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農林水産政策研究所

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平成27年度採択課題(研究期間:平成27年度~平成29年度)事後評価結果に基づく対応措置

研究テーマ1
「国内外の企業等による継続的な食育活動の効果及び有効な推進施策のあり方に関する研究」

研究課題名
研究総括者名
評価会における評価結果 評価結果に基づく
対応措置
総合評価 評価所見
日本と欧州諸国企業における食育外部性のエビデンスと政策支援課題の解明
国立大学法人 千葉大学大学院園芸学研究科 教授

大江 靖雄
目標どおり 科学的観点からは、これまで個別事例に留まりがちであった食育関連の研究において、企業を対象とした大規模な質問紙調査、企業情報を基にした調査等から、企業の食育活動等の全体像を把握、また、欧州三箇国の食育関連政策と企業内食育の調査から、新たな成果を提示しており、また、研究成果においても、研究論文・発表を意欲的に行い、目標に応える成果を上げていると評価できる。一方、食育活動を行う企業に生じる効果の概念モデルに関しては、検討の余地があり、食育外部性のエビデンスに基づく食育への政策支援の課題解明については、今後の研究進展を期待する。
政策的観点からは、行政として、食品関連事業者等の食育を推進している中、初めて企業を対象とした大規模な食育アンケート調査等を実施し、企業の食育活動を活発化させるための政策的含意が提示されるなど、政策の検討に貢献しており、評価できる。一方、欧米諸国に関して、政策情報については重要な成果であるが、企業の食育調査については今後の調査研究を期待する。
左記の評価所見を踏まえ、研究成果が活用されるよう広く情報提供に努め、また、今後研究を深めることが期待される。

研究テーマ2
「CSV(共通価値の創造)の観点から見た国内外の食品企業の途上国等での栄養改善事業の実態・評価を踏まえた継続的な事業展開モデルの構築に関する研究」

研究課題名
研究総括者名
評価会における評価結果 評価結果に基づく
対応措置
総合評価 評価所見
日本の食品関連企業に適したCSV事業モデルおよび評価モデルの構築
株式会社三菱総合研究所社会公共マネジメント研究本部 主任研究員
宮﨑 昌
目標どおり 科学的観点からは、新しい概念であるCSVについて国内外の企業事例をまとめ、帰納的に日本企業に適したCSVの事業モデル・評価モデルを引き出している点は、新規性があり、評価できる。事業モデルについては、事業の分類法や計画から、実施への過程において各段階で必要な機能や外部パートナーの活用等有益な情報が得られており、今後CSV事業を考える企業にとっても有益である。一方、評価モデルについては概念的な内容に留まっており、どのような評価をするべきかが具体的に明確になっていない点が惜しまれる。
政策的観点からは、評価モデルの構築については、社会的インパクト評価を起点に検討しているが、社会的価値と経済的価値を連動させる明確な手法構築や、途上国の栄養改善への国際貢献という事業の特殊性を踏まえたモデル化までは至らず、企業の積極支援、政策への直接活用は難しい。今後、実証的な研究が必要になると思われる。ただし、CSV事業モデルが整理され、事業推進のための作業フレームが整理されたことは、今後の事業推進に向けた政策立案に重要な情報である。
左記の評価所見を踏まえ、研究成果が活用されるよう広く情報提供に努め、また、今後研究を深めることが期待される。
経済成長下のアフリカにおける食品企業の子どもを対象とした栄養改善事業:CSVの観点からのインパクト評価
国立大学法人 東京大学大学院農学生命科学研究科 教授
櫻井 武司
目標どおり 科学的観点からは、農村、都市双方におけるランダム化比較試験による分析により、栄養改善事業が有意な効果を持っていることを明らかにしており、また、特に農村部における栄養補助食品の販売実験により、子どもの栄養状態を改善させると同時に利潤獲得を目的とした企業活動が乳児の栄養を実現させうるというCSVの可能性を明確にしていることは評価できる。総合的に見て、当初の計画に沿った研究が遂行されており、その上で高い実証性に基づいた知見と結論が得られている。
政策的観点からは、途上国における栄養改善事業がCSVとして成立する可能性について証明できたことは評価できる。栄養改善が必要な層と製品の実ユーザーの相違が推察されるなど、CSV事業の現実的課題も明らかになった点は成果と考えられる。しかし、当初想定していたCSVの観点からのインパクトという点については、確定的な結論が導き出せていないため、成果の発展的活用については課題が残る。
左記の評価所見を踏まえ、研究成果が活用されるよう広く情報提供に努め、また、今後研究を深めることが期待される。

研究テーマ3
「農村地域内外の企業やNPO等との連携による持続性の高い生物多様性保全活動に関する分析及び政策支援のあり方に関する研究」

研究課題名
研究総括者名
評価会における評価結果 評価結果に基づく
対応措置
総合評価 評価所見
農村地域内外の多様な主体の連携による生物多様性の保全・活用活動のモニタリング・評価手法の開発
国際連合大学 上級客員教授
武内 和彦
目標を上回った 科学的観点からは、豊富な事例調査に裏打ちされた評価システムの構築を成し遂げたという点において、非常に費用対効果が高いプロジェクトであったと評価でき、モニタリング・評価手法の構築という当初目標は十分に達成されているが、評価手法の実用化のための具体的な道筋は不透明のままである。今後の課題として、このモニタリング・評価手法を適用した事例研究を蓄積することによって、学術的な検証を試みることが必要である。
政策的観点からは、評価マニュアルは今後の政策実施に活用可能である。評価手法に関しては、西洋の評価手法の評価視点に、(多様な主体の)参加性を加えて、六つの視点を掲げるとともに、評価の中立性、公平性、客観性を強化することができたことは、今後の政策立案に資する。特に、生物多様性条約締約国会議、東日本遺産学会等の国際的な会合で研究成果を報告しており、研究成果の発信という観点で高く評価することができる。
左記の評価所見を踏まえ、研究成果が活用されるよう広く情報提供に努めこと。
農山村地域における生物多様性保全活動の価値評価および企業やNPO等との連携による経済効果の分析手法開発に関する研究
国立大学法人 京都大学農学研究科 教授
栗山 浩一
目標を上回った 科学的観点からは、農業経済学分野において、実験経済学からのアプローチは少なく、新規性が高い意義ある研究成果と評価できる。CVM及び選択実験については、社会的な意義として生態系サービスの供給者である農業者と受益者である一般市民の評価という両面から取り組み、総合的な評価を試みた点は評価できる。また、PES及びESG投資などの多様な連携の可能性を具体的な事例調査等から実証的に検討を加えた本研究は、その当初目標を十分満たしていると評価することができる。
政策的観点からは、経済的連携事例の分析や連携スキームの実証等により示された機能や推進体制のあり方については、今後の経済的連携方策を検討する上で、非常に示唆に富み、有意義である。経済的連携は、農林水産業における生物多様性の主流化を実現するためには必要不可欠であり、その取組に当たっては、本研究の成果が非常に有意義なものとなる。生物多様性保全活動への評価が、生態系サービス支払に結びつくプロセスの具体化に期待したい。
左記の評価所見を踏まえ、研究成果が活用されるよう広く情報提供に努めること。
PDCAサイクルと多様な主体の参画・連携による生物多様性保全活動促進のための政策的支援に関する研究
国立大学法人 九州大学大学院農学研究院 教授
矢部 光保
目標どおり 科学的観点からは、西欧と生態系が大きく異なる我が国において、生物多様性を保全する政策についても日本の自然に適応したものでなければならいことを明確にしている。また、環境寄付金付き商品を消費者が購入しようとする要因をモデル分析によって解明している。ただし、本研究の肝というべきPDCAサイクルでの政策オプションの項目が網羅的であり、新規性が薄い。個々の調査については、高く評価できる成果が多いものの、プロジェクト全体を通じた統合された成果が見えにくい。
政策的観点からは、生物多様性保全活動促進のための政策的支援に関する様々な側面からの分析は、生物相の地域差が大きい我が国において実現可能な政策が示唆され、今後の政策検討に貢献する。ただし、PDCAの各段階に相当する支援の実例をピックアップし、それぞれを経済的支援、非経済的支援、融合的支援に分類して、政策オプションとして提示しただけという印象で、PDCAと関連した研究全体としての成果が見えにくい。
左記の評価所見を踏まえ、研究成果が活用されるよう広く情報提供に努め、また、今後研究を深めることが期待される。

お問合せ先

農林水産政策科学研究委託事業推進事務局

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