薬剤感受性ディスク・薬剤感受性試験
抗菌剤を使用する時に薬剤感受性試験を実施し、対象とする菌の感受性を確認することは、薬剤耐性対策における抗菌剤の慎重使用を行う上で重要です。また、その菌に感受性のある抗菌剤を適切に選択することは、動物だけでなく農家や飼い主の方の負担を最小限に抑えることにもつながります。薬剤感受性を確認し、適切な抗菌剤を選択することは、薬剤耐性菌の増加を抑え、抗菌剤が将来にわたって治療に有効な手段であり続けるためにも重要なことです。このページでは、臨床現場で薬剤感受性の確認に使用される薬剤感受性ディスクを中心に、薬剤感受性試験に関する情報をまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。
(1)薬剤感受性試験(ディスク拡散法)のブレークポイント設定
細菌がその薬剤に対して感受性か耐性かを判断する基準となるのがブレークポイント(BP)です。CLSI(Clinical Laboratory Standards Institute)等の機関からBPが公表されていますが、獣医領域については細菌の種類や薬剤が限られているのが現状です。そこで全国から収集した家畜由来細菌を用いて薬剤感受性試験を実施し、最小発育阻止濃度(MIC)とディスク阻止円径の関係を表にまとめ、その結果から算出したBPを参考として示しました。この表を薬剤感受性試験結果の解釈にご活用ください。

※各菌種のMICとディスク阻止円径の分布については、以下をご参考ください。
サルモネラ属菌
黄色ブドウ球菌
★チアンフェニコールの精度管理参考値
薬剤感受性試験を行う際、その試験の確実性を担保するために予め阻止円径がわかっている株を用いて同時に試験を行う必要があります。精度管理範囲内であればその試験を有効とし、逸脱した場合は再度の試験が必要です。CLSIに設定されていない薬剤について、精度管理参考値を作成しました。薬剤感受性試験を実施する際にご活用ください。
また、本調査において阻止円径の測定は、CLSI及びEUCASTに準拠した方法で行いました。具体的な阻止円径測定箇所(点線)を以下に示します。
Streptococcus pneumoniae ATCC®49619 | 22~28mm |
Staphylococcus aureus ATCC®25923 | 11~17mm |
(2)動物用の薬剤感受性ディスクの入手方法
動物用医薬品として販売されている抗菌性物質製剤に関する薬剤感受性ディスクの取扱い及び入手方法についてまとめて掲載しております。詳細につきましては、公益社団法人日本動物用医薬品協会のホームページをご覧ください。
A:動物用薬剤感受性ディスクの問合せ先一覧に収載されている薬剤
B:動物用抗菌性物質に応用可能な市販ディスク
C:主成分は同一ではないが代用可能な市販薬剤感受性ディスク、薬剤感受性では測定不可能な製剤
(3)薬剤感受性試験の方法
薬剤感受性試験には、最小発育阻止濃度(MIC)を測定できる微量液体希釈法等の希釈法と、阻止円の大きさで感受性を判断できるディスク法や濃度勾配ストリップを用いてMICを測定するE-test等の拡散法があります。1)ではそれぞれの薬剤感受性試験の方法を図や写真を交えて紹介しています。また2)では薬剤耐性対策を推進するために、農林水産省が獣医師や生産者のみなさまに向けて作成した動画(YouTube)のうち、薬剤感受性試験を実施される方が具体的な手技や方法を習得するのに参考となる動画となっております。1) | テキスト・資料 | |
・ | 薬剤感受性試験方法 | |
・ | コリスチンの薬剤感受性試験法(Colistin Broth Disk Elution(CBDE)法) | |
2) | 動画(YouTube) | |
・ | ディスク法の手技及び判定方法 | |
・ | 微量液体希釈法の手技及び判定方法 | |
・ | 寒天平板希釈法の手技及び判定方法 |