クローズアップ研究者 後藤 正憲
農林水産政策研究所 政策研究調査官(国際領域)
専門: 文化人類学、ロシア農村の社会調査
これまでの研究はどのようなものですか?
私は大学で文化人類学を専攻し、特定の地域である程度共有される知識が、そこで暮らす人々の関わり合いの中でどのように形成されるのかということに関心をもって研究を進めてきました。大学の第二語学でロシア語を選択したこともあり、主にロシアの農村地域における人々の意識と社会変容を追ってきました。
言うまでもなくロシアは広大で、民族、宗教、生活様式の異なる多様な国民によって構成されています。私はこれまでヨーロッパ・ロシアのヴォルガ川中流域にあるチュヴァシ共和国や、東シベリアにあるサハ共和国の農村地域に足を運び、フィールドワークを行ってきました。いずれも農業が盛んな地域ですが、それぞれに特有の気候や風土から、両者の農業形態はまったく異なっています。前者のチュヴァシ共和国では、首都圏に近い穀倉地帯という立地を生かし、穀物や野菜の大規模な農場経営が行われているのに対し、後者のサハ共和国では、東シベリアの寒冷地に適応した品種の牛馬の牧畜が盛んに行われています。こうした生活環境の特性や、歴史的に変化する社会関係がどのように作用して、人々の暮らしの中に顕著な現象として現れているのかということを研究してきました。
今後の抱負を教えてください。
目下のところ国際関係が緊張する中で、ロシアとウクライナの政治的動静に注目が集まっています。その中で、多様な観点を考慮しつつ、できるだけ正確な情報を見極めて、将来の農政につながる研究を行っていきたいと思っています。より具体的には、農村における経済活動とネットワークのあり方を追うことで、文化と経済の関係について考察を深めていきたいです。
兵庫県出身、2003年大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了(人間学博士)。北海道大学スラブ研究センターCOE研究員。2011年~北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター助教、特任助教を経て、2023年4月より現職。 |
お問合せ先
企画広報室広報資料課
ダイヤルイン:03-6737-9012