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農林水産政策研究所

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農山村の持続性確保に向けた新たな動きに関する研究(所内プロジェクト研究)

1. 研究の背景

  農山村地域においては人・土地・ムラの空洞化が進行しており、その根底には誇りの空洞化が言われるようになって久しい。

  1960年代、都市部を中心とした経済発展により、農業と他産業との間の格差(生産性や生活水準等)が発生し、農業基本法の制定や地域内の均衡ある発展、農山村と都市の格差是正を求めた総合開発計画等(公共投資による格差是正)により、ある程度の格差は是正される方向へ進んだ。しかしながら、これらはある意味農山村の都市化を促したに過ぎず、農山村が従来から保有していた誇りが失われる契機にもなる一方、農業・農村の多面的機能論を生み出すもとにもなっている。このような状況の下、1980年代のグローバリゼーションの進展により地方の工場の海外移転が進むなか、第四次全国総合開発計画(四全総)ではリゾート開発を展開するも、バブル経済崩壊により頓挫する。これら外部資本による開発への反省から地域づくり運動が進展し、2000年代以降は田園回帰、関係人口の動きが顕在化しつつあるが、まだ大きな動きとまではなっていない状況である。

  一方、農山村だけではなく、日本全体を振り返ってみても、世界で類を見ない深刻な少子高齢化が進む中、都市部への人口の偏り、富の偏りとも言える相対的貧困人口の増加、環境問題の深刻化、資源の制約等が懸念され、このような全体的状況の中における我が国農山村の位置づけ・役割が改めて問われていると言えよう。

  このような農山村をめぐる情勢を踏まえ、現在農林水産省においては、農村発イノベーションを推進しており、本研究においてもその推進に役立つ研究成果を目指すこととする。

  まず、第1にイノベーションを起こす前提となる人の空洞化への対策として農山村に若者を呼び込む手法を検討する。若者が農山村に移り住む価値があると考える仕事に関し、(1)持続可能で、(2)自然・環境にやさしく、(3)農山村社会と共生可能なものであることを仮説として設定し、それらに該当する仕事として、有機農業、森林(自伐型林業)、地域エネルギー等を例として、その実態調査を行う。

  また、第2に「自助」、「公助」が困難となりつつある農山村における「共助」に関する新たな動きを把握する。

  なお、我が国全体において農山村が今後果たすべき役割を考察するため、現在の農山村をめぐる問題点等も併せて整理する。

2. 研究内容

(1)農村発イノベーションの推進に関する研究

有機農業、自伐型林業、地域エネルギーに関し、その実態調査を有識者の講演を含め行い、その全体像、将来像の解明への道筋を検討する。

特に有機農業については、緑の食料システム戦略を踏まえ、その将来像の確立に向けたボトルネック(生産、流通、需要(学校給食等への供給手法等)等)の解決手法等に関する検討会を有識者の先生方と立ち上げ、検討を行うこととする。

また、農山村が今後果たすべき役割を考察するため、現在の農山村をめぐる問題点等を整理する。

(2)共助に基づく地域農業問題の解決に関する研究

  共助に基づく地域農業問題への対応状況について、人口急減地域で設立される特定地域づくり事業協同組合を対象とし、その設立経緯や制度的特徴等について、文献調査や実態調査を行い、地域農業へ若者を呼び込む効果や定着に向けた課題を検討する。また自治体の支援を得ながら地域住民によって設立・運営される地域運営組織や、地域貢献を行う一般企業やNPO法人等による地域貢献活動について、文献調査と実態調査を行い、それらが地域農業活性化や若者の移住・定住化支援にどのように貢献できるのかを明らかにし、その課題も検討する。なお、より広い知見から研究を推進するため、地域づくり分野等に精通する有識者を招いた研究会も適宜開催する。

お問合せ先

企画広報室広報資料課

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