クローズアップ研究者 玉木 志穂
農林水産政策研究所 研究員(食料領域)
専門: 食料品に関する消費者行動
これまでの研究はどのようなものですか?
近年、日本では女性の社会進出や世帯規模の縮小などの影響から中食や外食の利用といった食の外部化が進行してきており、多様な食事形態を選択できる状況になっています。このような状況を踏まえれば、内食や外食、中食といった食事形態の視点を加味した研究が、日本の食生活を捉える上で重要です。そこで食事形態の視点を加味して、(1)食事形態に着目した食事の満足度に関する研究と(2)食事形態及び食料品選択の意思決定プロセスに関する研究を行ってきました。(1)では、Webアンケート調査データを用いて、食事形態とともに簡便性や栄養バランスなどの満足度について分析しました。その結果、消費者は食事形態や野菜摂取割合にかかわらずおおむね食事に満足しており、また中食は他の食事形態に比べて、簡便性の満足度が高い一方で、栄養バランスの満足度が低くなる傾向がみられました。(2)では、予算・時間制約下の食事形態及び食料品選択時の意思決定プロセスを視線計測による検証を行いました。その結果、制約下では、制約がない状況に比較して食事形態及び食料品に対する注視時間や注視回数、注視する商品属性が少なく、栄養バランスを考慮せずに選択していたことから、単純な意思決定が行われていることが確認されました。これらの研究から予算や時間制約下では野菜や肉類の消費が少ないといった栄養摂取面で問題のある食生活が継続されている可能性が示唆され、この食選択の悪循環を解消することを目標に現在も研究を進めています。
今後の抱負を教えてください。
これまで行ってきた調査手法やそこで獲得した知見を応用し、さらに農林水産政策研究所の職員の方々や研究を実施する上で関わる関係者の方々と協力しながら「豊かな食生活に向けてなにができるのか」を模索していきたいです。
2019年4月日本学術振興会特別研究員(DC 2)。~ 2021年3月 東京農業大学大学院博士後期課程修了(博士(農業経済学))。2021年4月~ 2022年3月 港区役所港区政策創造研究所研究員、東京農業大学博士研究員。2022年4月より現職。 |
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