農業大学校に求められる新たな役割―非農家出身者や雇用就農希望者の増加への対応が急務―

  道府県農業大学校（42校）校長へのアンケート結果では、想定している育成人材像の第1位を「親元就農者」とした大学校が7割強を占めており、設立当初の教育理念（後継者としての農家子弟の育成）が今もなお根強く残っている様子が窺えます。

  他方で、農業大学校の入校者は、今では非農家出身者が6割を占めるまでになっていますが、農業法人の増加によって雇用就農の環境が整ってきたことから、非農家出身者の就農率は10年前に比べ大幅に上昇しています（図）。

  このため、現在の農業大学校には、増加する非農家出身者や雇用就農希望者に対応した農業教育・就農支援が求められています。農業大学校の卒業生を採用している農業法人のヒアリング調査結果からは、農大生を雇用するに当たっては農業技術の取得とともに、社会人として働いていくための協調性やコミュニケーション能力を強く求めていることが分かりました（表）。 

図  自家職業別の卒業後進路の比較（養成課程卒業者）

 

表  農業大学校の卒業生を雇用している農業法人からのヒアリング結果（平成30年度調査）

農業法人名	山形：（株）F	山形：（有）G	埼玉：（株）K	福岡：（株）G	福岡：（株）H
取り組む事業 従業員数 経営耕地面積 取り組む作物	農産物生産，育苗販売 4名 44.2ha 水稲，桜桃，リンゴ，花卉等	花卉生産，加工，直売，卸売 30名 38,049m2 花卉全般	農産物生産，卸売，作業受託 35名 75ha 加工用野菜（契約栽培）	農産物生産，直売 3名 80a レストラン向け葉物洋野菜等	農産物生産，直売 218名 27ha（うち養鶏1ha） 野菜，果樹，養鶏
正社員採用時に 重視している点	・人柄 ・意欲・熱意 ・コミュニケーション能力	・意欲・熱意 ・コミュニケーション能力 ・現場監督能力	・人柄 ・コミュニケーション能力 ・経営者目線	・専門性の高さ ・人柄 ・現場監督能力	・体力 ・意欲・熱意 ・コミュニケーション能力
農大生に不足 している能力	特にない	特にない	・農業の基礎的知識・技術 ・経営に関する知識 ・集団生活のマナー	・農業の基礎的知識の強化 （応用が利くようにしてほしい）	・一般教養
職員採用した農大生 に求めるキャリア	・経営管理リーダー ・独立	ー	・農場長 ・会社幹部 ・独立	・各生産部門のリーダー ・会社幹部 ・分社化	・農場長 ・会社幹部 ・業務拡大担当者
大学校での教育に 求めること	・一般教養の強化 ・社会人基礎力の強化	特にない	・農業技術面の強化 ・一般教養面でのレベルアップ ・地域との連携強化	・社会人基礎力の強化 ・農業法人社員向け研修機会の提供	・農業技術面の強化 ・経営学の強化 ・社会人基礎力の強化

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