世界の政治・経済において、ブラジル、インド、中国等の新興国の発言力が増し、WTOドーハ・ラウンド交渉はこれら諸国と先進国の対立で停滞が続き、貿易自由化を目指す動きはEPAに中心を移してきている。このような状況のもと、EUや米国はウルグアイ・ラウンド農業合意における「農業支持のデカップル化」の先を見据えながら農業政策の枠組を定期的に改定しており、今後WTO体制の下での農政の枠組の変化につながる可能性もある。このような状況に対応し、我が国の農業政策立案や食料需給の観点から重要な国・地域を対象として、農業政策とその背後にある戦略や食料需給動向の分析等を実施してきており、今後も継続する予定である。 なかでも、ドイツについて以下の理由から研究を行うこととする。 EUは、その政策の「先進性」と農業規模の大きさから、その動向が今後とも世界の農業政策の流れや食料需給に大きな影響を及ぼす可能性が見込まれる。EUの共通農業政策(CAP)の見直しは今後も定期的に行われることから、その農政と戦略を継続して調査・分析する必要性は高い。その際にはCAPに影響を及ぼす主要農業国の状況やその独自の政策についての情報収集・分析も重要となる。 ドイツは、EUのなかで最大の人口と経済規模をもつだけでなく、農地面積、農業生産量も有数の主要農業国であって、CAPに対する発言力も大きいことから、ドイツについて研究する重要性は高い。また、山間地など条件不利地域も多く、CAPのなかで拡充してきた農村振興政策(CAPの「第二の柱」)が進展しており、周辺地域も含めて情報収集・分析できればなお有用である。 このため、ドイツを主な対象として、その農業・農政に関する情報の収集・分析、農業戦略の研究を行う。具体的には、ドイツに関して、(1)EUの共通農業政策(CAP)に関するドイツの立場や地域振興政策を含めたCAPの実施状況、(2)CAP関連以外の独自の農業政策など個別の重要政策、また、(3)同じドイツ語圏で山岳地域を抱えるオーストリアなど周辺国の農村振興政策等について、情報を収集・分析する。これらの政策に加えて、(4)ドイツの主要農産物の需給動向や農業生産実態に関し注目される動向について情報収集等を行う。 |