我が国の持続的で多様な農業に関する研究(連携研究スキームによる研究)
1. 研究の背景
農山村地域が抱える深刻な高齢化や人口減少により、農業生産者は減少し生産活動への支障が顕在化している。また地域から商店や医療施設、教育機関などが撤退することで住民の生活に支障をきたしている地域もみられる。これらの状況下で地域コミュニティそのものの衰退が懸念されていることから、地域住民に加え、田園回帰や関係人口の増加の動きもとらえた農山村への人の流れを促進し、後継者や新規就農者も確保しつつ農山村地域での農業生産力の維持・強化が喫緊の課題となっている。
このように農山村の衰退が懸念される一方で、近年、農山村を志向する移住希望者や農林業に関心を持つ都市住民に増加傾向がみられるが、そのような者は、有機農業、持続可能性や環境負荷が少ない生業を求める傾向が強く、それまでにない農産物や販売形態で産地を形成している例もみられる。また我が国においては有機JASなどの認証制度を用いた農産物に加え、従来から、産地と消費者を直接つなぐ提携運動や生協組織を通じた販路などが存在し、特別栽培や有機農産物認証基準に準ずる栽培をしながらも認証を受けずに販売する農家も存在する。このような者は、令和3年5月に公表された「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどり戦略 」)で述べられた持続可能な食料システムを構築する大きな一翼を担うと考えられる。加えて持続可能な食料システムには有機農業等の環境保全型農業のみならず、圃場周辺の生物多様性の保全にも配慮した農業も含まれ、様々な地域で様々な主体が様々な目的・背景をもってこれまでも取り組んできたところである。
以上のような経緯を踏まえ、有機農業等の環境保全型農業の全体的な発展に向けた研究とそれを受けた施策の展開には、農法の普及のみならず、生産者・生産グループや地域での取組の背景を把握することが不可欠であり、そのことがみどり戦略で定められた目標・KPIや、17のゴールで代表されるSDGs(持続可能な開発目標)の目標達成に資すると考えられる。
2. 研究内容
令和5年度は、有機農業等の生産者規模等について全国的な動向を統計データを用いて把握しつつ、国内各産地での取組の現状やこれまでの経緯を把握し、さらなる展開のための課題を抽出する。また最終年度に全体を統一的に分析するフレームワークについて既存文献のサーベイを行うとともに、有機農業等に取り組む農業者への具体的な支援策を提示する。
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