2. CSV(共通価値の創造)の観点から見た国内外の食品企業の途上国等での栄養改善事業の実態・評価を踏まえた継続的な事業展開モデルの構築に関する研究
日本の食品関連企業に適したCSV事業モデルおよび評価モデルの構築
研究総括者
株式会社三菱総合研究所社会公共マネジメント研究本部 主任研究員 宮﨑 昌
研究の背景と目的
途上国においては、深刻な栄養問題の解決のため、企業の貢献に対する期待が高まっている。企業が継続的に社会問題の解決に取り組むためには、経済的利益の追求という企業行動本来の目的と合致したCSVとして行っていくことが理想であるが、先進的な一部の企業の取り組みにとどまっている。
本研究では、国内外のCSV事業先進企業のマネジメントやソーシャルファンドの事業評価手法等についての調査・分析を行い、国が行う企業への支援のあり方も検討しつつ、日本企業に適したCSV事業モデルおよび評価モデルを構築し、日本企業のCSV事業への取り組みを促進する。
研究の内容
(1)CSV先進企業調査分析
国内外のCSV事業における先進企業の事業マネジメントについて調査するとともに、既存の社会事業に関する評価手法について整理・分析を行う。
(2)社会事業に関する評価手法の整理・分析
ソーシャルファンドでの事業評価の枠組みについて調査し、社会事業に関する評価手法を分析する。
(3)CSV事業実態調査
CSV事業の現地調査において、ステークホルダーとの関係構築、現地への権限委譲や人材育成等に関する仮説検証を行い、より長期的に社会課題解決への貢献と事業成長を実現できるCSV事業マネジメントのあり方に関して考察を行う。
(4)CSV事業モデル・評価モデルの構築及び検証
(1)~(3)の成果をもとに、特に日本の栄養改善・保健衛生関連事業を手掛ける企業にとって広く活用可能かつ最適なCSV事業モデルおよび評価モデルの構築・検証を行い、政策的な支援のあり方も踏まえて取りまとめる。
期待される成果
日本型CSV事業モデルと評価モデルが構築・提示されることにより、日本企業のCSV事業の活性化、日本企業のBOP市場におけるプレゼンス向上に貢献する。
経済成長下のアフリカにおける食品企業の子どもを対象とした栄養改善事業:CSVの観点からのインパクト評価
研究総括者
国立大学法人 東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 櫻井 武司
共同研究機関
国立大学法人 北海道大学大学院保健科学研究院
研究の背景と目的
急速な経済成長と人口増加が進んでいるサブサハラ・アフリカにおいては、米や小麦の消費が拡大し、輸入が急増している。また、所得の上昇と機会費用の増大は、都市部を中心に外食や加工食品の消費も増やしている。これは食品企業にとっては新たな市場獲得の機会でもある。
本研究は、サブサハラ・アフリカにおける子どもの食事や栄養状態の変容を明らかにし、その中で食品企業が実施する栄養改善事業について、経済学と保健科学の学際的研究に基づきインパクトを評価する。とりわけ、民間企業が、栄養改善事業という利益を生み出すまでに一定の時間がかかる社会貢献的な取組を実施することの意義について、CSV(共通価値の創造)の観点から評価を行う。
研究の内容
(1)栄養改善事業の実態把握
現地(ガーナ、コートジボワール)での聞き取り調査を行い、各国政府や食品企業が実施している子どもの栄養改善事業の実態を明らかにする。
(2)子どもの食事と栄養状態の調査(ベースライン調査)
ガーナ、コートジボワールにおいて、子どもたちの食事の内容や栄養状態がどのように変容しているかを、家計調査、食事・栄養調査により明らかにし、それらを規定する社会・経済学的な要因を解明する。
(3)栄養改善事業のインパクト評価
食品企業が実施している子どもの栄養改善事業の代表的な例を取り上げ、そのインパクトを、CSVの観点([1]栄養改善事業がその目的通りの栄養改善効果を持つかどうか(社会的貢献の観点)と[2]食品企業が栄養改善事業から利益を生み出しているか、あるいはその可能性があるか(ビジネス継続性の観点))から評価する
(4)総合化(CSVの観点からの考察)
(1)~(3)の結果を総合し、企業がCSVとして継続的な事業展開を進めることを支援するために必要な政策の立案に資する提言を導く。
期待される成果
企業がCSVとして継続的な事業展開を進めることを支援するために必要な政策の検討に資する。
お問合せ先
農林水産政策科学研究委託事業推進事務局
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