クローズアップ研究者 山本 祥平
農林水産政策研究所 主任研究官(食料領域)
専門: 食品安全、食品のトレーサビリティと危機管理、食農倫理、食品表示
これまでの研究はどのようなものですか?
2000年代に入り、日本では、事業者による食品汚染事故が相次いで報道され、食品安全が大きな関心事となりました。事業者による食品汚染事故を防止する上では、一般衛生管理やHACCP等の衛生管理手法の導入が有効とされていますが、事業者が当該手法をうまく運用できなければ、食品汚染事故の防止は見込めません。こうした観点から、大学院時代は大手乳業メーカーの集団食中毒事故を対象に、刑事資料等に基づく事例の分析・検証から、食品汚染事故を起こす従業員の心理と事業者の組織文化を明らかにしました。また、実際に食品汚染事故が発生した際には、事業者が食品回収等を含めた緊急事態対応を速やかに実施して、消費者の健康被害を最小限に抑える必要があります。この緊急事態対応についても、国際機関や欧米政府等の文書の分析のほか、国内事業者への聞き取り調査から、緊急事態対応の作業上の原則や有効な実践方法を示しました。さらに前職では、農林水産省や水産庁の委託調査事業の中で、多数の農産物や水産物の生産・加工・流通業者等を対象に現場の視察と聞き取り調査を行い、食品回収の前提となるトレーサビリティについて、事業者の取組状況の把握に努めてきました。
今後の抱負を教えてください。
これまで研究してきた食品安全のほか、近年では新たに持続可能性の問題をめぐって、海外で新たな取組やルール化の動きが見られます。こうした国際的な動きに、日本の事業者が対応しながら存続・発展するにはどのような知見が有用なのかを常に意識して、事業者の実態や経営環境等に関する情報を提供できればと考えています。
茨城県出身。2014 年京都大学大学院博士課程修了(博士(農学))。滋賀県立農業大学校非常勤講師、一般社団法人食品需給研究センター主任研究員等を経て、2022 年4 月より現職。 |
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