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農林水産政策研究所

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医療分野との連携による農業・農村の活性化とその波及効果及び体系的支援のあり方に関する研究

薬用作物の産地形成と園芸療法を通した農村健康観光の開発に関する研究

研究総括者

学校法人 早稲田大学大学院創造理工学研究科 教授 後藤 春彦

共同研究機関

公立大学法人 奈良県立医科大学
公益社団法人 日本観光振興協会

研究の背景と目的

  超高齢社会の到来を受け、増大する医療費削減の観点から予防医学の意義が再認識されつつあり、「未病を治す」漢方の有用性に大きな注目が集まっている。
  このような中、本研究では、医学的エビデンスにもとづく実践的研究を通して、薬用作物の産地形成と園芸療法を通した農村健康観光(以下、「農村健康観光」という。)の開発及びプロトタイプの実証実験、効果測定と体系的支援の提言に取り組むことを目的とする。

研究の内容

(1)研究フィールドの設定

  奈良県内各地域の物理的・社会的・経済的環境等に関するデータを収集・整形してGISを用いた基本データベースを構築・分析し、研究対象地を設定する。

(2)薬用作物の産地形成のポテンシャル評価

  各研究対象地における薬用作物の産地形成ポテンシャルを多様な視点から評価・分析し、その手法をマニュアル化するとともに、住民へのヒアリング調査により、生薬に関わる「ヘルス・ナレッジ」、「ヘルス・リテラシー」の抽出及び形成因子について、知見を一般化する。

(3)「農村健康観光」の開発及びプロトタイプの実証実験

  「農村健康観光」の概念を整理し、健康を志向する既成のヘルス・ツーリズムとの違いを明確化する。また、農作物及びその副産物の利用を含めた農業・農村の6次産業化や農村活性化の観点から有効な要素を抽出する。また、園芸療法の舞台を耕作地から集落エリアまで拡大することにより、「農村健康観光」のツアープログラムのプロトタイプを制作し、ツアープログラムの実証実験を行う。

(4)「農村健康観光」の波及効果測定

  (3)と並行して、経済的効果の測定の枠組みを構成する。それにしたがって、「農村健康観光」(プロトタイプ)への参加者を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を用いて、プロトタイプの経済的効果を測定する。また、医学的効果の測定の枠組みを構成し、それにしたがって、プロトタイプへの参加者を対象とした調査を実施し、参加者に及ぼす医学的効果を測定する。

(5)「農村健康観光」に関する体系的支援

  (2)~(4)の研究を通じ、効果が見込まれるコンテンツを取り入れた「農村健康観光」の社会実装を目指すモデルプログラムを提示し、その実施のための一連の流れをマニュアル化する。また、「農村健康観光」を広く社会実装するための課題を、関係主体へのヒアリング等を通じて抽出するとともに、課題解決のための体系的な支援策を提言する。

期待される成果

 「農村健康観光」の社会実装を目指すモデルプログラムの提示、マニュアル化により、「農村健康観光」の取組の拡大に資する。


農村活性化事業が農村高齢者の健康維持と地域の健康と豊かなソーシャルキャピタルの醸成に繋がることを実証する研究

研究総括者

国立大学法人 新潟大学大学院医歯学総合研究科 准教授 菖蒲川 由郷

共同研究機関

新潟県立十日町病院
株式会社 政策基礎研究所

研究の背景と目的

  我が国では、高齢化が進む中で、医療費や介護費が増加の一途をたどっており、高齢者の健康維持と介護予防は国家的な課題となっている。
  本研究が対象とする新潟県十日町市は代表的な中山間地であり、地域活性化を目指して、農業体験事業や県外からの就農者・移住者を積極的に誘致する多彩な取組を展開してきたが、こうした取組が人的・経済的な意味での地域活性化だけではなく、地域住民の結束を強固にし、地域のソーシャルキャピタルをより豊かにし、さらには、移住者も含め農村高齢者の健康維持と介護予防に効果があるとすれば、当該事業の意義が増すことになる。
  本研究では、農村活性化事業(多面的機能支払制度や田舎体験事業等)に積極的に取り組む農村地域において、ソーシャルキャピタルが豊かであり、地域高齢者の介護予防に効果があることを検証し、モデル化すること、農村地域活性化に関わる活動について、経済的な側面から評価すること、十日町市への転入者を対象とした調査から、農村移住者の健康や生活習慣への影響を分析することを目的とする。

研究の内容

(1)農村活性化モデルの理論的検討

 農村活性化事業に取り組むことが、地域住民の健康維持と高齢者の介護予防に役立ち、地域のソーシャルキャピタルの醸成にもつながるというモデルが成り立つことを理論的に示す。

(2)農村活性化事業の活動が健康とソーシャルキャピタル指標に及ぼす影響についての検討

 十日町市高齢者に対して実施された大規模アンケート調査のデータを用いて、多面的機能支払制度と農村交流事業に積極的に取り組む地域と他地域の高齢者の要介護リスク指標やソーシャルキャピタル関連指標を比較し、事業が及ぼす影響について検討する。

(3)農作業や農村活性化に関わる活動が健康とソーシャルキャピタル指標に及ぼす影響についての検討

 十日町市の市街地と山間部の高齢者を対象にサンプル調査を実施し、農村活性化事業への参加や関わり方の心身への影響を明らかにする。

(4)農村移住者の移住に対する評価と健康との関係についての検討

 十日町市への転入者を対象に調査を実施し、生活習慣や健康状態、地域との関わりについての変化を検討する。

(5)農村活性化に関わる活動に対する経済的評価に関する検討

 十日町市の高齢者を対象に、農村活性化を誘発しうる事業に対する支払意思額等に関するアンケート調査を実施し、支払判断の要因分析を実施する。

(6)農村活性化モデルの展開方法に関する研究

 (1)~(5)の分析結果を十日町市と共有し、農村活性化モデルの他地域への展開方法等について、地域の意見等も踏まえて検討し、提言をまとめる。

期待される成果

 十日町市の事例において、農村活性化事業による高齢者の健康維持や介護予防に効果があることが実証され、モデル化が理論的に示されれば、新たな農村活性化施策の展開に資する。

お問合せ先

農林水産政策科学研究委託事業推進事務局

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