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農林水産政策研究所

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英国の食料安全保障と外国人農業労働力―新たな移民制度・労働政策やウクライナ情勢等を踏まえて―

1. 2021年12月公表の「英国食料安全保障報告書(UK Food Security Report 2021)」は食料安全保障に係る包括的レビューを行い、この中では「サプライチェーンの強靭性」として適切な量・技能レベルの労働者を十分に確保することが農業・食料部門にとって重要な課題であることが強調されています(表)。

2. 他方で、2021年1月から英国では新たな移民制度が導入され、未熟練労働者が就労ビザで英国において就業することは一部例外を除き原則としてできなくなっています。これにより、労働集約的な果樹・野菜部門からは収穫期等における労働力の供給不足懸念が示されており、厳格な移民制度の例外として、同部門においてパイロット事業として限定的な数の季節労働者の受入れを認めるスキームが導入されています。
   新技術・自動化への投資を促進し安価な外国人労働力への依存を低下させるとの英国政府の基本方針との整合性からみると、今後このパイロット事業の動向に注視することが必要と考えられます。

3. また、このパイロット事業の対象労働者の出身国をみるとウクライナが圧倒的多数を占めています(2021年は全ビザ発行数の約8割)。今般のウクライナ情勢を踏まえ、英国政府はウクライナ出身労働者が特例的に英国での長期の就業が可能となる措置を講じ労働力の確保に努めているところです。


  表  「サプライチェーンの強靭性」のポイント 
サプライチェーンに対する注目すべきリスクは、労働・エネルギー・輸送・国境・データ通信、その他鍵となる投入財(化学品・添加剤・原料)等他の重要部門への依存から生じる。
適切な量・技能レベルの労働者を十分な量確保することは農業・食料部門にとって重要な課題
・これからの課題は短期・長期両面からの課題であり、英国経済全体が直面するより広範な課題と相互に連関して、英国のフードサプライチェーンに脅威
・これらの課題の一部として、COVID-19による労働確保面への継続的な影響、農業における季節労働者やフードチェーンにおけるEU出身の熟練労働者への依存等が挙げられる
・COVID-19パンデミックを含め数多くの圧力が英国のフードサプライチェーンに幅広く影響
・しかし、政府に支援された産業界主導の対応により、サプライチェーン継続のための影響緩和策が講じられ英国のサプライチェーンに強靱性があることを示した

資料:英国食料安全保障報告書を基に作成


この成果の詳細については、農林水産政策研究所Web サイトをご覧ください(以下参照)。

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企画広報室広報資料課

ダイヤルイン:03-6737-9012

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