主要国における農業政策の改革の進展とそれを踏まえた中長期的な世界食料需給に関する研究(プロジェクト研究)
1. 研究の背景
世界各国は、それぞれの国内状況と国際情勢を踏まえて、様々な農業政策を実施している。EUでは、2023年から新たな共通農業政策が導入され、持続可能な農業生産という観点からも農業政策の改革が進められているところである。他方、中国では、食糧安全保障を重視し、構造改革以上に生産確保を優先する傾向が強まっている。また、国際的な食料需給では、新興国・途上国において継続する需要増加に対して、南米等から輸出が拡大して主要輸出国が偏在化するという構造変化が注目される。さらには、ロシアによるウクライナ侵略や新型コロナウイルスの世界的な感染拡大等による世界の食料サプライチェーン不安定化等食料需給に影響を与える不確実性が高い要因が生じている。
農林水産政策研究所では、これまでも我が国の農業政策の立案や食料需給の観点から重要となる国や地域を対象として、農業政策・貿易政策や主要農産物の需給動向の把握・分析を、世界食料需給分析と連携しながら行ってきたところである。今後も主要国における農業政策の改革は引き続き行われるとともに、世界の農業生産や食料需給に影響を与える不確実性の高い事象が絶えず生じていることから、この研究プロジェクトでも、これまでに蓄積された知見を活用しながら、主要国の農業政策や食料需給の動向を継続して分析する。その際、政策立案に資する有効な知見を獲得するために、地域や課題のまとまりを捉えて、各国間の相互関係も考慮した各国横断的な分析も継続して実施することが重要である。また、世界食料需給分析についても、より的確な需給見通しの策定のため、主要国の動向分析における知見を活かしながら、食料需給に影響を与える不確実性の高い要因等に対応した需給予測モデルの改良を図りながら実施する。
2. 研究内容
(1)主要国の農業政策・需給動向の把握・分析
我が国の農業政策の立案や食料需給の観点から重要となる、EU、英国、ロシア、アルゼンチン、中国、インド、ASEANやアフリカ諸国などを対象として、各国・地域の農業政策・貿易政策や主要農産物の需給動向の把握・分析を、世界食料需給分析と連携しながら行う。
また、各国横断的な分析を以下のテーマを取り上げて行う。
1)持続的食料システムの構築に関する国際比較研究
各国では、食文化等により消費者が求める食品の特徴が異なり、近年、有機農業の発展、新たなタンパク資源の利活用等の持続可能性への志向から食料消費の変化も見られる。これらの状況を踏まえ、各国の長期的な食料消費の変化に繋がる食生活・食文化の変化を把握するとともに、食料システムの地域性(固有性)を整理する。そして、各国の持続的食料システムの構築に向けた多様なアプローチと課題を解明することを通じて、我が国における「みどりの食料システム戦略」の実現に寄与することを目指す。
(2)世界食料需給分析
農林水産政策研究所で開発した世界食料需給モデルの更新・改良、モデル構築に関わる改修を図りながら、中長期的な需給予測や予測の前提となる与件の変化に対応したベースライン予測やシナリオを検討し、主要国の農業政策・需給動向の把握・分析と連携して、世界食料需給の見通しを実施する。
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