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農林水産政策研究所

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エルニーニョ/ラニーニャ現象を背景としたアルゼンチンの経済・社会的苦境と政権交代

1. アルゼンチンにおける経済・社会的苦境の実態
   アルゼンチンでは2023年までの数年間、次のような経済・社会状況の急速な悪化がみられた。
・経済成長率(実質GDP成長率(通年))が3年ぶりにマイナスに転落見込み。
・大干ばつ(2022/23年)による主要穀物等(小麦、とうもろこし、大豆)の生産量、輸出額や外貨獲得額の大幅な減少並びに農牧林業部門実質GDPの6四半期連続のマイナス成長(2023年第2四半期、農林牧畜業のみマイナス40.1%の大幅下落(農牧水産業は外貨の稼ぎ頭(全体の2/3))。
・対米ドル為替レートの大幅な下落(177 → 828ペソ/USD(公式レート))と外貨購入制限に伴う輸入制限によるインフレ率(消費者物価指数の対前年比)の急騰(95% → 211%)。

2. エルニーニョ現象/ラニーニャ現象による農業への影響
 2022年から2023年にかけて、連続して発生したラニーニャ現象のもと、アルゼンチンにおいて過去60年で最悪の干ばつが発生、穀物や油糧種子などの農産物は大幅な減収となった。近年、「気候危機」とも呼ばれる気候変動を背景とした異常気象(エルニーニョ現象/ラニーニャ現象など)が激甚化、それに相対して気温、降水量などの数値も極端な変動をみせ、異常気象が農産物の豊作、不作に直接的かつ極端に影響するようになった。
 傾向としてアルゼンチンは、エルニーニョ現象期間で降水量が増大、ラニーニャ現象期間で降水量が減少する傾向。例えばラニーニャ現象期間でアルゼンチンは、とうもろこし輸出量が対前年比で半減、一方、降水に恵まれたブラジル輸出量は約3倍増加した。エルニーニョ現象期間に入った2022/23~2023/24にかけ、天候が回復したアルゼンチンはとうもろこし輸出量が対前年比で2倍増加、ブラジル輸出量は減少傾向にある(第1図)。

3. 異常気象、経済・社会的苦境下の2023年アルゼンチン大統領選挙
 異常気象(エルニーニョ現象/ラニーニャ現象など)を背景とするアルゼンチン経済・社会状況が急速に悪化する中、2023年11月、変革を求める有権者選択の結果、右派自由主義経済学者ハビエル・ミレイ氏が、与党候補を破り大統領に当選した。気候変動を背景とする干ばつ等の異常気象は、農産物を輸出するアルゼンチンやブラジルのような新興国・途上国に様々な経済・社会的苦境をもたらす要因となりうる。更に異常気象等の影響は、それら諸国の政権にも影響を及ぼすケースもあるため、我が国の穀物等の輸入相手国として、今後、食料安定供給に資する新興国・途上国の気象や経済・社会状況等を的確に注視する必要がある。

第1図 とうもろこし輸出国(アルゼンチン/ブラジル)の生産/輸出量
 第1図 とうもろこし輸出国(アルゼンチン/ブラジル)の生産/輸出量
資料:USDA PS&D,気象庁「エルニーニョ/ラニーニャ現象に関するデータ」から筆者作成。

この成果の詳細については、農林水産政策研究所Web サイトをご覧ください(以下参照)。

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お問合せ先

企画広報室広報資料課

ダイヤルイン:03-6737-9012

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