水田からのメタン削減に貢献する長期中干し実施をナッジで後押し
1. 日本において、温室効果ガスであるメタンの排出量の約8割は農業由来であることから、農業分野(特に稲作)での削減努力が重要です。技術的には、水田の中干しの期間を一週間延長することで、平均的にメタンの発生量を約30%削減可能であることが知られています。この技術をいかに広く普及させていくかが政策的に重要な課題となっています。
2. そこで、本研究では、滋賀県と協力し東近江地域の稲作農家約10,000人を対象とした大規模なランダム化フィールド実験*により、稲作農家がどのような形で情報を受けると、メタン削減効果の高い長期中干しを選択するのかについて検証しました(図)。
*ランダム化フィールド実験とは、政策や情報が供与される介入群と供与されない対照群をランダムに振り分け、介入後に計測された平均的な結果指標の差を対照群と介入群で計測することで、介入の効果を実地で計測する分析手法です。
3. 本研究では、提供する情報に「ナッジ」の考え方を応用しました。ナッジは、単純な情報提供による普及啓発とは異なり、人間の心理や行動特性を踏まえた表現や仕掛けを活用して行動変容を後押しすることが特徴で、近年、政策利用が進んでいます。
4. 実験の結果、私たちが他の人の行動をとても気にするという特性(社会規範・同調性)を利用したナッジのグループ(介入群1:図参照)では、2023年度から長期中干しを実施した人が多かったことが分かりました。さらに、集落営農参加者に限定して詳しく調べると、このナッジの効果がよりはっきりと確認できました。
図 滋賀県で実施したランダム化フィールド実験の概要 |
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