「Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略」にみるEUの有機農業拡大に向けた課題と今後の展開の方向性
2020年5月に欧州委員会が公表した「Farm to Fork戦略」(以下「F2F」)は、持続可能な経済社会に向けた包括的な構想である「欧州グリーン・ディール」を実現するため農業部門において核になる戦略です。
F2Fにおいては、生産から消費までのフードシステムを公正で健康的で環境に配慮したものにすることを目指して、多くの分野で野心的な目標等が示されています。その一つとして「2030年までに全農地の25%を有機農業とするための取組を後押し」するとの目標があります。実績値を踏まえ三つのシナリオを基に試算した結果(図表)、目標実現に向けては、増加ペースの大幅な加速が必要であることが明らかとなりました。EU域内全体として、消費・生産両面から、いかにバランスある発展を拡大的に実現していくかが課題です。
今後、市場環境整備等の適切な制度設計、消費者からの信頼確保や生産意欲の増大等に向けた支援施策の充実、CAP戦略計画(2023年開始予定の次期CAP下でEUの各加盟国が示す農業政策上の具体的計画)を通じた効果的な政策運営の実施等が必要と考えられます。
図表 EU27か国の有機面積割合「25%目標」と増加率3ケースの試算 |
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2027 | 2030 | |
2012年から19年までの増加率年平均(5.42%)継続時 | 8.5% | 9.0% | 9.4% | 9.9% | 10.5% | 11.1% | 11.7% | 13.0% | 15.2% |
2012年以降の年最大増加率(2015年から16年)(8.08%)継続時 | 8.5% | 9.2% | 9.9% | 10.7% | 11.6% | 12.5% | 13.5% | 15.8% | 20.0% |
2030年25%を達成するのに必要な年平均増加率(10.30%)継続時 | 8.5% | 9.4% | 10.3% | 11.4% | 12.6% | 13.9% | 15.3% | 18.6% | 25.0% |
資料:Eurostat,Devuyst(2020)を基に算出の上、作成。
注. 2020年以降の試算値を用いるに当たって使用された数値のうち2019年の数値は見込み値。
この成果の詳細については、農林水産政策研究所Web サイトをご覧ください(以下参照)。
- 令和2年度カントリーレポート
プロジェクト研究 [主要国農業政策・貿易政策] 研究資料 第5号(2021年3月)
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/project/attach/pdf/210331_R02cr05_02.pdf
- 農林水産政策研究所レビュー No.101(2021年5月)
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/210531_pr101_03.pdf
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