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農林水産政策研究所

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主要国の農業政策・貿易政策の変化及びそれを踏まえた中長期的な世界食料需給に関する研究(プロジェクト研究)

1.研究の背景

  世界各国は、それぞれの国内状況と国際情勢を踏まえて、様々な農業政策を実施している。特に影響の大きい米国やEUを始め、主要な国・地域の政策に関する情報収集と分析は、我が国の農業政策を検討するための基礎的な資料として、重要な意義を持っている。また、我が国の食料と経済が大きく依存する国際貿易に関しては、先進国と開発途上国の間の対立が深刻化してWTO貿易交渉が停滞する一方で、各国が個別に締結する貿易協定が増加するなど、制度的枠組みが複雑化している。加えて、近年の米中貿易紛争が世界貿易全体に影響を与えてきている。

  食料需給では、世界の食料市場の規模が拡大する状況下で、国際的なフードシステムの変化が生じている。また、世界的な社会経済環境も不確実性が増している。特に近年、経済発展と人口増加を背景に開発途上国を中心に食料需要が増加する一方で、南米や旧ソ連諸国など新興の輸出国からの食料供給が顕著に増加するという構造変化が注目される。さらに、より長期的な期間に着目すると、気候変動や、土地・水・エネルギー等の資源制約が、食料需給に与える影響が懸念される。

  これまで農林水産政策研究所では、農業政策立案の観点から重要となる国・地域を対象とした農業情勢と関連政策の分析と国際食料需給の分析を実施してきた。この研究プロジェクトでも、これまでに蓄積された知見を活用しながら、世界の主要国・地域の農業情勢及び関連政策の調査研究を行う。そして、国・地域別の知見と定量的な食料需給予測の連携を深め、より的確な需給見通しの策定に努める。

  さらに、多くの国々が共通した課題に直面するようになっている現状を踏まえ、各国・地域単独での分析に加えて、関連した複数国を横断する課題を設定し、各国の政策や関連状況を比較・分析する。

  以上の研究は、世界各地で新型コロナウイルス感染拡大がもたらしている多大な影響を十分に踏まえて実施する。

2. 研究内容

(1)主要国農業政策・貿易政策研究

  我が国の農業政策立案に資するために、政策把握の重要性、国際食料市場への影響の大きさ、世界的な食料問題における重要性等の観点から調査研究の対象国・地域を選定し、地域別チームを組織して、各国・地域の農業・貿易状況と関連政策、主要農産物の需給等について最新の動向を把握する。

  また、各国の農業政策や農業・食品産業の状況に関連した共通テーマを設定し、各国横断的な分析を行う。具体的には、以下のテーマを取り上げる。

1)農村振興政策に関する研究

  我が国では食料・農業・農村基本法を制定し、農業の活性化や持続可能な農業構造の実現に向けて、農業経営規模の拡大や法人化などに一定の進展が見られる。農村地域は農業生産活動やそれを通じた多面的機能発揮の基盤であり、そのコミュニティ機能や地域資源の維持活動が十分に発揮されることが重要である。近年、都市部に先駆けて進行している高齢化や人口減少などにより、農村振興が一層重視されるところである。

  同様に2000年頃から共通農業政策の農村振興に関連した政策を、第二の柱として再編して実施しているEUを始め、我が国とは問題意識のあり方は異なるとしても、農村振興を課題として取り組んでいる国・地域は少なくないと考えられる。我が国の今後の政策展開を考える上での参考となると考えられる、そうした海外の農村振興政策の考え方や施策について情報を収集し整理することを目指す。

2)食料貿易に関する研究

  我が国をめぐる食料のフードシステムが変化する中で、輸出市場としても関心の高まる東アジア・東南アジア地域の諸国を主な対象として、食料貿易の構造とその変化を解明する。特に、加工食品など、日本からの輸出が期待される品目を中心に、その貿易フローと各国の輸出競争力の現状と変化に着目して、統計の整理・分析を行う。

(2)世界食料需給分析

  平成20年度以来、農林水産政策研究所で開発・利用している「世界食料需給モデル」の更新・改良を継続するとともに、上記の「(1)主要国農業政策・貿易政策研究」で得られる各国の農業・農政に関する知見も併せて活用し、10年後の世界の食料需給見通しを行う。

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