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農林水産政策研究所

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「農業分野における障害者就労と農村活性化」に関する研究成果の公表について

プレスリリース

平成22年12月3日
農林水産省

農林水産省(農林水産政策研究所)では、農村活性化に関する研究プロジェクトの一環として、平成21年度から、農業者と社会福祉法人、NPO法人等が連携した取組が、地域の就労や農業生産に及ぼす影響に関する調査研究を行っており、今回、その初年度の研究成果を取りまとめました。

1 研究の背景

近年、社会福祉法人、NPO法人等の農業分野への進出等によって、農業分野における障害者就労が、拡大していると見られます(注1)。障害者就労の作業内容を公表している道県のデータによれば、農業に取り組む福祉施設が3割前後を占めています。
本研究では、農業分野における障害者就労について、インターネット検索等により事例を収集し、その特徴を整理した上で、実態調査を行い、実態把握と取組の地域社会・農業への効果、今後の課題を分析しました(注2)。

2 研究の概要

実態調査では、社会福祉法人等が、農作業が障害者の身体、精神にも良い影響があるということで農業を始めた例が多く見られます(注3)。こうした施設では、近年は、障害者の収入を高めるための就労活動、地域の農業を守る社会貢献の活動として、次第に農業への取組を本格化させています。
しかしながら、こうした社会福祉法人等では、その取組の当初において、農業に関する知識不足等から数々の問題を抱えていました(注4)。しかし、その後、先進的な取組では、地域の農業者と福祉関係者が連携することで、お互いの知見、設備等を有効に活用し、こうした課題を解決してきています。

その結果として、障害者とそれをサポートする福祉施設の職員が、福祉行政のもとで、農業分野で多数就労しています。障害者が、高齢化した農家の農地を活用して農業に取り組んだり、農家を援農したりと、地域の農業生産に貢献しているのも特徴です。さらには、豊富な労働力を活かして、農産物の直売や加工・調理に多角的に取り組みながら、地域の農業者や消費者と積極的に交流する例も見られます。

3 結果・考察

今後、地方では、地域経済が停滞する中で、雇用等の場の確保が困難な状況が続いており、社会福祉法人等の農業分野への進出・拡大や多角化が増加すると見込まれます。また、農業者の高齢化が進み、農業生産者の不足も深刻化していくと考えられます。
このため、社会福祉法人等の農業分野への進出が、地域における就労の場の拡大や農業生産の維持・拡大に結びつくよう、農業と福祉が連携し、農業分野における障害者就労の課題を解消していくことが、今後、益々重要になっていくと考えられます。

注1 社会福祉法人、NPO法人等による農業分野の取組の全体像は、これまで明らかになっていません。本研究では、全国社会就労センター協議会のデータベースに基づいて、取組が増加傾向にあると見込んでいます。同協議会のデータベースによると、障害者が行う作業品目に「農耕」をあげる施設・事業所は、平成19年では671施設、平成22年では711施設(全体の約2割)と増加しています。

注2 本研究を始めるにあたって収集した事例は、約300件です。本研究では、これらを3分類しました。その内訳は、(1)一般農家・農業生産法人等が約160件、(2)社会福祉法人・NPO法人等が130件、(3)特例子会社が10件となっています。これらは、1958年以降の取組で、法人化した事業体によるものが中心です。本研究では、上記3分類のなかから、平成21年度に(1)8件、(2)9件、あわせて17件の事例について実態調査を行いました。このうち、就労者数の多い取組については、下記アドレスで紹介している実態調査報告書に取組内容の詳細を記しています。

注3 実態調査を行った社会福祉法人・NPO法人9事例のうち、6事例が該当します。

注4 例えば、農業技術や農業経営に関する知識の習得、農業機械・設備の整備に問題を抱える事例が散見されます。また、農地制度に対する知識不足や関係者間の合意形成の難しさ等から、農地の確保で困難を抱える事例も見られます。

4 その他

実態調査の詳細につきましては、農林水産政策研究所のホームページで紹介しています。
https://www.maff.go.jp/primaff/seika/nosanson/nofuku.html

<用語の解説>

  • 社会福祉法人:生活保護や児童福祉、老人福祉、障害者福祉等の社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づいて設立された法人です。本研究では、障害者自立支援法並びに旧法に基づいて、障害者の就労支援等を行っている社会福祉法人を指しています。
  • 特定非営利活動法人(本報告でいうNPO法人):保健、医療、福祉、社会教育、文化、環境等の様々な分野において、ボランティア活動や市民が行う自由な社会貢献活動を行う団体に付与される法人格です。特定非営利活動促進法に基づいて設立されます。一般には、NPO法人ともいわれています。本報告では、障害者福祉に関する社会福祉事業を行う特定非営利活動法人を指して、NPO法人と呼んでいます。
  • 農業分野における障害者就労:本研究では、知的障害者と精神障害者を中心に様々な障害者の取組を対象として調査を実施しています。本報告では「農業分野における就労」や「農業の取組」に、農業生産活動のみでなく、職業訓練等における農作業も含めて整理しています。

<添付資料>(添付ファイルは別ウィンドウで開きます。)

お問合せ先

農林水産政策研究所

担当者:政策研究調整官 吉田、高岸
代表:03-6737-9000(内線254、262)
ダイヤルイン:03-6737-9028
FAX:03-6737-9098

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