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農林水産政策研究所

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クローズアップ研究者 小倉 達也

農林水産政策研究所 研究員(国際領域)

専門: 農業経済学、開発経済学、アフリカの農業

これまでの研究はどのようなものですか?

  私は、これまでに農業経済学・開発経済学を専攻し、開発途上国の農村に住む人々の暮らしについて関心を持って研究を進めてきました。具体的には、西アフリカのガーナ共和国を対象地域として、稲作農家の家計調査を実施してきました。そして、家計調査で得た個票データを定量的な手法で分析するスタイルの研究を行ってきました。
  米はガーナにおいて主要な穀物になってきましたが、生産量が需要に追い付いておらず消費の半数を輸入米に依存しています。また、国産米は輸入米と比較して品質があまり良くありません。消費者には国産米よりも輸入米が好まれています。対象地域では、近年大規模精米所がブランド米の製造・販売を始めました。ブランド米は国産でありながら品質が輸入米と同等です。そのような品質の高い国産米を作るためには品質の良い籾米を農家から集める必要があります。農家にとっては品質を上げることによってより高い価格での販売機会を得ることになります。この精米所が登場したことの稲作農家への影響を検証してきました。
  第一に、精米所が要求する品種である市場志向型の香り米品種が農家に採用されることによって稲作の収量に及ぼす影響を検証しました。分析の結果、市場で好まれる香り米品種を採用することにより単収も増加することが明らかになりました。
  第二に、精米所の存在が米の取引行動に及ぼす影響を検証しました。具体的には、取引の際に品質が考慮されるかどうかを検証しました。分析の結果、精米所に近い村に住むほど一般的な籾米取引で品質を考慮される可能性が高く、その場合販売価格も高いことが明らかになりました。途上国の国内穀物取引では品質が価格に考慮されないことも多く、品質が考慮される近代化された取引への変化が観察されたことになります。
  第三に、精米所の販売制度と米の品質の情報を認知することによる稲作農家への影響を検証しました。無作為に選定された農家に情報を提供した結果、情報を受けた農家はより市場志向型の香り米を選択し、村の外に販売先を探すようになり、結果高い販売価格を得るようになったことが明らかになりました。

今後の抱負を教えてください。

  今まで行ってきたミクロな視点からの分析を継続的に大事にしていく一方、マクロな視点からアフリカの国々や地域全体を俯瞰(ふかん)して分析することにも挑戦していきたいと思っています。そして、ミクロ・マクロのバランスを取りながらアフリカ諸国の現状を的確に把握・分析し、情報を分かりやすく発信できる研究者を目指していきたいと思います。

略歴      研究員紹介のページを見る

東京都出身。2021年3月東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了(博士(農学))。
同年4月、東京大学大学院農学生命科学研究科特任研究員を経て、2024年4月より現職。

お問合せ先

企画広報室広報資料課

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