自然資本の利活用と農山漁村づくりの構築による食料システムを支える持続可能な農山漁村の創造に関する研究(プロジェクト研究)
1. 研究の背景
令和3年5月に示された「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどり戦略」という。)では、農林水産業の生産者の減少や高齢化の進行によって生産活動への支障が顕在化し、また地域コミュニティの衰退が懸念されていることから、田園回帰や関係人口の増加などの動きをとらえた農業生産力の強化が課題であるとした。農山漁村に豊富に賦存する土地や水、生物資源や森林資源などの「自然資本」の持続性には危機が迫っており、早急かつ大胆な取組が求められている。食料・農林水産業の脱炭素化、化学農薬・化学肥料の低減等の環境負荷軽減に取り組み、自然資本の持続的な利活用や環境調和型の生産を可能にすることは、将来にわたる食料の安定供給や食料・農林水産業の発展などに資するとともに、地域資源の活用・地域社会の活性化を通じた、経済・社会・環境のバランスのとれたSDGsモデルの達成などにつながるものである。また新型コロナウィルスの感染拡大で、我が国や欧米諸国では農山漁村への関心を持つ都市住民も増加している。
「みどり戦略」が目指す「食料システムを支える持続可能な農山漁村の創造」に向け、我が国での自然資本の利活用は現状ではなお局所的なことから、これを全域的に拡げることが必要であり、自 然資本の違いや地域性などを考慮した持続的な自然資本の利活用と経済・社会・環境のバランスのとれたSDGsモデルの達成を目指す農山村づくりの構築をどのように支援するか、各地の代表的事例を対象とする実態調査等に基づく実証分析で明らかにする必要がある。
2. 研究内容
(1) 持続的畜産の動向と促進方策に関する研究
1) 持続的畜産に関する分野、特にアニマルウェルフェアの専門家を講師とする勉強会を開催し、持続的畜産に関する情報を収集する。また、『銘柄牛肉ハンドブック』等のデータ分析により、持続的畜産に関する情報発信の動向を把握する。
2) 特徴的な持続的畜産経営を行う経営体へのヒアリング調査や統計データ分析を通じて、取組を推進する上での課題と必要な方策を解明する。
3) これまでの成果をプロジェクト研究資料にとりまとめるとともに、国内外各学会での報告及び所報や学術誌への論文投稿を行う。
(2)自伐林業及び自伐型林業等の小規模林業の実態把握と地域社会への影響分析等に関する研究
1) 自伐林業及び自伐型林業等の小規模林業について、全国の自治体での推進状況、活動内容、活動人数、地域への影響等について、令和5年度に実施した各自治体への意向調査の分析を継続し、実態を把握する。
2) 1)の意向調査の結果などを踏まえ、活動実態、作業フィールドの確保手法、自伐型林業者と山主との関係、兼業実態・収入、経営実態などを現地調査することにより、自伐林業及び自伐型林業の成立要件等を検討するとともに、地元に密着した小規模林業の各地域における実態を把握し、小規模林業が当該地域に与える影響や課題を検討する。
(3) 農山村の持続的発展に向けた農村RMOの役割と課題に関する研究
1) 農地保全、地域資源活用、生活支援に取組む農村RMOの現地調査を行い、組織の設立に至る経緯や現在の活動状況を分析し、その発展条件や課題を解明する。
2) 6次産業化、移住定住者の受入、農泊、農福連携などで農村活性化を図る地域的な取組みを実践するNPOや、地域貢献に取り組む集落営農などの現地調査を行い、農村RMOとの連携や農村RMOへの発展の可能性を検討する。
3) 行政部局主催の農村RMOの推進勉強会に参加する。農村RMOに関する研究成果について適宜行政部局と共有を図る。
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