なぜ生物多様性が重要なのか」といった対話を進めるために、様々な地域に入り込みインタビューやワークショップを行い、時にはアンケートも併用しながら、自然環境や自然資源に対する地域の方々の意識の可視化を試みています。
今後の抱負を教えてください。
地域の多様な主体としっかり向き合い、双方向に意見を共有しながら時代および地域の変化を見通し、農山漁村地域の価値と可能性を地域の方々とともに同じ目線で議論できる研究者を目指したいと思います。
2018年広島大学大学院博士課程修了(博士(学術))。京都大学学際融合教育研究推進センター特定研究員、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター研究員を経て、2023年4月より現職。 |
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