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北陸農政局

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フードディレクター・郷土料理研究家 佐々木京美氏 (福井県鯖江市)

更新日:令和3年11月30日

佐々木京美氏



農政局:

まず、佐々木さんはどのような取組をされているんですか。

佐々木氏:

最初は、地元の季節の食材とパンを組み合わせた「石窯体験教室」を開催しながら料理家としてのお仕事もさせて頂いていましたが、2011年より農林水産省の6次産業化プランナーとして県内の農業者や漁業者の方々と商品開発に取り組む中で、地域の食文化を残す大切さを痛感しました。

現在は、郷土料理研究家として、「黄金の梅」や「水ようかん」など福井の既存の産物や食文化を再構築してブランド化したり、伝統食材を使ったイベント等の料理プロデュースなど、「福井の食文化を次世代につなぐ」をコンセプトとして取り組んでいます。福井の食文化がどこまで通用するのか、食のアンテナの高い人たちに試してみたくて、雑誌やマスコミなどのメディアやライターに声をかけ東京で、暮らしに根付いた食文化の講座を行いました。また、新幹線延伸を見据え、福井の食を取材して頂くためのメディアツアーなど福井県の事業にも参画しています。

農政局:

地域の味を伝えていく難しさをどのように感じていらっしゃいますか。

佐々木氏:

福井では、過去には地域の人々が集まり料理をすることが多くて、その際には年長の女性に従い教えて頂いていました。調味料の分量や食材の切り方がその地域地域で決まっていて、それをその地域の人たちが役割分担しながら守ることで、味も最終的な形もブレないんですね。福井の女性たちは、自分を堪え、その土地に馴染みながら、自然と地域の味を守っていました。

当然、個々人の好みはありますが、アレンジは家庭ですればよくて、地域で料理するときは決められたやり方で行う。そうやって地域の味が変わることなく正しく伝えられ、その地の財産になってきたのだと思います。

農政局:

報恩講の料理もそうなのでしょうか。

佐々木氏:

報恩講もそのような形で続いてきましたが、今ではほとんど行われなくなっています。大きなお寺でも、高齢化で料理を作ることのできる人たちがいなくなっています。大野市の方でまだ料理しているところもありますけど、ご高齢の方々が多く、いつまで行われるのか心配です。

農政局:

水ようかんについても取り組んでいらっしゃるんですね。

佐々木氏:

福井では、冬に水ようかんを食べる習慣があります。それを、珍しい食習慣としてだけではなくて、福井の気候風土に裏打ちされた、庶民の甘味食文化として多くの人たちに伝えるべきだと感じていました。人口減で地元での消費が減り、各地域の個性的なお店が衰退する前に、付加価値を付け県外消費を増やす必要があるとも感じていました。首都圏での認知度が上がるように地道な活動を続け、現在では、大手百貨店でも恒例の催事となり、冬水ようかんとしてバイヤーさんも驚く売り上げ数となっています。ただ伝えるだけではなく、どのように伝えるか、誰を巻き込むかが、正しくじわじわと広がっていく大きなポイントだと感じています。

農政局:

その伝える難しさについて、もう少しお聞かせください。

佐々木氏:

地域の食、郷土料理と一口に言っても、ふんわりしていて何を伝えればいいのかわかりにくいと思います。これを崩さずに伝えることができるのは私たち世代が最後ではないでしょうか。大正や昭和1桁生まれの人たちから、その時代の暮らしぶりや作り方を直に教われたことで、その料理の背景をリアルに知ることができました。博物館にお椀やお皿は並べて後世の人たちに見てもらえますが、そこに盛られた料理は残せません。食には背景があります。レシピも重要ですが、その背景と一緒に伝えていかなければいけないと思いますし、まさにそれが「食文化」だと思います。そんな食の背景を知っている人が高齢化し、伝えて頂くことが難しくなってきています。背景とともに食文化を残すには、残された時間は本当に少ないと思います。

農政局:

地域の食文化を通して、伝えていくべきものは何だと感じていらっしゃいますか。

佐々木氏:

以前から、「何となく無くしちゃいけない」と感じていたんですが、多面的に見ていくと、日本の歴史や暮らしぶりと食文化はすごく関係が深いんです。歴史や日本人としてどう生活してきたかを汲んだうえで、料理を作ったり語ったりできることを、きちんと伝えていくことが重要ではないでしょうか。「ゼンマイの白和え」も、地元の山で採ってきたもので作るんですが、地域によってレシピも変わります。白和えに使う豆腐は、豆腐屋がある地域はそれを使いますが、谷の深いところでは、冬になると豆腐屋へ行けないので、大豆を戻して白和えにします。こうした料理の背景がなくなると、単なる料理になってしまいます。



発表会での様子
女性加工グループ新商品発表会にて

農政局:

そうした食文化の保護・継承のあり方について、どうお考えですか。

佐々木氏:

行政が和食の保護・継承に取り組んでいますが、レシピを収集して文献として残していこうという取組が多いような気がします。料理の背景と一緒に残していくことが大切だと思います。

さらには、その食文化にある技術、自然からの恵みをどのように利用して、何をどのように保存してどうやって食べてきたのかということも大変重要だと思います。貧しさの中で、心豊かに人をもてなす民衆の中で生まれた技も郷土料理の要素の一つではないかと思います。そうした背景や地域性、自然環境と一体的に見ていくことが重要だと思います。

農政局:

6次産業化のプランナーとして商品開発に携わられた際には、どのようにお感じになりましたか。

佐々木氏:

福井の代表的な食文化「へしこ」を支援したときです。周りの人からは「へしこなんて」というお声もありました。「へしこ」は原料のサバは国内外から調達し、材料も作り方も様々です。そこに港があって、そこで揚った魚を自分たちで捌き、近くの里山の米ぬか、そして塩と唐辛子だけで漬けた、シンプルながらも発酵の旨みが詰まった昔ながらのへしこもないと、いくらへしこが素晴らしいと言っても、説得力が無いと思い応援しました。支援した漁協の婦人部のみなさんからは、「へしこは自分たちにとって生きるための保存食だった」というお話を伺いましたが、このことも日本の過去を知り、未来に活かすために伝えられるべきです。

農政局:

そのような食文化を残していくうえで、どのような支援が必要だとお感じになっていますか。

佐々木氏:

現在の社会でちゃんとした「食文化」を残していくには、ハード面だけでは難しくて、人々の熱意と、それをどのように経済として回る仕組みとしていくかということがとても大切だと感じています。そのためにも、職人の方たちが作る日本料理と一緒に、その地域の自然とともにある普通の人たちが料理して食べている普通の料理、すなわち、家庭料理や郷土料理にも価値を見出して残していくための支援も必要だと思います。

農政局:

「食文化」が経済として回るためには、どのようなことが重要だと思いますか。

佐々木氏:

レストランや料理店がその土地の季節を先取りしたメニューを提供し、観光客などをもてなすことも重要だと思いますが、暮らしに根付いた食「家庭料理」も重要だと思います。福井は、油揚げ消費量が日本一で、「油揚げがあればなんとかなる」と言われるくらいなんです。油揚げと季節の野菜は、福井の家庭料理の定番です。こういう、季節とともに移り変わっていく食卓こそが、イタリアのアカデミーなどで言われるスローフードのことだと思います。
福井県の土台に、地域や家庭に伝わる食文化がきちんと根付いていることが重要だと思いますし、そうした福井の食文化をきちんと発信していけば、アンテナの高い人が福井に来てくれて、その人たちが福井の食文化を発信してくれる、さらには同じ価値観を持った人たちを誘って、再び福井に来てくれる。そういう広がりが素敵ですし、それが食文化が経済として回ることに繋がると思います。
私の役割は、こうした福井に来てくれる人たちが求めているものを、おばちゃんたちから引き出し繋いでいくことかなと思っています。その地域では当たり前のもの、そうした中に存在している食文化をきちんと見つけて残していきたいと思います。


もてなし料理 
昔からの食器を使った、郷土料理もてなし料理(佐々木京美氏HPより)

農政局:

最後に、メッセージをお願いします。

佐々木氏

その地域の食文化の成り立ちを敬意をもって知ることで、その地域の暮らしの文化が見えてきます。地域を再認識することが、この先も強くたおやかに続いていくためのヒントになるのではないかと思います。
海外の方々は、東京ではなく、地方のまだ知られていない食を探しています。食文化を深く理解していくと、まだまだ素晴らしいものが北陸にはたくさんあると思います。今後も、福井の食に魅了され、地域の食を未来に繋いでいく活動が出来たらと思っています。

農政局:

本日は、本当にありがとうございました。

プロフィール

佐々木 京美(ささき きよみ)鯖江市在住。
2011年~ 農林水産省6次産業化プランナー
2014~2016年、福井新聞社と福井県内各地を巡りながら、その地域ならではの食や風土を発見し、地元の本当の豊かさを再考する「福井フードキャラバン」を実施。
2014年、NHK今日の料理クッキングコンテスト2014地元盛り上げ料理部門最優秀賞「イカへしこそばペペロンチーノ」(越廻漁港ぬかちゃんグループ)
2015年、先刻マヨワングランプリ優勝「里芋グラタン味噌マヨつるつるいっぱい」(上庄里芋を使った料理)
2018~2019年、福井県主催福井食文化講座(開催場所:ふくい南青山291(東京都港区))講師
詳しい活動内容は、ホームページで URL https://www.sasakikiyomi.com/

お問合せ先

経営・事業支援部 地域食品・連携課

代表:076-263-2161(内線3995)
ダイヤルイン:076-232-4890
FAX番号:076-232-4178