VICHの活動
1 VICHとは
国際貿易の進展に伴い、動物用医薬品の承認基準のハーモナイゼーションが求められてます。「動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力(VICH)」は、1996年に国際獣疫事務局(OIE)傘下で日米EU の三極の規制当局及び企業代表をメンバーとして組織され、動物用医薬品の承認申請資料の共通利用を通じて開発費の削減や承認審査の迅速化することで、臨床現場への安価かつ迅速な動物用医薬品の供給を図っています。
VICHでは、動物用医薬品の承認のための資料作成や承認後の動物用医薬品の監視のために必要な基準・ガイドラインの具体的な検討が進められています。動物医薬品検査所は、これらのガイドライン作成のために、運営委員会(SC)及び専門家作業部会(EWG)に職員を委員及びアドバイザーとして参加させるとともに、米国・EU で採用されている試験法と日本の試験法との比較試験の実施、日本に固有な動物種等の情報の収集等の作業を行っています。
詳細についてはこちら(出典:日本獣医史学会雑誌 第52号(2015年2月) p33-48)をご覧ください。
VICHメンバー
地域 | 規制当局側 | 業界側 |
日本 | 農林水産省 | (公社)日本動物用医薬品協会 |
米国 | US FDA – Center for Veterinary Medicine, USDA – Center for Veterinary Biologics | US Animal Health Institute |
EU | European Commission, European Medicines Agency | AnimalhealthEurope |
SC会合には、アソシエートメンバーとしてOIE、オブザーバーとしてカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ共和国が参加しています。(VICH事務局:HealthforAnimals)
2 VICHの効果
ガイドライン作成の流れ
- Step 1 : 運営委員会(SC)がガイドライン(GL)作成開始を決定。必要に応じExpert Working Group(EWG)を設置、作業指示
- Step 2 : EWGがGL案を作成
- Step 3 : EWGが提出したGL案を協議に付すことをSCが承認
- Step 4 :SCが承認したEWGのGL案を関係機関で協議(パブリックコメントの募集)
- Step 5 : 提出された意見をEWGで検討し、修正GL案を作成
- Step 6 : EWGから提出された修正GL案の実施をSCが承認
- Step 7 : 作成したGLを施行時期を付して各国規制当局へ送付
- Step 8 : 各地域におけるGLの実施
- Step 9 : GLの見直し(モニタリングとメンテナンス)
EWG一覧
- ✓ 品質EWG(座長:日本・農林水産省)
- ✓ 電子標準実装-医薬品監視(座長:米国・FDA)
- ✓ 生物学的製剤EWG(座長:日本・農林水産省)
- ✓ 代謝・残留EWG(座長:EU)
- ✓ 安全性EWG(座長:米国・FDA)
- ✓ 生物学的同等性EWG(座長:米国・FDA)
- ✓ 駆虫薬EWG(座長:米国・FDA)
- ✓ 配合剤EWG(座長:中国。共同座長:米国・FDA。)
ガイドライン作成の進捗状況(2020年6月現在)
こちらをご覧ください。
3 VICH関連の国際会議の開催実績
SC会合は、基本的に日米EUの持ち回りで開催しています。2006年5月の第18回SC会合までは6か月ごとに、第19回SC会合からは9か月ごとに、第38回SC会合からは12か月ごとに開催しています。また、VICH活動に参加していない国/地域へのVICHガイドラインの普及活動の一環として、2012年から「VICHアウトリーチフォーラム」をSC会合の開催に合わせて開催しています。
加えて、社会への情報公開の一助として、VICH公開会議をSC会合と合わせて開催しています(当初3年ごと、現在5年ごとに日米EU持ち回りで開催)。
VICH公開会議
時期 | 場所 | 主催 | 同時期開催 | |
第1回 | 1999年11月 | ブリュッセル (ベルギー) |
EU | 第6回SC会合 |
第2回 | 2002年10月 | 東京 | 日本 | 第11回SC会合 |
第3回 | 2005年5月 | ワシントンDC | 米国 | 第16回SC会合 |
第4回 | 2010年6月 | パリ | EU | 第24回SC会合 |
第5回 | 2015年10月 | 東京 | 日本 | 第32回SC会合 |
第6回 | 2019年2月 | ケープタウン (南アフリカ) |
米国 (南アフリカ) |
第37回SC会合 |
VICHアウトリーチフォーラム
時期 | 場所 | 主催 | 同時期開催 | |
第1回 | 2012年6月 | ブリュッセル (ベルギー) |
EU | 第27回SC会合 |
第2回 | 2013年2月 | ワシントンDC | 米国 | 第28回SC会合 |
第3回 | 2013年11月 | オークランド (ニュージーランド) |
日本 (ニュージーランド) |
第29回SC会合 |
第4回 | 2014年6月 | ブリュッセル (ベルギー) |
EU | 第30回SC会合 |
第5回 | 2015年2月 | ワシントンDC | 米国 | 第31回SC会合 |
第6回 | 2015年10月 | 東京 | 日本 | 第32回SC会合 |
第7回 | 2015年6月 | ブリュッセル (ベルギー) |
EU | 第33回SC会合 |
第8回 | 2017年2月 | ブエノスアイレス (アルゼンチン) |
米国 (アルゼンチン) |
第34回SC会合 |
第9回 | 2017年11月 | 東京 | 日本 | 第35回SC会合 |
第10回 | 2018年6月 | ブルージュ (ベルギー) |
EU | 第36回SC会合 |
第11回 | 2019年2月 | ケープタウン (南アフリカ) |
米国 (南アフリカ) |
第37回SC会合 |
第12回 | 2019年11月 | 東京 | 日本 | 第38回SC会合 |
第13回 (予定) |
2020年11月 | web開催 (予定) |
EU | 第39回SC会合 |
4 最近の活動
2015年10月に東京で開催された第32回SC会合において、SCはVICH PRIORITIES Phase 4: 2016-2020(VICH第4次優先事項)を採択し、2016年からのフェーズ4では、従来から実施してきた主要活動(1.VICHガイドラインの作成、2.既存ガイドラインの改訂、3. OIEとのコラボレーション、4.薬剤耐性菌問題に対する国際的な取り組みへの貢献、5.副作用報告のガイダンスの見直し)を継続するとともに、1.VICHアウトリーチフォーラムを通したガイドラインの世界的な普及と動物衛生・動物福祉・公衆衛生への貢献、2.コミュニケーションとトレーニング戦略の施行、3.VICH非参加国のニーズ把握、4.ICHの経験を活かしたVICHガイドライン作成の機会追求、5.獣医療分野の新規治療薬のガイドラインに対するニーズ把握とガイドラインの作成といった各分野の活動を拡大していくこととなりました。
第38回SC会合の概要(2019年11月開催)
2019年11月に東京で開催された第38回SC会合では、日本が議長となって議事を進行しました。VICH第4次優先事項に基づき、新規ガイドラインの作成や既存ガイドラインの改訂等が承認されるとともに、2021年からのVICH第5次優先事項の案についての検討を行いました。
5 これまでの活動
動物医薬品検査所年報にこれまでのVICHの活動を掲載しています。動物医薬品検査所年報はこちらに掲載しています。