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農林水産政策研究所

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化学肥料価格上昇は国際小麦価格を不安定化させることが予測

1. 本研究では、化学肥料価格(尿素、リン酸二アンモニウム、重過リン酸石灰、カリウム)の上昇が世界小麦需給に与える長期的影響予測を行い、化学肥料補助金が国際小麦価格変動に与える影響について部分均衡需給予測モデルを用いて影響試算を行いました。

2. 「世界小麦経済気候変動モデル」(WECCモデル)は世界主要小麦生産国・地域(12か国・地域)を対象としています。基準年は2019~2021年の3か年平均であり、2040年までの各国・地域における生産量、消費量、輸出量、輸入量、期末在庫量、国際価格、国内価格を予測しました。
ベースライン予測では、予測期間中(2022~2040年)、現行の経済政策及び農業・貿易政策等が全ての国・地域において継続することを前提としました。また、化学肥料価格予測値として、World Bank (2021)の予測値(2022~2035年)を適用しました(2036年以降は2022~2035年の平均変化率を適用)。さらに、2022年以降のインドの化学肥料補助金水準は2015~2020年の年平均変化率で下落することを前提としました。
本研究では、以上のベースライン予測に対して、複数の代替シナリオを設定しました。まず、シナリオ1では、World Bank (2022) の化学肥料価格予測値(2022~2024年)を前提としました(2025年以降はベースライン予測の年平均変化率を適用)。つぎに、シナリオ2では、シナリオ1の化学肥料価格の予測値を適用し、インドの化学肥料補助金水準を2022年以降、維持する前提としました。さらに、シナリオ3では、シナリオ1の化学肥料価格予測値を適用し、2022年以降のインドの化学肥料補助金水準が2012~2020年の年平均変化率で下落することを前提としました。

3. 本研究では、ベースライン・シナリオ予測とも、化学肥料価格の上昇が各国の国内小麦生産者価格に対する化学肥料価格比の上昇を通じて、小麦生産における各化学肥料使用量の減少、小麦の単収を減少させることにより、小麦生産量の減少につながる結果となりました。また、全てのシナリオで化学肥料価格の上昇は国際小麦価格を上昇させ、価格が不安定化する予測結果が得られました(表参照)。そして、化学肥料価格上昇により、本研究が対象とする主要小麦生産国・地域の中でインド、ウクライナに最も大きな影響を与えることが予測されました。さらに、インドの化学肥料補助金の現行水準の維持は国際小麦価格の安定に寄与することが予測結果から得られました

表  ベースライン・シナリオ別国際小麦価格変動係数(2019/21~2040年)表  ベースライン・シナリオ別国際小麦価格変動係数(2019/21~2040年)
(引用データ)World Bank (2021) Commodity markets outlook, urbanization and commodity demand, World Bank (2022) Commodity markets outlook, the impact of the war in Ukraine on commodity markets.
(注)変動係数とは標準偏差を平均値で割った値であり、値が高いほど大きく変動することを意味。


この成果の詳細については、農林水産政策研究所Web サイトをご覧ください(以下参照)。

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企画広報室広報資料課

ダイヤルイン:03-6737-9012

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